勇者召喚の理

「理解した。つまり魔王の復活により魔物の勢いが強くなり、人間と魔物のパワーバランスが崩れたのだな。このままでは人類の存続が危ういため異世界から勇者を召喚し、魔王討伐を依頼したいと」

 法王の説明を龍也はざっくりと要約した。「民草の困窮」とか「王族の慈愛」、「魔王の非道」などの事情は切り飛ばした。

「間違いではありませんが……」

 法王は忸怩たる思いだ。

「間違いないなら先へ進もう」

 龍也は容赦なく話を続ける。

「勇者召喚に頼る理由は、異世界渡り・・・・・という状況に意味があるためだ。宇宙的に位相が異なる世界間を移動すると、位相差分のエネルギーを手に入れることが出来ると。それを使いこなせる者が勇者というわけだ」

「エネルギーとか位相差という概念が把握しきれませんが、筋道は正しいと理解できます。勇者とは世界を渡ることによって力を得たものです」

 法王は必死に龍也の弁舌に食らいつく。世界の存続がかかっているのだ。

「で、俺たちが依頼に応えるべき理由は何だ?」

「第一に、元の世界への帰還。第二に、報酬です」

「第一の理由は納得できん。俺たちが力を以て帰還を強制したらどうなる?」

「勇者送還の術を行えるのは法王ただ一人。私はどのような脅迫にも屈しません」

 法王の眼差しは揺るぎなかった。

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