思春期は突然に
あの後、様々なアパレルショップやアクセサリーのお店を回った事により、すっかり機嫌を直した志穂と、女性の多いお店で常時落ち着かない様子の湊月は、一時間程巨大なショッピングモールを散策していた。
大方、大体のショッピングは終わったらしく、設備されている休憩スペースのようなベンチで休んでいる湊月の元に、志穂はサーティワンのアイスクリームを二カップ持ってきた。
「あ!ありがと!いくらだった?」
「ううん、お金はいらないわ。今日連れてきてくれたお礼!」
「連れてきたなんて、そんな大層な。それに、俺も凄い楽しかったし……」
「いいの!私がお礼をしたいなって、そう思っただけだから!」
「……じゃあ、ありがたく貰うね。ありがとう」
これ以上執拗にお金を払おうとするのは、志穂の厚意を踏みつけるとても無粋な事だと感じた湊月は、頭をぺこりと下げて冷たい紙カップを受け取った。
中に入っているのは、湊月の大好物なチョコミントのアイスクリーム。
「……これ」
「湊月確か、昔一緒にここに来てアイスを食べた時、チョコミント頼んでたよね?だから、今も好きかなって」
「そういえば、うちの家族と志穂で一緒に行ったね。その時チョコミント頼んでたっけ?もう俺ですら忘れてるのによく覚えてたね」
「まぁ、幼馴染ですからっ!」
そう言って、薄い胸を張る志穂。
「ママ!マックあった!!ハッピーセット食べたいっ!!」
「はいはい。そんなに引っ張らなくても、マックは逃げたりしませんよ~」
「逃げるもん!!僕がS極でマックがN極なんだから!」
「うふふ~それパパから教えてもらったの~?それと、それじゃあ将君とマックはピッタリくっついて離れられなくなるから気を付けてね~」
休日という事もあって家族連れが多いこの場所。小さな子供達がはしゃいでるのを見て、志穂は横で「ふふ、可愛い」とそう呟いた。
「か、可愛い……?」
「……え?とっても可愛らしいじゃない!湊月は子供苦手なの?」
「いや、そんな事はないけどさ。でもあの会話の下二行は、なんか
「凄いよね~今の小さい子って。人の体に、微力だけど磁気があるのを知ってるんだから。私、あれ位の年齢の時そんな事全く知らなかったのに」
「…………は、はは。確かに……」
一般教養かのように話す志穂に、乾いた笑いで頷いた湊月。
「あ。ちっちゃい子を見て思い出したけど、そういえば私下着も買いたいんだった!」
「子供を見てそれを思い出す事ある?関連性が──」
そこまで言ったところで、湊月は口を噤んだ。広い意味で考えれば、もしかしたらあるのかもしれないと、その行為の名前がふと頭に浮かんでしまったからだ。
──いや待て!さすがに考えすぎだからっ!俺こんなに脳内思春期だったけ!?
そんな事を思いながら隣に視線を向けると、頬を少し赤らめて満更でもない表情をした志穂が。
「……湊月の、ばか」
「……っ!そんなんじゃっ!!そ、そこのお店どこにあるの!?早く行こ!!」
恥ずかしさを紛らわせるように、ぎこちない挙動で立ち上がり歩いていく湊月。その後ろで、未だに座っている志穂は、最後に残ったとろっとしたアイスを口に運んで、
「……えっち」
と、誰へともなく呟いた。
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