第32話 入浴後


 あれから5時間後。


 照は入浴して身体をきれいに洗い流した。


 彼女は上下白の袖が長いパジャマ姿で顔を火照らせ、汗を身体一面にかきながら、階段を上がり、自室へと入室した。


 照は実家暮らしであり、両親が建てた3階建ての1軒家に住んでいた。


 ちなみに、照の部屋は2階にあり、両親の部屋は3階にある。


 照は自室のドアを優しく閉めるなり、机に置いてあった折り畳み式の財布からプリコラの写真を取り出した。


「・・・ようやく撮っちゃいました・・・」


 照は写真を眺めながら、にこーっと頬を緩めた。現在、彼女は嬉しさで舞い上がっていた。


 そのせいもあってか、普段は踏まない軽快なステップでベッドにぼすんっとダイブした。


 掛け布団の柔らかい感触が照の身体を快く受け入れた。


「やりました。やりましたよ。ようやく、彼氏さんとの写真をゲットです!」


 照は内に秘める喜びを爆発させて、何度もベッドの上で転げ回った。


 途中で気持ちが抑えられずに、枕を抱きしめて転げ回ったほどだ。


「それにしても、今日はハグしたり、頭撫でられたりと、すごいドキドキしました」


 照は仰向けに体勢を変え、真っ白な天井の一点をジッと見つめた。


 彼女は一応、年上なので大地の前では余裕たっぷりな様子を醸し出しているが、実際はものすごいドキドキしている。正直に言えば、大地と近くにいるだけでドキドキしているほどだ。


 でも、それも仕方のないことだ。照は今までの人生で大地と以外、異性とお付き合いをしたことがなかったのだから。


 もちろん、告白された経験は何度もあるが、大地以外は1度もオッケーを出したことがない。


「私がこんなに人を好きなるなんて。人生、何があるかわかりませんね」


 照は誰もない空間で大地の顔を思い出し、だらしない笑顔をこぼすと、身体が熱くなってきた。自宅では初心な面は隠し切れない。


「これから楽しみです」


 照は興奮は冷めない状態で、そう口にして立ち上がり、勉強机にプリクラの写真を置いた。


 それから、猛烈に惚気話をアウトプットしたくなり、スマートフォンのロックを解除して、友人にメッセージを送った。

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