第24話 3人が初めて集まった


 時刻は午後0時35分。場所は山西大学の食堂。現在、大学では昼休みの時間である。


 大地はいつも通り、食堂で昼食を取っていた。ちなみに、食べているものは夏限定の特別メニューである冷やし中華だった。


 彼は周囲の騒がしい音を耳に入れながら、よく冷えた麺をすすっていた。


「あっ!いた!やっぱり、いつもの席にいたよ」


 偶然、近くを通り掛かったのか。公香が歓喜の声をあげて、大地の向かい側の席に座った。


 今日、公香は青の無地Tシャツにホワイトのショートパンツといった普段とは異なる肌が露出した服装をしていた。


 ちなみに、彼女のテーブル近くにはお盆があり、その上にはざるうどんが置いてあった。


「まぁ、いつもこの席が空いているからね。それで、笠井さんどうしたの?俺に何か用事があるの?」


 大地は麺をすすった後、胸中で率直に感じた疑問を公香に投げ掛けた。


「う〜ん。用事はあるかな。森本君と一緒に食べるっていう用事がね!」


 公香は意味深な言葉を口にし、大地の質問に答えた。彼女はご機嫌な様子で頬杖をつきながら、大地の顔を見つめていた。


「なっ!?それって、本当に用事なの?」


 大地は予想外の返答にテンパり、いささか平常心を失ってしまった。そのため、平常心を取り戻すために、目を瞑ってガラス製のコップに入った水を体内に勢いよく流し込んだ。


「ど、どうしたんですか?先輩。1人で動揺しながら、水なんて流し込んで」


 突如、またもや大地に声を掛ける人物が現れた。その人物は呆れた顔で大地の行動を怪訝な表情で指摘した。


「ぷはぁっ・・って青木さん?」


 大地は瞑っていた目を開けることで、上下ホワイトの服装をした光の存在を認識した。


「情けない顔ですね。それに、今頃私に気づいたんですか?」


 光は不満げな表情で大地に悪態をついた。そして、公香を一瞬だけ敵対心剥き出しの目線で一瞥するなり、「失礼します」と言って、ちゃっかり大地の横に座った


「・・・森本君。青木さんとも知り合いだったの」


 公香はなぜかぷくっと頰を膨らませながら、ちらっと大地に視線を向けた。


「ま、まぁ、アルバイトで一緒だったからね。それにしても、笠井さんは青木さんのこと知ってたんだね」


 大地はこのままでは面倒くさい状況になると推測し、敢えて意図的に話題を変更した。


「それはね。アルバイトで一緒だったし。それに、ほぼ同時にアルバイトを辞めたからね。まぁ、青木さんの方が少し早かったけど。なんせ、森本君が辞めた直後に辞めたんだから」


 公香は意味深な瞳で光を一瞬だけ一瞥した。


「それは本当なの?」


「はい!間違いありません!!」


 光は不思議なことに、強気な姿勢でそう返した。


「そ、そっか・・・」


 大地はどことなく距離感のある2人を交互に視線を移動させながら、落ち着かない様子で一旦、冷やし中華をすすった。


「あらっ!偶然ですね。今、お昼ですか?森本さん」


 今度は誰かと大地は声がした方向に対して身体を上手く使って振り返った。


 公香や光も大地の苗字を呼んだ何者かに瞳を彷徨わせながら、夢中で探索している様子だった。


「三宅先輩・・・」


 大地は先輩を発見したのにも関わらず、無意識にいささかテンションが下がってしまった。


 照は黄緑のロングTシャツにブルーのロングスカートを着用していた。


「へぇ〜〜。森本君って、三宅先輩とも知り合いだったんだ〜」


「そうですねー。しかも、三宅先輩の反応から推測して、結構親しい関係なんじゃないですかぁ?」


 公香と光は同時にジト目で大地を見つめ始めた。彼らの目は決して大地を逃さなかった。


「あらあらっ!森本さんも大変ですね〜」


 照は公香と光の反応を視界に捉えるなり、にこっと微笑みながら大地を労った。


 しかし、彼女は笑顔だったが、目は完全には笑っていなかった。


 一方、大地はというと、予想外の事態が発生した上に、公香と光から放たれるプレッシャーに耐えながら、これからどう対処するか必死に頭を働かせていた。


 それから、大地は彼女達の対応に結構な労力を使う羽目になってしまった。

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