第23話 カフェで


「さ~て。何にしましょうか。あっ、森本さんは好きな品を選んでくださいよ!今回は私を助けてくれたお礼ということで奢りますよ!!」


 照はご機嫌な様子でメニューを大地に手渡した。


「は、はぁ・・・」


 大地は唖然としながら差し出されたメニューを受け取った。


 現在、大地と照は学内に設けられたカフェに身を置いていた。


 店舗内は洋風を醸成したスペースであり、BGMも洋楽が流れていた。おそらく、このカフェはコンセプトに洋風を取り入れているのだろう。


 その上、店内には大地や照以外も何人かのカップルが楽しそうに雑談に勤しんでいた。


「決まりましたか?ちなみに、私は既に決めているので、後は森本さんだけですよ」


 大地が悩んでる最中、照は余裕の表情で彼に催促するような言葉を掛けた。彼女の顔からは先ほどの言動は意図的なものだと感じられた。


「ええっ!早いですね!では、俺もさっさと決めないとー」


 大地はあせあせしながら、メニューの四方八方に目線を彷徨わせた。


「ふふっ。そんなに焦らなくていいですよ。ゆっくり選択してくださいね。ゆっくりとね」


 照は大地のリアクションを知覚するなり、楽しそうに「うふふっ」っと笑みをこぼした。


「よしっ。俺はアイスコーヒーにします」


 大地は満足した顔でメニューをテーブルに伏せた。


「わかりました。では、さっそく店員さんをお呼びしますね」


 照はおっとりした口調でそばを通過した店員に声を掛けた。


 店員は彼女の声に反応するなり、メニューを尋ねた。


 それから、大地はアイスコーヒー、照はブルーマウンテンを注文した。


 店員は注文の品を復唱するなり、間違いがないかと認識してからその場を立ち去り、厨房に向かって歩を進めた。


 大地はスムーズに歩く店員の後ろ姿を呆然と眺めていた。


「あらあらっ。ダメですよ。女の子と一緒にいるのに余所見をしてしまっては」


「あ、すいませ・・・。ってなんで隣に座っているんですか?うわっ。しかも、腕に抱きついてきた」


 大地はついさっきまで目の前の席に座っていた照が自身のすぐ側に座っていることに驚きを隠せなかった。しかも、またもや照は豊満な2つの塊を大地に押さえつけた。しかも、今回は大地の腰辺りに。


 それで、それが要因で大地の股間のあそこはびんびんにライジングしてしまった。


「本当に、本当に、あのリーダーから私を助けてくれてありがとうございました・・・森本さんには感謝しかないですよ・・・」


 照は甘えるような色っぽい声を発しながら、こてんっと大地の右肩に頭を載せた。


「ちょ、ちょっと。どうしたんですか!三宅先輩!らしくないですよ。それと、俺の話聞いてます?」


 大地の焦った様子に周囲のカップル達は奇妙な目線を向ける。彼らは全員が顔をしかめていた。


「らしくないか。それは・・・そうさせたのは・・・あなた・・よ」


 照は頬を紅潮させて、誰にも聞こえないほどの小さな声でそうつぶやいた。


「えっ。聞こえませんでした。すいません。もう1回はっきりおっしゃってくれませんか?」


 大地は耳に手を添え、聞き逃した言葉の内容を次は捉える姿勢を示した。


「なんでもないですよ~。これは、聞き取れなかった森本さんが悪いんですよ~~」


 照は誤魔化すように微笑むと、「えい!」っと大地の身体をあちこち、いじいじと触った。


「ああっ。森本さんを存分に感じます~~」


 照は愛おしそうに小動物のような目を作るなり、自身の顔を大地の肩にすりすりした。


「ちょ、ちょっと。傍から見たら、俺達変態ですよー」


「いいんですよ~。私はこのカフェに存在するたった1人の男性だけに嫌われなければいいんです!」


 照は大地の心境など露知らず、ただただ大地のぬくもりと男性特有の身体を堪能した。


 この照からの一方的なスキンシップはカフェの店員が彼らの座るテーブルに訪問するまで長々と続いたのだった。

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