第14話 救世主
清水准教授が光に提案を持ち掛けてから2日が経過した。
光は再び、大学の昼休みの時間に清水研究室を訪れた。
しっかりノックを行い、反応があった後、ドアノブを捻って入室した。
「よう!元気か?」
清水は愉快な感じで手を上げ、光に微笑み掛けた。
これから起こる出来事がわかっているかのように。
「・・・残念ながらあまり良くないですね」
光は先ほどから本調子ではない様子を醸し出していた。
その上、彼女は何か重大な決断を下したかのように見えた。
「先生からの提案ですが、セフレは1回だけという条件なら呑みます。それではダメでしょうか?」
光は生唾をゴクリっと呑んだ後、清水に強い眼差しを送った。
その際の彼女の瞳は真剣そのものだった。
「・・・」
光と清水の間でわずかな静寂が生まれた。
「・・それは条件付きで俺とのセフレを認めるってことだな」
清水は視線を下方に向けながら、現在の重い静寂を破った。
「・・・そうですね」
光は淡々とシンプルに返答した。
「悪いが、それは無理だ」
清水は期待を裏切るように光の提案をバッサリと拒否した。
「な、なぜですか!?」
光は予想外の出来事だったのか。目を剥き、口を半開きにしながら、驚愕した表情を露わにした。
「それはなー。俺が1回のセフレ関係じゃ満足できないからね〜。俺はセフレっていうのは長い関係であるものだと思っているからな。悪いが、そちらの提案を受け入れることはできない」
清水は長いロン毛の髪の毛を掻きながら、不貞腐れた顔を示した。
「そ、それなら、先生からの提案は拒否させていただきます」
光は口先を尖らせて、言葉を紡ぐなり、踵を返して研究室を退出しようとした。
「おいおい、いいのか。俺が単位を落とせば、お前は留年決定だぞ。なぜなら、必修単位を取得できなければ、進級できないのが我が校、山西大学だからな」
清水の言葉に光はぴたっと足を止めた。
「くっ」
光は不快感からか、下唇を強く噛んだ。
そうなのだ。清水の言った通りなのだ。
このまま、光が清水の提案を拒否すれば、彼女の留年が決定してしまう。
光もその事実をもちろん知っていた。
しかし、彼女はそれでも認められなかった。好きでもなく、リスペクトを払えない先生と長期的にセフレ関係になることがどうしても受け入れられなかった。本当は1回のセフレ関係も嫌でしょうがなかった。
だが、単位のために自身の気持ちを抑えて意志決定を行ったのだ。
「・・・わかりました。先生のセフレになります。1回だけの関係ではなくて、長期的なセフレ関係」
光は覚悟を決めるなり、胸中にどうしようもない悲しさと虚しさを抱きながら、了承の意味を含んだ言葉を清水に伝えた。
仕方がなかったのだ。留年すれば、家族に迷惑が掛かる。光の家族は貧乏ではないが、裕福でもない。そのため、もし光が留年すれば、今よりもさらに家計的に負担が増加するのは容易に想像できた。
だから、光は心底拒絶したい清水からの強制的な提案も嫌々受け入れた。
「おお〜。そうか!それでいいんだよ。これからは俺が飽きるまでずっとセフレ関係だからな!」
清水は光に歩み寄り、彼女の肩を抱いた。
「今日は幸いにもこの後、講義がない上、教員達との面倒臭い会議もない。だから、早速、ラブホへと行くぞ!」
清水は光の柔らかくて弾力のあるお尻をいやらしい手つきで揉んだ。
そして、舌舐めずりして、彼女の身体を強引に押して、一緒に研究室を退出しようと試みた。
光は無言で俯きながらも、清水に無抵抗でぐいぐいっと身体を前に押された。
このまま清水とラブホにゴーする未来しか想像できなかった。
そんな最中、光と清水が研究室の唯一のドアに接近した瞬間、そのドアがカチャッと開放された。
すると、清水の視界には見慣れない男の姿が飛び込んできた。
一方、その男は光にとって身に覚えのある人物だった。
その人物は誰なのか。
そう、読者はもうお気づきだと思うが。
突如、この場に現れたのは、ストーリの主人公である、森本大地であった。
「森本先輩!」
光は無意識に涙を溜め、盛大に救いを求めるような瞳で大地を呼んだ。
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