第10話 次の日


 時刻は午後0時45分。場所は山西大学の学生で混雑した食堂。


「クソ〜。ねむてぇ〜〜」


 大地は眠い目を擦った。そして、視界が時折はっきりした後、ぶっかけうどんをすすった。


 結局、大地は公香の家で一睡もできなかった。


 朝になり、公香が目覚めるなり、共に簡単な朝食を取った。


 そして、大地も公香もお互いに1限目に講義があったため、朝早くに一緒に大学に向かい、到着と同時に別れた。


 それから今現在に至る。


 大地は再びずるっとうどんをすすった。


「やっほー!朝ぶりだね〜」


 いつの日かと同じように、公香が空いた大地の向かい席に座った。


 公香はかけうどんの載ったお盆をテーブルに優しく置いた。


「・・そうだね」


 大地は昨日の夜とは打って変わった公香に違和感を覚え、眠い目をぐっと細めた。


「どうしたの?目なんか細めて」


 公香はわずかに首を傾けた。


「いや、元気そうでよかったと思ってね。昨日と比べて少しは恐怖心も和らいだようにも見える」


 大地は目を通常時に戻し、眠い両目を強く擦った。


「・・・おかげさまでね」


 公香は喜ばしいことなのに、なぜか伏し目がちになった。


「確かに、恐怖は和らいだよ。・・でも、残念ながら、まだ完全には消えてないんだ。だから、だから・・・」


 公香は覚悟を決めた顔つきを露わにし、大地に対して真っ直ぐな瞳を向けた。


「今度、また、私が恐怖に襲われて、救いを求めたときは、また私の家に来て!」


 公香は顔を真っ赤にしながら、そのように要請した。


「じゃぁ!そういうことだから!またね!!」


 公香はさっと高速で立ち上がるなり、お盆を両手に、そそくさと早歩きでその場を立ち去った。


 その間、大地は何かしら声を掛けようとしたが、無駄だった。公香の行動が速すぎたため、残念ながらそれは叶わなかった。


 その後、ただひたすら周囲の騒がしい学生の喋り声が大地の鼓膜を遠慮なしに連続で刺激した。

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