ガラスの像
ナカムラ
ガラスの像
ある青年実業家は、オークションで美しいガラスの像を高額で競り落とした。
そのガラスの像は、女性で裸で 美しい笑顔をうっすらと浮かべ、長い髪の毛をなびかせていた。
彼は、毎日、ガラスの像を丁寧に磨き、眺めていた。
すると、段々と、彼は、ガラスの像を愛するようになった。
彼は、その冷たい像を抱きしめた。
10年ほど経った頃、彼は、事業に失敗し、全ての財産を手放すことになった。
彼は、このガラスの像だけは、持っていかないように懇願したが、駄目だった。
少し時間をもらい、自室にあるガラスの像に話しかけた。
「私は、お前がいないことは、耐えられない。君を壊して、私も死んで、あとに続くよ……」
すると、ガラスの像に美しい女性が、浮かびあがってきた。後ろの背景が透けて見えるが、彼女は、確かにそこに存在していた。
「私を壊さないで…。永遠に一緒にいましょう。」
「どうやって……」
「あなたも、ガラスの像になるのです。」
「わかったよ。では、君に捧げる愛を……この姿で……」
そういうと、ガラスの像の冷たい手に、彼は、手を優しく置いて、片膝を付いて、女性のガラスの像を見つめると、彼の体が、徐々にガラスに、変わっていった。
しばらくして、オークションが開かれた。
佇んでいる女性に、その女性を見つめ片膝を付く男性が寄り添っている美しいガラスの像が、売られることとなった。
「こちらは、『恋人』という名のガラスの像です。
さあ、いくら?」
カンッ!カンッ!
完
ガラスの像 ナカムラ @nakamuramitsue
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