第2章 241 アルベルトの隠された過去 2
「本来の『聖なる巫女』である貴女を処刑した後のことです。この国にありとあらゆる転変異変が起こり……半年後には人口は半分にまでなってしまいました。『エデル』は滅びる一歩手前まで追い詰められていたのです」
「そ、そんなことが……」
「この頃になると、アルベルト国王の洗脳はすっかり解けていました。そして自分がとんでもない過ちを犯してしまったことに気づいた彼は……真っ先に宰相と偽物聖女を処刑しました。彼らは禁断の黒魔法に手を染め、クラウディア様とアルベルト国王を洗脳していたからです」
「!!」
その言葉に衝撃を受けた。
私も洗脳されていた……? それにアルベルトが宰相とリーシャを処刑したなんて……。
<大丈夫か……? 聖女セシリア>
守り神……ユニコーンが心配そうに声をかけてきた。
「は、はい……大丈夫です。少し驚いただけですから。その後はどうなったのですか?」
私はシモンに続きを促した。
「アルベルト国王は滅びゆく『エデル』を、誤って処刑してしまったあなたを救う手段は無いか必死で文献を調べました。ついに時空を操る私を錬金術で召喚する方法を見つけたのです。そして彼は自分の持てる全ての力を使って私を召喚しました」
アルベルトが……そんなことを……。
「我々神は自分から人間に積極的に手を貸すことは出来ません。それは決まりにより禁じられているからです。聖女である貴女が処刑されるのを黙って見ていることしか出来ませんでした。だからこそ召喚されたとき、アルベルト国王の力になることを決めたのです」
「そうだったのですか……」
私の知らないところで、そんなことが起きていたなんて……。
「死んでしまった者を生き返らせることは流石に出来ません。そこで時を戻すことにしたのです。貴女が処刑される前の時間に……そのタイミングがアルベルト国王に嫁ぐ直前でした。ですが、クラウディア様だけ時が戻っても意味がありません。肝心のアルベルト国王も時を戻さなければ同じ過ちが繰り返される恐れがあったからです」
まさか、アルベルトも回帰を……?
「ですが、時を戻すには条件があります。一度この世界で命を失わなければ時を戻すことが出来ません」
「え? そ、それではもしかすると……!」
「はい。アルベルト国王は……私の前で自ら命を絶ちました。クラウディア様と再び時を戻る為に」
<……中々覚悟のいることだな。それをあの男がやったのか>
ユニコーンが石化しているアルベルトを見る。
「そんな……そこまでして……私を回帰させるために……」
自分から命を絶ったなんて……相当の覚悟がなければ出来ないことをアルベルトはやってのけたのだ。
だけど、腑に落ちないことがある。
「シモン様……私、実は処刑された後……こことは全く違う別の世界に生まれ変わったのです。その世界で私は平和で幸せに暮らしていました。けれどそこでも不慮の事故で死に……気づけばこの世界に戻っていたのです。何故、そんなことが起きたのでしょう?」
するとシモンは困った表情を浮かべながらも語る。
「何故、そのようなことが起きたのかは私も分かりませんが……もしかすると死の直前、今度は平和で幸せな世界で生きたいと強く願ったからではありませんか? あくまでこれは私の考えですが」
「あ……」
確かに言われてみれば、その通りかもしれない。あの処刑される直前……私は確かに願った。
来世があるなら、今度は普通の人生を送りたい……と。
アルベルトと一緒に――
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