第2章 240 アルベルトの隠された過去 1

「ほ……う。なかなか面白いことを尋ねてくる方ですね。何故そのように思うのですか? ご覧の通り、私はただの神官ですが?」


シモンが私の言葉に目を細める。


「それは、アルベルト様が私に託した【賢者の石】を通して見えたからです。あなたがアルベルト様とお話をしている姿を。……それも私が処刑された後の世界で」


「処刑された後の世界? 一体あなたは何を仰っているのです? まるで一度は死んだことがあるような口ぶりですね」


<なるほど……どうりでそなたから妙な気配を感じたわけだ。同じ魂が重なって見えるのはその為だったのか>


「え? 魂が……重なって見える?」


ユニコーンの言葉を聞き返した。


<ああ、何故かそなたからは全く同じ魂が重なっている。こんなことはあり得ない。もしあるとすれば……回帰した場合のみだ>


「そうです。私はこの世界で一度死んでいます。……悪事を働いた罪で処刑されました。その後別の世界で生まれ変わり……そこでも死んで、気づけば再びこの世界に戻っていたのです」


葵……倫。そして夫のことを思い出し、目頭が熱くなりそうになる。


「守り神であるユニコーンも私が回帰したと言っているのです。シモン様、本当のことを教えてください。あなたは石化の呪いを受けていない。それに、時を止める力を持っています。なら、時を戻すことだって可能なはずですよね? それに私は【賢者の石】を通して、あなたとアルベルト様の会話を聞いたのですから」


「どんな会話を聞いたと言うのです?」


シモンが静かに尋ねてくる。


「アルベルト様は、あなたに訴えていました。大変なことをしてしまった、私を処刑してしまったので、生き返らせて欲しいと」

「……」


私の話を黙って聞いているシモン。


「アルベルト様も、私と同様に錬金術師だったそうです。でも今はその力を失っています。錬金術師が力を失うことなど余程のことではない限り、ありません。おそらく相当の対価を得る為の代償として錬金術の力を失ってしまったのではありませんか? そしてシモン様。あなたはその理由を知っている……違いますか?」


少しの間、シモンは口を閉ざしていたものの……やがてフッと笑った。


「……そこまで気づいているのなら、隠していても仕方がありませんね……。ええ、そうです。あなたの言うとおりですよ。彼は錬金術を使って、私を召喚した。そして、私があなたを回帰させる代償として、残された全ての錬金術の力を差し出したのです」


やはり……そうだったのだ。私が回帰したのは、アルベルトと……シモンによるものだったのだ。


「……シモン様。一体……あなたは何者なのですか?」


「私は時空を操る者。かつて、人々からは『神』とも『天使』とも呼ばれたことがあります」


「神……」


眼の前に立つシモンをじっと見つめる。確かに言われてみれば、今の彼からは神々しい力を感じる。


「悪しき者たちによって洗脳されたアルベルトは『聖なる巫女』を処刑するように命じました。つまり、あなたをです。クラウディア様」


「!!」


その言葉に、私は息を呑んだ――





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