第2章 239 守り神
私の眼の前に現れたのは真っ白な馬。しかも額部分には長い角が付いている。
優しい目つきのその馬は、じっとこちらを見つめている。
まさか、この馬は……あの伝説の……?
「ユニ……コーン……」
するとユニコーンはゆっくり私に近づくと、直ぐ側で立ち止まった。そして頭の中に声が流れ込んでくる。
<ありがとう、聖なる巫女セシリア。そなたのお陰で私は再び元の姿に戻ることが出来た>
「え? 違います。私はセシリアではありません。クラウディアと申します」
まさか、聖女セシリアと間違われるとは思わなかった。
<そうなのか……? だが、その容姿……そして魂はどう見ても聖なる巫女セシリアそのものだ>
ユニコーンは首を傾げる。
「セシリアは300年前に存在していた女性です。もう、この世には生きてはいらっしゃいません」
<300年……? あれからもう300年も経過していたのか? この地の守り神として、私は穏やかな眠りについていたはずなのに……いきなり邪悪な者たちがこの私の眠りを妨げ、そのせいでこのようなことになってしまった。本当に申し訳ないことをしてしまった>
ユニコーンは石化した彫像を見渡す。
「そうだったのですか。でも、元の姿に戻れて良かったです」
<それも全て、そなたが私を浄化してくれたからだ。あの力を使えるということは聖女の証。そなたは聖なる巫女で間違いない。まさか、再びそなたに救われることになるとは思わなかった>
「私が聖なる巫女……?」
では、アルベルトの言う通り……本当に私は聖女だったのだろうか?
けれど、今はもっと肝心なことがある。
「お願いです! ユニコーン! あなたならきっと石化してしまった人々を元に戻すことが出来ますよね? どうか、お願いします! 皆の石化を解いて下さい!」
<そのことなら大丈夫だ。私の穢が払われたのだ。後、一刻もあれば全員元の姿に戻れるだろう>
「そうだったのですね……それなら安心です」
良かった……これでアルベルトが、そして皆が助かる。私は安堵のため息を付いた。
<だが、資格もない人間が私を無理やり起こされた為に力が暴走してしまった。あの2人だけは絶対に許しておけない>
「あの2人……? まさか、宰相とカチュアのことですか?」
そう言えば今思い出した。石化されてしまった人々の中に、2人の姿は無かった。
あの2人は一体今何処にいるのだろう?
<あの人間たちの名前など知らぬ。だが、それ相応の対価は支払ってもらう>
「対価……? 一体、その対価とは……」
一体、リーシャと宰相はどのような対価を支払わされたのだろう……?
「彼らは【賢者の石】の中に封印されたよ」
すると背後で声が聞こえ、思わず振り向いた。するとそこには神官シモンの姿がある。
「え……? あなたは神官のシモン様?」
「ああ、私の名前を覚えておいでなのですね? 聖なる巫女であるクラウディア様に覚えがあるとは光栄です」
神官シモンは相変わらず、ニコニコと笑っているが私はそれどころではなかった。
「何故あなたは石化されなかったのですか? いえ、それ以前に……一体何者なのですか? ひょっとすると……あなたが、私を回帰させたのですか?」
アルベルトが投げたネックレスを受け取ったときに、ある映像が私の頭の中に流れ込んできたのだ。
私が処刑された後の世界で、アルベルトがシモンと会っている姿を――
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