第2章 232 地下祭壇
中に飛び込み、思わず目を見開いた。
そこは地下祭壇になっていた。
大きな石造りの台の正面には複雑な模様のレリーフが施された扉があり、ガタガタと揺れている。
どうやら、地下神殿の揺れはあの扉が原因のようだ。
祭壇の前では全身痣だらけのアルベルトが宰相によって踏みつけられてる。宰相の手には鞘に収まった剣が握りしめられていた。
更に青ざめた顔のカチュアを守るように、二人の護衛騎士が立っていた。
「アルベルト様!」
驚きのあまり、声をあげてしまった。すると宰相がこちらを振り向き、目を見開いた。
「あ! お、お前はクラウディア!!」
「やっぱりここへ来たのね……」
カチュアが睨みつける。
いつの間にか、私が飲んでいた【クリア】の効果は切れていたようだ。
「クラウディア……な、何故ここへ来た……?」
アルベルトが苦しげな声でこちらを見る。
「アルベルト様が心配だったからです!」
相変わらず、神殿全体が小刻みに振動している。
「お前たち! クラウディアを捕えろ!」
アルベルトを踏みつけたままの宰相が騎士たちに命じる。
「「はい!!」」
二人の騎士たちは同時に返事をすると、こちらへ向かって駆けてくる。
「に、逃げろ……! クラウディア……!」
必死に叫ぶアルベルト。けれど、私の足で彼らから逃げられるはずはない……というか、端から逃げる気は毛頭なかった。
「!!」
二人の騎士が眼前に迫って来たところを見計らって、私は残りの睡眠薬入の瓶を二人に向けて浴びせかけた。
「う……」
「……」
途端にその場に崩れ落ちる騎士たち。やはり錬金術で作り上げた睡眠薬は即効性があって、効果抜群だ。
「え……クラウディア……?」
アルベルトが顔をあげてこちらを見る。
「な、何だ……? い、今何をした!!」
宰相が真っ赤な顔をして怒鳴りつけてきた。
「彼らに睡眠薬をかけただけよ。ほんの少量かけただけでも効き目は抜群なの」
「何だと……? そ、それでは地下牢から人質を逃したのはその睡眠薬を使ったというわけか!」
「そうよ。私の大切な仲間たちに……よくも酷いことをしてくれたわね? それにアルベルト様まで……!」
仮にも国王であるアルベルトを痛めつけて……しかも踏みつけている宰相に怒りがこみ上げてくる。
その時――
ゴゴゴゴゴゴ……
部屋全体が激しく揺れ始め、目の前の扉から黒い煙が滲み出してきた。
「ま、まずい!! 何とかしなければ!! アルベルト! 早く本物の【賢者の石】の在処を吐け!」
そして激しくアルベルトを蹴り上げた。
「グアッ!!」
苦痛の声を上げるアルベルト。
「やめて!! アルベルト様に酷いことをしないで!! 【賢者の石】なら……私が持っているわ!!」
そして私は自分が持っている【賢者の石】を取り出した――
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