第2章 225 温もり
「アルベルト様、これからどうされるおつもりですか?」
「宰相に奪われた城を奪還するに決まっているだろう? 権力に目がくらんだような者から、この国を守らなければならないからな」
「でも、城中の人々は……全員宰相側についているのですよね?」
「ああ、おそらく洗脳されているに違いない」
その言葉に驚いた。
「え? 洗脳ですか? あんなに大勢の人々を洗脳なんて……そんなことが出来るのですか?」
「この国では聖女は絶対的な存在だ。宰相は神殿で権力を振るっているから洗脳なんて造作も無いはずだ。恐らくあの女は聖女ではないにしろ、何らかの力を持っているのだろう。それを神聖力と言えば人々はあっという間に信じてしまうだろう。催眠暗示的なものをかけられたのかもしれない」
「催眠暗示……」
それには思い当たる節がある。
「アルベルト様…私、ここへ来たばかりの頃……催眠暗示をかけられました。それにリーシャも……」
あのときは本当に怖かった。アルベルトが現れてくれなければ私はどうなっていたか分からない。この世にもういなかったかもしれない。
その時のことを思い出し、恐怖が蘇ってきた。
「どうした? 顔色が悪いし、それに震えているじゃないか……大丈夫か?」
アルベルトが心配そうに声を掛けてきた。
「はい、大丈夫です……」
答えるも、まだ身体の震えが止まらない。
「やはり疲れているのだろう? もう今夜は休んだほうがいい」
アルベルトが声を掛けてきた。
「はい……そうさせて頂きます。どうぞアルベルト様はベッドをお使い下さい」
「……」
しかし、アルベルトは気難しそうな顔で私を見ている。
「アルベルト様? どうしましたか?」
「やはりクラウディア。お前がベッドを使え。俺はソファで構わない」
「え? それはいけません。私がソファで休みますのでどうぞベッドはアルベルト様がお使い下さい」
「「……」」
私達は見つめう。
「……クラウディアは本当に聞き分けがないな……」
「そういうアルベルト様こそ………」
すると、ゴホンとアルベルトが咳払いした。
「なら、こうするのはどうだ? このベッドはわりと大きい。二人で寝ても大丈夫だと思う。……一緒にこのベッドで寝るか?」
「アルベルト様……」
こんなことくらい何でもないと言わんばかりの態度をとってはいるが、アルベルトの頬がうっすら赤くなっていることに気づいた。
冷静さを保ってるようには見えるが、実は照れているのだ。
けれど、いずれ私達は夫婦になるわけだし……別に同じベッドに入っても差し支えはない。そこで私は頷いた。
「そうですね、では二人で一緒にベッドに寝ましょうか?」
「あ? ああ、そうだな。それではクラウディアが先にベッドに入れ。俺が明かりを消そう」
「ありがとうございます」
お言葉に甘えて、そのまま私はベッドに入った。何しろ着替えも無いのだ。今夜はこのまま眠るしか無い。
アルベルトは私がベッドに入るのを見ると、部屋の明かりを消して回った。
「……それじゃ、俺も休ませてもらうよ」
「……どうぞ」
背を向けるように向きを変えると、上掛けがめくられ、アルベルトがベッドに入ってきた。
「……お休み、クラウディア」
背後からアルベルトが声を掛けてくる。
「はい、おやすみなさい」
暗闇の中、二人で無言でベッドに入っているとアルベルトの暖かなぬくもりを感じる。それが妙に安心感を与えられ……私は徐々に眠くなってきた。
……まるであの人と一緒にいるみたいだ……
そんなことを思いながら、私は深い眠りについた――
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