第2章 219 今、起こっている事

 リーシャたちと再会を喜び合った後、私は今の状況をアルベルトに説明した。


「ユダと、ハインリヒ。それにザカリーを地下牢から救出することが出来ました。彼らは私の仲間たちと一緒に今頃は救済院にいるはずです。だから今から私ひとりで彼らの元へ行ってきます」


「何だって? 今から救済院へ行くつもりか? しかもたったひとりでだと? 駄目だ! 許可できるはずがないだろう!」


アルベルトが私の手首を掴んできた。


「離して下さい。アルベルト様。きっとユダ達が心配しているはずです。私が戻らなければ、捕まったと勘違いして城にまた行ってしまうかもしれません! 皆と一緒に行動すれば目立ってしまいます!」


「それでも行かせられない! また捕まったらどうするつもりだ!」


「そうです、クラウディア様。外は危険です。御存知ですか? クラウディア様は今懸賞金が掛けられているのですよ!?」


マヌエラが青ざめた顔で訴えてくる。


「ええ、分かっているわ。私も自分が懸賞金に掛けられている貼り紙を見たから。でも、私はユダたちを助け出すことが出来たし、あなたたちはアルベルト様が助けてくれた。だからもう恐れるものは無いわ。それよりも今は救済院の皆を……!」


「いい加減にしろ! クラウディア!」


すると突然アルベルトが私の腕を引き、強く抱きしめてきた。


「何故、いつも自分一人で何でも背負おうとしている!? お前に何かあったら、残された皆がどんな気持になるか考えたことがあるのか!?」


アルベルトは私を強く抱きしめたまま震えている。


「アルベルト……様……?」


「今……城内では宰相によるクーデターが始まった……」


声を震わせながらアルベルトが話し始めた。


「え!? クーデター……?」


そんな……!

回帰前はそんなことは無かったのに……!


「宰相は、神殿を抱き込んで城内の殆どの者たちを洗脳という手段を使って掌握してしまった……全てはあの女を『聖なる巫女』として祭り上げて権力を握るために……! その為に、宰相は言いなりにならない俺が……そしてクラウディア。お前が邪魔なんだよ」


アルベルトの話を聞いていたマヌエラたちがすすり泣いている……


「……宰相が『エデル』を自分の物にするために、アルベルト様を邪魔に思う気持ちは分かりますが……でも、何故私まで……? 私はただの敗戦国の人質妻として連れてこられただけですよ?」


確かに、カチュアと宰相からすれば私は邪魔な存在だろう。だったら、私を追放すればいいだけなのに……何故捕らえようとするのだろうか?

やはり、どうあっても私を処刑したいのだろうか? けれど、今回は処刑されてしまうような罪など何も犯してはいないのに? 


「クラウディア……やはり、お前は何も気づいていなかったのだな?」


すると、アルベルトが身体を離し……私の両肩に手を乗せた。


「気づく? 何をですか?」


「それは……お前が本物の『聖なる巫女』だということだ」


「え……?」


その言葉に私は目を見開いた――

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