第2章 218 スヴェンの正体

「ア、アルベルト様……? ま、まさか……!」


スヴェンの姿の後に現れたのはアルベルトだったのだ。


「そう、スヴェンは……俺だよ。クラウディア」


アルベルトは笑みを浮かべると、私の髪をそっと撫でてきた。


「そ、そんな……」


一体どういうことなのだろう? 驚きのほうが強すぎて、考えが上手くまとまらない。


「随分混乱しているようだな? 後できちんと説明する。取り敢えず、今は行くぞ」


アルベルトは上着のポケットから帽子を取り出すと目深にかぶり、手を繋いでくると足早に歩き始めた。


「ま、待って下さい。一体どちらへ行くのですか?」


「皆のところへだ」


振り向きもせず答えるアルベルト。私は彼に手を引かれるまま歩き続けた……




「ここに皆がいる」


アルベルトが連れてきたのは大通りから少し外れた場所にひっそりと佇む三階建ての建物だった。


「ここは一体どこですか?」


「食堂を兼ねた宿屋だ。中へ入ろう」


「は、はい」


アルベルトは扉を開けると、中へと入っていく。私も彼に続いて店の中へ足を踏み入れた。


「陛下、ご無事だったのですね!?」


店に入るやいなや、男性の声が響き渡る。一体誰だろう?


「ああ、大怪我を負ったがこの通り無事だ。それも全て偶然再会出来たクラディアのおかげだ」


アルベルトは笑みを浮かべながら私を振り返る。


「クラウディア様、初めてお目にかかります」


ブラウンの髪を後ろで一つにまとめた男性が私の前に現れ、挨拶をしてきた。


「ええ、そうですが……あなたは?」


「はい。私はアルベルト様の命により、この店を任されているテッドと申します」


テッドは頭を下げてきた。


「彼はこれでも凄腕の騎士だ。いざというときの隠れ家として、この店を任せているのだ」


アルベルトが私に説明する。


「いざと言うときのため……?」


まさか、アルベルトはこのような状況になることを予測していたのだろうか?


「ここに連れてきたのにはわけがある。テッド、クラウディアを連れてきたと皆に伝えてきてくれ」


「かしこまりました」


うやうやしく返事をすると、テッドはすぐに部屋の奥へと消えていった。


「アルベルト様。皆ってもしや……」


すると――


「クラウディア様!」


室内に聞き覚えのある大きな声が響き渡る。


「え?」


声の方向を見ると扉の前にリーシャが立っていた。その背後にはマヌエラにエバの姿もある。


「「「クラウディア様!!」」」


彼女たちは一斉に私の元へ駆け寄って来た。


「皆……良かった、無事だったのね?」


私は彼女たちを見渡す。


「はい、そうです。陛下が助けてくださいました」


マヌエラが涙混じりに私の質問に答える。


「私たちは部屋に閉じ込められていたところを指輪で姿を変えていた陛下に助けていただきました」


「陛下は私達を逃がすために……危険を犯してまで……」


エバが涙を流す。


「宰相は……私達を使ってクラウディア様をおびき寄せようとしていたのです」


泣き腫らしたリーシャが震えながら訴えてきた。


「! そうだったのね……」


やはり、私が考えていた通りだった。だけど……


「良かったわ……皆無事で」


私は彼女たちを抱き寄せ……彼女たちは涙を流しながら私との再会を喜びあった――

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