第2章 140 光のシャワー

「では、どちらが先に検証致しましょうか?」


 宰相が私とカチュアを交互に見た。すると……。


「はい、リシュリー様。私から先に検証させて下さい」


 カチュアは余程自信があるのか、自ら先に手を上げてきた。


「おお、カチュア殿が先にされるのか?良いであろう。では早速、黄金の果実をこの中に入れてみなさい」


 宰相は溶液で満たされたガラスの器を指さした。


「はい、リシュー様」


 カチュアは自分が採取してきたと主張する黄金の果実を一つだけ取ってくると、私達をグルリと見渡した。


「それでは溶液に入れますね?皆さん、よくご覧下さい」


 そしてポトンと果実を溶液の中に沈めた。


 『……』


 私達は息を潜めて、黄金の果実の様子を注視した。果実からはぷつぷつと細かい気泡の泡が立っているが、一向に色が抜けていく気配はない。


「変化がないようですな?」


 宰相はまるで、してやったりと言わんばかりの口調で私達を見渡した。


「ああ、そのようだな」


 頷くアルベルトには別に驚愕の色は見て取れない。まるで最初から結果が分かっているようにも思えた。


「どうですか?これで私の黄金の果実が本物だと証明されたのではありませんか?」


 カチュアは黄金の果実を取り出すと私達を見渡した。


「その通り、流石は『聖なる巫女』だ」


 満足そうに笑みを浮かべる宰相を気にもとめない様子で、アルベルトが私に声を掛けてきた。


「クラウディア、次はお前の番だ」


「はい」


 積み上げられた黄金の果実を一つだけ選んで取ると、早速私私は黄金の果実を溶液時の中に浸した。


 すると……。


 カッ!

 

  一瞬、溶液の中が光を放ち、容器の中が金色の光に満たされた。


「えっ?!」

 

 驚きのあまり、つい声に出してしまう私。


「こ、これは……」


 アルベルトも驚きの表情を浮かべている。一方の宰相はこれみよがしに笑った。


「フハハハハハ……!やはり、偽物だったようですな?その果実は……」


「少し待て!何か様子が……!」


 宰相の笑いを制するかのようにアルベルトが声を上げた。見ていると、光はどんどん輝きを増し、ついに外に溢れ出したのだ。

 そして放出された光からキラキラと輝く黄金の粒が降り注いできた。その光を浴びていると何故か心が温かい気持ちで満たされていく。


「おお……」

「これは……?」

「何とも穏やかな気持ちになれる……」


 神官たちはうっとりした顔つきで目を閉じ、騎士たちも呆然と空を見上げている。


「クッ……!」

「そ、そんな……!」


 一方の宰相とカチュアは焦りの色を隠せないでいる。それは当然のことだろう。この光を浴びていると、何故か幸せな気持ちがこみ上げてくるのだから。


 やがて光の放出がおさまると、容器の中には黄金に輝く果実が小さな気泡を出しながら液体に沈んでいる光景がそこにあった――。

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