第2章 42 王宮図書館
コンコン
ノックをすると、すぐに扉が開かれた。
「あ、貴女がこの国に嫁いでこられたクラウディア様ですね?」
中から現れたのは茶色い髪の毛に眼鏡をかけた黒いローブ姿の男性だった。
「はい、そうです」
返事をすると、男性はニコリと笑みを浮かべた。
「お話は既に陛下から伺っております。どうぞ中へお入り下さい」
「はい、ありがとうございます」
頭を下げて図書館の中へ入ると、眼鏡の男性は首を振った。
「そんな、お礼なんてしないで下さい。この図書館は王族の方は誰でも出入り自由な場所なのですから」
「分かりました。では今後も私は自由にこの図書館を利用出来るのですね?」
「ええ。勿論です」
読書が好きな私にとっては、とても嬉しい話だった。
「あ、申し遅れましたが私はここの司書を務めておりますジョゼフ・ロイドと申します。どうぞジョゼフとお気軽にお呼び下さい」
ジョゼフは深々と頭を下げて来た。
「ありがとう、では早速中を見させてもらうわ」
「ええ、どうぞ。私は1階にあるカウンターに居りますので、何かありましたら声をお掛け下さい」
「はい、分かりました」
「それでは失礼致します」
ジョゼフが去ったところで、私は改めて図書館を見渡した。
王宮図書館は3階建てで、1階から3階まで吹き抜けの造りになっていた
部屋の中央には螺旋階段があり、円筒の建物に沿うように本棚がぎっしりと並べられている。
「外から見たことはあるけれど、中に入るのは初めてだわ……」
回帰前、あれほど望んでいても中へ入ることが出来なかった図書館に入れるとは夢にも思っていなかった。
「回帰前とは違う行動を私が取って来たから色々と事情が変わって来たのかしら?」
思わずポツリと呟いた。
けれど相変わらず宰相は私に敵対心を剥き出しにしているし、カチュアに至っては何を考えているのか得体がしれない。
どのみち彼らとはなるべく関わらないほうが良さそうだ。
アルベルトに会ったところで、すぐに部屋の交換の申し出があったことを伝えよう。
尤も、アルベルトが何と返事をするかは不明だが……。
「余計なことを考えるのはやめましょう。確かこの国の図書館には魔術に関する本が置かれていると聞いたことがあったわね」
まずはその本を探してみることにしよう。
何故なら私には知りたいことが幾つもあったからだ。ここに置かれている魔術の本を読めば、少しは謎が解けるかもしれない。
「でも……」
私は図書館を見渡した。
「こんなに膨大な本棚から魔術に関する本を見つけるのは難しいわね……」
どうしよう、ジョゼフに声を掛けてみるべきか……。
私は迷った。
何故なら彼が私の味方かどうか、まだ判断できなかったからだ。
もし、宰相の手先だったなら私は少しでもスキを見せてはいけない。
今回は、彼に足元をすくわれるわけにはいかないのだから。
私は何としても生き残り、アルベルトと離婚してヨリックの元へ帰るのだから……。
****
1時間後――。
私はまだ王宮図書館で魔術に関する本を探していた。
「う~ん……中々見つからないわね……」
背の高い本棚を見上げて呟いたその時……。
「まだ目当ての本は見当たらないのか?」
不意に背後から声を掛けられた。
「え?!」
慌てて振り向くと、穏やかな笑みを浮かべたアルベルトがそこに立っていた――。
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