第2章 43 図書館に現れた人物
「あ!へ、陛下……!」
まさかアルベルトがこの図書館に来ていたとは思わなかった。
「申し訳ございませんでした。すぐに出て行きます」
慌てて頭を下げ、急いで出て行こうとした矢先……。
「おい、待て。何故出て行こうとする?」
突然アルベルトに左手首を掴まれた。
「いえ、図書館に入ってしまったので……」
「何を言っている?俺が中に入る許可を与えたことを忘れてしまったのか?」
「あ……」
そういえばうっかりしていた。回帰前の記憶が強すぎて、どうしても今の自分が引きずられてしまう。
「そうでしたね。陛下が私に図書館に出入り出来るように計らって下さったのでしたよね?」
「ああ、そうだ。何も遠慮することは無い。だから出て行くことは無いぞ」
妙に距離を詰めながらアルベルトが語りかけてくる。
「わ、分かりました。どうもありがとうございます……」
「分ればいい。それで目当ての本は見つかったのか?」
アルベルトは私から手を離すと、再び尋ねて来た。
「いえ、それがまだ……」
返事をしながらアルベルトを見上げると、次に彼は耳を疑うような言葉を口にした。
「そうか。ならどんな本を探しているんだ?俺が場所を教えてやろう」
「ええっ?!そ、それは!」
「何故驚く?この図書館は俺が子供の頃から出入りしていたのだ。何処に何が置かれているかくらい、良く知っているぞ?」
「で、ですが……」
一体彼はどうしてしまったのだろう?回帰前の世界では彼は私の存在を徹底的に無視し、カチュアとばかり過ごしていたと言うのに。
それが今のアルベルトは私の為に本を探そうとしている。
「何も、遠慮することは無い。ほら、早く目当ての本を言ってみろ」
けれど私はアルベルトにも自分が何の本を探しているか知られたくはなかった。
魔術に関する本を探しているなどと言うことがバレてしまえば、よからぬ考えを抱いているのではないかと疑われてしまうかもしれない。
「いえ、特に何の本を探しているかという訳ではありませんので。ただ何か面白い本があるのかと思って眺めていただけですから」
「……」
私の言葉をアルベルトは黙って聞いている。
「それに陛下はお忙しいお方でしょうから、どうか私の為にお時間を割くようなことはなさらないで下さい」
そう、むしろ私はアルベルトに構われたくは無かった。
私は今回こそ、無事に生き残ってアルベルトと離婚をし……『レノスト』国に帰るのが目的なのだから。
「分かった。お前がそこまで言うなら、俺はもう行くことにしよう。だが、夕食は又一緒に取るからな?今回は2人きりで」
「はい……分かりました」
部屋の移動の話は夕食の時に話すことにしよう。
今は一刻も早く1人になって、魔術に関する本を探すのが先だ。
「それではもう俺は行くが……」
アルベルトは立ち去りかける瞬間に、私に耳打ちしてきた。
「魔術に関する本が読みたいのなら、3階にある35番の書棚を探すといい」
「え?!」
何故、それを……?!
しかし、尋ねる前にアルベルトは背を向けると足早にその場を去って行った――。
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