第2章 25 城内の回廊で
「クラウディア様。このお城は本当に大きくて美しいですね」
「ええ、そうね。リーシャ。私もそう思うわ」
今、私はリーシャと2人だけで美しい広大な庭を挟んだ回廊を歩いていた。
太陽の日差しが明るく差し込み、空には青空が広がっている。
とても…穏やかな時間だった。
回廊を歩く人の姿は私達以外に無く、のんびりと話をしながら私達はとある場所へ向かっていた。
「でも……本当に宜しかったのでしょうか?」
リーシャが躊躇いがちに尋ねてきた。
「何が?」
「新しく侍女になられたマヌエラ様です」
私は先程アルベルトからマヌエラに城の案内をさせるという申し出を断っていた。
そしてリーシャと2人だけで城の散策をさせて貰いたいと頼んだのであった。
その話をした時は、城の案内人がいなくて大丈夫なのかと尋ねられたものの、何とかなるでしょうとアルベルトに返事をしたのだった。
「リーシャだって、マヌエラが一緒だったら遠慮して話が出来ないでしょう?」
笑みを浮かべてリーシャに尋ねた。
「え、ええ……確かにそれは言えますが…あ、今の話はここだけにして頂けますか?」
慌てた様子で頼んでくるリーシャが何となく娘の葵を思い出させる。
葵…倫……今、2人はどうしているのだろう……?
愛しい子どもたちの顔を脳裏に浮かべながら返事をした。
「ええ、勿論よ。私達2人だけの秘密ね」
「はい」
2人で並んで歩いていると不意にリーシャが尋ねてきた。
「ところで、クラウディア様は今どちらに向かわれているのですか?」
「ええ、実はね……兵士の訓練場に行ってみようかと思っているの」
「兵士の……訓練場?ですか……?一体何故そのような場所に行かれるのですか?」
「ええ。……会いたい人たちがいるのよ」
「会いたい人たち……ですか?」
「ええ。信頼できる人たちよ」
不思議そうに首を傾げるリーシャ。
確かに旅の間、ずっとシーラに身体を乗っ取られていたリーシャからしてみれば何故私が兵士の訓練場に行くのか理解出来ないだろう。
リーシャと旅の思い出を共有出来ないのは寂しいことだが、あの過酷な旅の記憶が無いのはむしろ喜ぶべきことなのかもしれない。
「きっと、リーシャのことも歓迎してくれるはずよ?」
「そうなのですねか?実はここだけの話ですが、『エデル』は私達からしてみれば敵国のようなものではありませんか?でも信頼できる人たちがここにもいるということなのですよね?」
リーシャは何処か嬉しそうに見えた。
やはり、口には出さないけれどもリーシャなりに不安な気持ちがあったのだろう。
私が……彼女を守ってあげないと。
その為にも出来ればユダ達に会えれば……。
そんなことを考えていると、向かい側から複数の人影がこちらへ向かって歩いてくる姿が見えた。
「クラウディア様……誰か来ますね」
リーシャが緊張した面持ちで声を掛けてきた。
「ええ、そうね」
やがて、互いの距離が近付き……相手が誰か判明した。
あぁ……なんてことだろう。
一気に気分が憂鬱になる。
向かい側からやってきたのは宰相とカチュア。
そして彼の忠実な側近達だったのだ――。
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