第1章 125 旅の終わりに
途端に……。
ガクンッ!
まるで糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちるリーシャ。
「リーシャッ!」
咄嗟に叫んだ時――。
「おっと!」
スヴェンが咄嗟にリーシャの身体を抱きとめてくれた。
「ありがとう……スヴェン」
「いや、これくらい別にどうってことはないって。だけど、本当にあのシーラってのはこの身体から消えたのか?あ、別に姫さんの薬の効果を疑っているわけじゃないけどな」
「……大丈夫よ。多分…」
スヴェンの腕の中で意識を失っているリーシャの顔を見つめた。
心なしか、その顔には幼い表情が宿っているようにも見える。
「スヴェン。リーシャを馬車の中に運んでくれる?」
「ああ、お安い御用だ」
スヴェンはリーシャを担ぎ上げたまま馬車へと運んでいく。
「クラウディア様。次はどうされるおつもりですか?」
ユダがまだ私の前に立っているヨミを見ながら尋ねてきた。
「彼には帰って貰うわ。仲間の元に」
私は再度、ヨミに声を掛けた。
「ヨミ。仲間の元へ帰ったら皆に伝えなさい。恐らく、もうこの世に錬金術師はいないと思うと。そして私のことも…今回の旅のことも全て記憶から消し去りなさい。そのことを胸に刻みつけて…今すぐここから去りなさい」
「はい、分かりました」
ヨミは頷くと、頭を下げ…先程私達が出てきた魔法陣の上に立った。
そして魔法陣の光のシャワーに包まれて、ヨミは光とともに消え去っていった――。
「……」
私はヨミの消えていく姿を最後まで見届けると、その場にいる全員に語りかけた。
「皆さん、ここに辿り着くまでに色々ありましたが今迄お世話になりました」
『……』
全員黙って私の話を聞いている。
「皆さんにお願いがあります。どうか、私が錬金術師であることはここだけの話にして下さい。誰にも口外しないと約束して頂けますか?」
するとユダが突然手を上げた。
「はい。我々一同、クラウディア様が錬金術師であるということは…墓場まで持っていきます。皆もいいなっ?!」
「もちろんだ。俺は絶対誰にも言いません」
ヤコブが頷いた。
すると、他の兵士たちも次々と声を上げた。
「誰にも言いませんよ」
「当然です」
「俺達だけの秘密ですね」
そして彼らは皆、声を上げて笑った。
初めはギスギスした雰囲気だった『エデル』の使者達。
ここまで辿りく間に様々な出来事があった。
苦難な旅路の中、時には裏切り者のことで疑心暗鬼を抱いたこともあった。
けれどそれらの出来事があったからこそ、新しい信頼する仲間も出来たし皆の結束も強まったのだ。
ユダが私に手を差し出してきた。
「参りましょう、クラウディア様。『エデル』の城まで後少しです。最後までお供させて下さい」
「ええ、ありがとう。では行きましょう」
そして私はユダの手を取った――。
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