第1章 124 魔法陣と最後の服従
ヨミは地面に杖で大きな円を描いていく。
私は羊皮紙の上で魔法陣を描いたことが無かったので、その鮮やかな手付きに驚いて見守っていた。
ヨミはその後も円陣の中に幾つもの幾何学模様を描き出し…ついに魔法陣が完成したのか、円の中心に立った。
そして何か呪文を詠唱しているような声が聞こえ‥‥。
ドンッ!!
ヨミは魔法陣の中心に杖をついた。
すると途端に魔法陣が光り輝き、眩しい程に光のシャワーが魔法陣からほとばしった。
「うわぁっ!!」
「何だ?!これはっ!」
「ま、眩しいっ!」
途端にあちこちで目を押さえて声を上げる人々。
光の中心でヨミは私に杖を地面に突き立てたまま声を掛けた。
「クラウディア様。『エデル』へ続く【ポータル】が開きました。どうぞお入りください」
「ええ、分かったわ」
頷き、魔法陣に近付こうとしたことろで突然ユダに腕を掴まれた。
「クラウディア様っ!あいつを信じるのですかっ?!本当にこの魔法陣が『エデル』へ続くと言う事を」
ユダの目は真剣だった。
「…信じるわ」
「クラウディア様‥‥」
ユダが息を呑んで私を見る。
「私は、自分の作った薬に自信があるの。シーラもヨミも完全に私に服従しているわ。だから、ヨミを信じるのよ」
「そうだな。姫さんがそう言うなら、俺も信じる」
スヴェンがユダの背後から現れた。
「…分かりました」
ユダは一度だけ俯き…そして顔を上げた。
「それでは皆!今から我々はこの魔法陣を使って今から『エデル』に帰還する!ただし、この魔法陣を恐れる者がいるなら、その者はこのまま馬に乗って旅を続けろ!」
するとヤコブが進み出て来た。
「俺はクラウディア様を信じます。この魔法陣で『エデル』に共に参りましょう」
「ヤコブ…」
「俺だってこの魔法陣で国に帰るぜ。何しろこれを使えば一瞬で移動できるんだろう?わざわざ馬に乗って何日もかけて国に帰るなんぞごめんだからな」
そう言って魔法陣へ歩いて行くのはライだった。
「王女様。僕は当然この魔法陣で『エデル』へ行きますよ」
トマスは私に笑いかけた。
「王女様が魔法陣で『エデル』へ向かうなら俺も一緒です」
ザカリーが私に声を掛けてくる。
そして、結局この場にいる全員がヨミの作り上げた【ポータル】を使って『エデル』へ向かうことになった。
****
私たちは全員、眩しく光り輝く魔法陣の中に立っていた。
「クラウディア様、それでは『エデル』へ向かいますが…宜しいですか?」
魔法陣の中心に立つヨミが私に声を掛けて来た。
「ええ、いつでもいいわ」
「では…参ります!」
ヨミは地面に突き刺さっている杖を一気に引き抜いた。
途端により一層、眩しい光を放ち‥‥私はまるで洪水のような光のシャワーに耐え切れず、目を閉じた――。
****
「クラウディア様。もう目を開けて頂いて大丈夫です」
ヨミの声に私は目を開けると、遠くに大きな町が広がっているのが目に入った。
「あれは…」
私が呟いた時‥‥。
「信じられない‥‥!本当に一瞬で『エデル』に着くなんて!」
ユダが叫んだ。
間違いない、『エデル』だ。私は…ついに再びこの国へ戻って来たのだ。
他の使者達も長かった旅の終わりに歓喜の声を上げる中、私はシーラとヨミの前に立った。
「ヨミ」
「はい」
「あなたたちは錬金術師を見つけられなかった。『レノスト』王国には錬金術師はいなかったのよ。ここで私と別れた段階で私のことは永久に記憶の中から消し去りなさい」
「はい」
次に私はシーラを見た。
「シーラ」
「はい」
「今すぐ、リーシャの身体を返しなさい。そして私のことは永久に記憶の中から消し去りなさい」
「分かりました。では、今すぐこの身体を本人に返します」
そしてシーラは目を閉じた――。
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