第1章 119 私とシーラ
「本当は…こんな薬を使いたくは無かったのだけど、この薬は【服従薬】と言って、必ず自分の言うことに従わせる薬なのよ」
シーラから離れた場所に人を集めると、私は小声で説明した。
「そうですか、それは中々恐ろしい薬ですね」
セトが頷く。
「ええ、これを食事に混ぜてシーラに食べさせるのよ」
「だけど姫さん。シーラが素直に出された料理を食べるとは思えないけどな」
「ええ、クラウディア様。俺もそう思います」
「そうね。スヴェンとユダの言う通りだと思うわ」
私の言葉にトマスが尋ねてきた。
「だとしたら、どうするのですか?」
「大丈夫よ。この薬の凄いところは無臭なのに効果があるというところよ。これを料理に混ぜてシーラに差し出すわ」
そして私はスヴェン、ユダ、トマス、ザカリーの顔を順番に見渡した。
「この薬は強力だから、私が1人でシーラに持って行くわ。貴方達は離れた場所で見ていて?」
「だけど、クラウディア様お一人では危険なのでは?」
「ああ、ユダの言う通りだ。俺は姫さんになら服従されてもいい。ついていかせてくれ」
「何だと?だったら俺もクラウディア様に服従する。お供させて下さい」
スヴェンに引き続き、ユダまでとんでもないことを言ってきた。
「な、何を言っているの?私は2人を無理やり服従させるつもりはないのよ。冗談はそのくらいにして」
2人はその言葉が不服だったのか、何やらブツブツ言っているが私は聞こえないふりをすると、部屋の中央に置かれたテーブルへ向かった。
テーブルの上に乗せられたお椀に【服従薬】を垂らした。そして大鍋の蓋を開けるとお玉で熱々のシチューをよそい椀とサジを持ってシーラの元へ向かった。
「シーラ」
目隠しをされているシーラの元へ向かうと声を掛けた。
「その声は…クラウディア様ですね?」
シーラの声はとても冷たかった。
「貴女に食事を用意したの。今目隠しを外して上げるわ」
近くにあった棚の上に料理を乗せ、シーラの側にしゃがみこんで目隠しを外した。
「……」
少しの間シーラは部屋の明かりで眩しそうに目を瞬いていたが、視線を私に合わせた。
「クラウディア様。食事を用意したとのことですが、私が大人しくその料理を口にすると思いますか?中に何が入っているかも分からないのに。」
それは予想通りの返事だった。
「私を疑っているの?だったら私が試してみましょうか?」
棚の上においたシチューをシーラの前に差し出してみせた。
「ええ、そうですね。是非お願いします」
「分かったわ」
このときの為に別に用意していたお椀にシーラの器からサジですくって自分のお椀によそうと、彼女の前で私はシチューを飲んだ。
「…とても美味しいわ」
そしてシーラを見た。
「どう?私に何か異変でもある?」
「いえ、確かに今はありませんが……まだ分からないではありませんか」
「そうね。ではこのまま少し様子を見てもいいけど…シーラ。その体は貴女のものではないのよ?リーシャのものなのよ。そんな貴女に毒でも盛ると思ったの?」
「…確かにそうですね。妙な物を入れるはず…ありませんよね……?」
シーラの言葉に確信した。
徐々に【服従薬】が効いてきたのだと――。
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