第1章 118 牽制する2人

 私達3人はシーラが軟禁されている家へとやってきた。


「俺が扉を開けますよ。中には『エデル』の仲間達もいますからね」


そして何故かユダはチラリとスヴェンを見る。…ユダの口元は不敵?な笑みが浮かんでいる。


「……クッ…」


一方スヴェンは悔しそうに歯を食いしばる。

まさか、誰が扉を開けるかというだけで、2人は牽制しあっているのだろうか?


「王女様、あの2人……随分些細なことでも火花を散らしていますね」


トマスが耳打ちしてきたので、私は無言で頷いた。

やはり、トマスも私と同じ考えのようだ。



ガチャ……


扉が開かれると、家の中央の柱に座った姿勢で縛られているシーラが目に入った。それだけではない。シーラは目隠しもされている。

そしてシーラの近くには『エデル』の兵士たちと、4人の『シセル』の村人がいた。村人の中にはセトにザカリーの姿もある。


「王女様!」


ザカリーは扉が開かれると、真っ先に駆け寄ってきて……。


「おい!それ以上姫さんに近づくな!」

「ああ、どうも貴様は信頼出来んっ!」


スヴェンとユダが前に立ちはだかった。


「あ…すまなかった。ただ王女様の意識が戻ったのが嬉しくて……」


申し訳無さそうに2人に謝るザカリー。


「スヴェン、ユダ。彼に話があるの。そこをどいて貰える?」


「え……?クラウディア様?」

「姫さん…あいつと話をするつもりか?」


ユダとスヴェンは驚いた様子で私を見る。


「ええ、そうよ」


躊躇うことなく頷くと、2人は渋々どいてくれた。


「王女様……目が覚められて本当に良かったです。血を吐いたと聞かされた時は本当に驚きました」


ザカリーは何処かホッとした様子で話しかけてきた。


「ええ、もう大丈夫よ。トマスが【エリクサー】を持っていて、飲ませてくれたお陰でね」


そしてチラリとトマスを見た。


「いえ。元々【エリクサー】は王女様の物ですから、当然です」


「くそっ……トマスのやつ……」

「いいとこ取りしやがって……」


ユダとスヴェンが何やら今度はトマスを敵対視しているようだけれども……もう、聞かなかったことにしておこう。

それよりも今、気になるのはシーラのことだった。


「シーラが縛られているのは理解出来るとして……何故、目隠しまでされているの?」


「はい、それはシーラがどのような手段で王女様の専属メイドの身体を乗っ取ったのか方法が分からなかったからです。中には相手の目を見つめるだけで催眠暗示を掛けることが出来る者もいるようですから」


「なるほど、それなら納得がいくわ」


けれど、シーラの視界が遮られているのなら都合がいい。

これなら彼女にバレることなく食事に【服従薬】を盛ることが出来る。


私は背後に立つ3人に声を掛けた。


「食事を中に運んでもらえる?そして皆で頂くことにしましょう」


「よし!任せてくれ姫さん!」

「任せて下さい!クラウディア様っ!」


勿論、スヴェンとユダが同時に声を上げたのは言うまでも無かった―。

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