第1章 116 服従薬
【エリクサー】を飲み込んだ途端、身体の中が一瞬熱くなり……すぐに熱は冷めていった。
「あ……」
意識がクリアになり、目を開けた。
どうやら私はベッドに寝かされていたようだった。
すると、私を覗き込んでいるスヴェンとユダ、それにトマスの姿が目に入った。
スヴェンとユダは今にも泣きそうな顔で私をじっと見つめている。
「皆……」
ベッドから体を起こした途端――。
「姫さんっ!良かった…!死んじまうんじゃないかと思った…!」
スヴェンが私の手を握りしめてきた。
「無事で…本当に良かったです…」
ユダは涙声だった。
「そうだわ、シーラはどうしているの?」
「姫さん……意識が戻ったばかりですぐに……」
スヴェンが眉をしかめた。
「少しはご自分のお身体を労ってください。俺たちがどれだけ心配したか……」
ユダの声はどこか恨めしく聞こえる。
「彼女なら、今ザカリーさん達が見張っていてくれていますよ」
トマスが教えてくれた。
「分かったわ。すぐにシーラのところへ行くわ。私が作った薬は何処にあるのかしら?」
「その薬なら、今も姫さんが握りしめているぜ」
「え?」
スヴェンに指摘されて驚いて右手を見ると、たしかにその手にはしっかりと瓶が握りしめられていた。
「まさか…。握りしめていたなんて……」
「クラウディア様は倒れたときもずっとその瓶を握りしめて離そうとはしませんでした。本当に、貴女は意思の強い方ですね」
ユダが静かに語った。
「この薬…余程大切なものなのですね?何に使う薬なのですか?」
トマスが私に尋ねてきた。
「この薬はね……相手を服従させる薬なのよ。本当はこんな方法を使いたくは無かったけれど、リーシャを取り戻すためには仕方ないわ」
「どういう事だ?姫さん」
首を傾げるスヴェン。ユダ、トマスも真剣な表情で私をみつめている。
「シーラにこの薬を使って、リーシャの身体から出ていって貰うわ」
そして私はベッドから降り立った――。
****
外に出ると空はすっかり日が落ちて、夜空に満天の星が輝いていた。
「まぁ、すっかり夜になっているわ。今何時なのかしら?」
「19時を少し過ぎたところですよ」
私の隣に絶つユダが教えてくれた。
「19時……」
「ああ、そう言えばザカリーが言っていたんだよ。姫さんの意識が戻ったら食事を出したいって。実は俺たちもまだ何も食事をしていないんだよ」
スヴェンの言葉に、ある考えが浮かんだ。
「食事…。そうだわ。と言うことはシーラもこれから食事なのよね?」
「ええ、そうです。一応彼女にも用意はしていますが……」
ユダは何処か不服そうにしている。
でもシーラがまだ食事をしていないのは都合がいい。食事を薬に混ぜればシーラに飲ませることが出来る。
「それなら、まずは食事の準備をしてシーラの元へ行きましょう。そして食事を持ってシーラの元へ行くわ」
「よし、そうだな」
「はい」
「分かりました、王女様」
私の言葉に3人の仲間は頷いた――。
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