第1章 114 命懸けの錬金術
「これはマンドレイクの畑ですよ?もう解毒は済んでいますが、これをどう使うのですか?」
「マンドレイクはよく錬金術に使われるのよ。今回このマンドレイクを使って、ある薬を使うわ。本当はあまり作りたくは無かったけれど……」
「クラウディア様…」
ユダは神妙そうな顔で私を見るものの、どのような薬を作るのかは尋ねてくることは無かった。
「ユダ、私はもう一度錬金術で薬を作るわ。だからスヴェンと一緒にシーラを見ていてくれる?」
「ええ、それは構いませんが…クラウディア様のお手伝いはしなくて大丈夫なのですか?」
「私なら大丈夫よ。それよりも今はシーラをお願い」
「分かりました。クラウディア様の仰せの通りに致します。ではスヴェンの元へ行ってきますね」
「お願いね」
ユダは頷くと、シーラとスヴェンがいる家に向かって去って行った。
1人になった私は早速、マンドレイクを引き抜いた――。
****
『シセル』の村は殆ど無人に近いので、誰にも見られずに1人で錬金術を行なうには適した場所だった。
「今回はこの家を借りようかしら」
家の中に足を踏み入れた私は内鍵がしっかり掛けられることを確認した。
錬金術は危険が伴う為、必ず1人で行なうことになっているからだ。
「さて、始めようかしら…」
テーブルの上に錬金術に必要な材料を全て並べると、羊皮紙の上に術式を描き始めた。
シーラの為だけに使用する薬品を作る為に。
やがて、羊皮紙に描かれた魔法陣が青白く光り始めた――。
****
「…ハッ」
どの位の時間が経過したのだろう。気づけば私の前には容器に入った液体が出来上がっていた。
「…完成したのね…え?」
気づけば着ている服の胸元に血が滲みていた。
「どこか怪我でもしたのかしら?」
慌てて自分の身体を調べるも、幸いどこも怪我をしている様子は無かった。
「良かった……うっ!」
突然喉元に鉄のような物が込み上げてきた。
次の瞬間……。
「ゴフッ!」
咳き込んだ途端、激しく血を吐き出してしまった。
「あ……」
ひょっとすると錬金術を立て続けに行った為に、何処か内蔵を損傷してしまたのかもしれない。
「う……」
苦しい。胸がズキズキする。
そして思った。
迂闊だった。こんなに頻繁に錬金術を使うことになるなら自分の為に【エリクサー】を残しておけば良かった。
あれからどれくらい経過しているのか、時間の感覚がさっぱり分からない。けれども一刻も早くシーラの元へ行き、この薬を使わなくては。
「う……」
薬の入った瓶を握りしめると、ふらつく身体に鞭打つように家を出た。
「え…?夕方かしら…?」
外に出ると、空はオレンジ色に綺麗に染まっていた。
私がこの家に入ったのは、まだ太陽が真上にあった。
「つまりあれから4〜5時間は経過しているということかしら……?」
胸の痛みに耐えながら、シーラが監視されている家を目指して歩いているとこちらへ駆け寄ってくる人物の姿が見えた。
その人物は……。
「姫さんっ!」
「ス……スヴェン…」
「姫さん!どうしたんだ!その血はっ!」
スヴェンが駆け寄りながら尋ねてきた。
「スヴェン……」
良かった…スヴェンが来てくれた。
そこで私は再び意識を失った。
誰かに抱きとめられるのを感じながら――。
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