第1章 113 ユダへの説明
「クラウディア様。リーシャの身体を盾に使って…とは、一体どういう意味なのですか?あの者はリーシャに化けた別人なのでは?」
「いいえ、そうじゃないの。身体はリーシャのものなのよ。ただ、その身体をシーラが魔法で精神をのっとっているらしいわ」
「魔法ですって?!そんなまさか…!まだ魔法を使える者がこの世に存在していたのですか?」
ユダが目を見開いた。
「ええ、そうね。私も驚いたもの。しかもそれだけではないわ。シーラの他にも組織の中で魔法を使える人物がまだいるそうよ」
「そうだったのですか……。ですが驚きです。クラウディア様が錬金術師だったこともそうですが、まさかまだ魔法を使うことが出来た者がいたなんて……」
ユダが驚くのは無理も無かった。
かつてはこの世界にも多くの魔法を使えるものがいたが、いつしかその数は激減し……人々から忘れられていったとされていたからだ。
尤も…いずれ『エデル』に突如として現れる、『聖なる巫女』と呼ばれるカチュアも神聖魔法を使うことが出来る人物だった。
そして彼女はその神秘的な力により、国の人々から…そしてアルベルトから愛されることになるのだけど……その話を口にすることは出来ない。
「本物のリーシャの精神は今はあの身体の中で、深い眠りについているそうよ」
「それではやはり、リーシャは…いえ、シーラはクラウディア様の敵だったというわけですか?」
ユダが眉をしかめながら尋ねてきた。
「敵かどうかは分からないわ。ただ、彼女は最初に言ったのよ。私と一緒に逃げましょうと」
「何ですって?」
ますますユダの顔が険しくなる。
「シーラ自身は『エデル』に人質として嫁ぐ私を組織に連れて行くことで人助けをしているつもりになっているのかもしれないわ。愛されない結婚でもいいのかと尋ねられたもの」
「!そ、それは……」
私の言葉にユダの顔が曇った。
「でも、それでも構わないと言ったわ。だって私の背後には『レノスト』国の城の人達の命が懸けられているのだから。皆を守る為にも私はアルベルト新国王に嫁がなければならないのよ」
「クラウディア様……」
私の名を呼ぶユダの声はどこか悲しげだった。
「けれど、それでも拒否したらシーラは、リーシャの身体を盾に、脅迫してきたのよ。リーシャの身体に致命傷の傷を負わせるつもりだったのね。そこへ2人が家の中に飛び込んできてくれて、助かったのよ。本当にありがとう、感謝しているわ」
「い、いえ。俺は……クラウディア様の護衛兵士ですから」
笑みを浮かべて感謝の言葉を述べると、ユダが顔を赤らめながら返事をした。
「でも、ユダとスヴェンが駆けつけて来れなかったら……きっとリーシャは殺されていたわ。シーラの口ぶりでは、もう何人も既に同じ手口で人を殺害してきたみたいだったもの」
「そんな…!それで、我々にシーラの手足を拘束するように頼んだのですね?自らの命を絶つことが出来ないように…」
「ええ、そうよ」
頷く私にユダは神妙な顔で提案してきた。
「それでは…あのままシーラの手足を拘束したままの状態で『エデル』へ連れていきましょうか?手足の自由が聞かなければ自分の意志で死ぬことなど出来ないでしょうから」
「確かにそうかも知れないけれど…でも、それでは根本的解決は出来ないわ。単なる一時しのぎよ。やはり確実な方法を取らないと」
「確実な方法……?それは一体どのような方法なのです?」
「ええ、これを使うのよ」
私は足元にあるマンドレイクの畑を指さした――。
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