第1章 105 ザカリーの謝罪、そして……
「ザカリー。貴方のお父様は……」
私がザカリー達の傍へ近付いて声を掛けると、何故か全員が青ざめた様子で椅子から立ち上がった。
そして次の瞬間、全員が片足で跪いてきたのだ。
「え?な、何?!どうしたの?」
彼等の変貌ぶりに戸惑っていると、ザカリーが答えた。
「王女様、本当に大変失礼なことをしてしまいました。お陰様で俺の父親は元通りになりました。他の者達も同様に元通りになりました。これもすべて王女様が、貴重な【聖水】を惜しげもなく俺たちに分けて下さったお陰です。ありがとうございました」
「え?そうなのね?皆元通りに戻れたのね…。本当に良かったわ……」
するとそこへ1人の初老の男性が進み出てきた。
「王女様。私はザカリーの父親で、この村の村長だったハリーです。この度は我らを救って頂き、本当にありがとうございました」
「「「ありがとうございます」」」
するとマンドレイク中毒の末期患者だったと思われる3人も私に礼を述べてきた。
「いいえ、お礼を言われるほどのものではありません。何しろこの村がマンドレイクの毒に侵されてしまったのは、私の父のせいですから。代わりに償いをするのは当然のことです」
「ですが…俺たちは……いや、俺は王女様に酷いことをしてしまいました。無礼な態度を取ってしまいました。俺達のような平民を助けてくれようとしていたのにも関わらず……。挙げ句に俺は王女様を疑い、縄で縛っただけではなく、あんなに冷たい檻に入れました。王女様の命が危険に晒されるかもしれないことを知りながら……」
「ザカリー……」
すると――。
「「その通りだっ!!」」
「キャアッ!な、何っ?!」
突然同時に背後で声があがり、思わず私は叫んでしまった。
驚いて振り向くと、そこにはいつの間にかスヴェンとユダが立っていたからだ。
何やら2人は相当激怒している様子だった。
「ああ!そうだっ!お前は俺の姫さんにとんでもないことをしてくれたんだぞっ!」
「俺のクラウディア様に無礼を働いた罪……償ってもらうぞっ!」
2人とも、何故か私を自分の所有物扱いの言い方をしている。
「おいっ!誰がお前の姫さんだっ?!」
「貴様こそクラウディア様を勝手に自分の物扱いするなっ!」
激しくいがみ合う2人に私達は呆気に取られていた。
「何だと……貴様、またやる気かっ?!」
「面白いっ!相手になってやるぞっ!」
互いに剣を抜こうとするユダとスヴェン。これは…何とか止めないとっ!
「落ち着いて、2人とも……」
私が声を掛けたその時――。
「2人とも!いい加減にしてくださいっ!!」
ひときわ大きな声をリーシャが上げ、その声に驚いた2人はピタリと喧嘩をやめた。
「何をされているのですか?!今はそんなことをしている場合ではありませんよね!クラウディア様が目を覚まされたのですから、状況を説明するのが先ではありませんかっ?!」
リーシャの一喝が余程効いたのか、辺りは水を打ったようにシンと静まり返った。
「クラウディア様。これで落ち着いて話が出来ますね?」
にっこり笑って私を見るリーシャ。
「え、ええ…そうね……」
そしてチラリとスヴェンとユダを見ると、2人とも申し訳無さげに俯いている。
その時、私は思った。
ひょっとするとスヴェンとユダだけではなく、リーシャもマンドレイクの毒に侵されているのではないだろうか…と――。
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