第2話 さくらとメッセージ
「みー君の事いっぱい甘やかせて、みー君の事大好きで……そ、そんなちょうどいい女の子がここにいますよ~、だ。みー君にちょうどいい女の子がここにいますよ~だ」
ゆらゆらと小さな身体を揺らしながら。
恥ずかしそうに真っ赤に染まった顔を俯かせながら、はむはむもごもごしながら、でも本音を絞り出すようにそう言って……ふふっ。
「あのね、さくら。いつも言ってるけど、僕は年上が好きなだけで絶対年上じゃないといけないってことは無いんだよ。好きなのは年上だけど別にそこまでこだわってるわけじゃないんだよ。ていうか一番はずっとさくらだし。散々お姉さんとか言ってたけど、ずっと好きなのはさくらだし」
「……み、みー君」
「僕はずっとさくらの事が好きだよ。だからさくらが……」
「……な、なーんてね! ななななーんてねだよ、騙された? び、びっくりしたか、みー君! 驚いたかみー君!」
「……さくら?」
近づけた僕の顔を思いっきり払いのけ、さくらがぴょーんと大きく飛び上がる。
「じょ、冗談だよ、みー君! ほ、本気にしちゃった!? みー君引っかかるの何回目だよ~! もう、みー君ったらぁ! だ、ダメだよ、みー君!」
ぴょこぴょこ身体を弾ませながら、ものすごい早口でそう言う。
……全くもう。そろそろ大丈夫かと思ったのに。
「……だ、だってぇ……そ、その……ま、負け惜しみ~」
「そんなこと言って。本当は?」
「……まだ、覚悟できてない、やっぱりその……みー君の彼女はまだ、恥ずかしいし幸せで、その……ぼんしちゃったら困るから。ごめん、みー君、幸せすぎるの、私怖いから」
「ありがと、さくら。僕はいつまでも待ってるから安心して、大丈夫だから。桜以外は好きにならないし」
「あ、あう、ちょっ、みー君、それは
「ちょ、さくら危ない……大丈夫か、さくら?」
ブツブツ何かを呟きながら、早足で歩いていたさくらが何かにつまずいたように体勢を崩すので、こけないようにその細っこい身体を腕で支える。
軽いふわっとした骨ばった感覚が腕に伝って……さくらはもっとご飯食べた方が良い、ちょっと心配になる。
「あうっ、ご、ごめん……ありがと、みー君」
「ホント、さくらは昔から危なっかしいんだから……ほら、手出して。夜は危険だから手、つなぐよ」
「う、うん……ごめんね、いつもありがと」
申し訳なさそうに、少し恥ずかしそうに差し出された手をギュッと握る。
温かくて、柔らかい変わらないいつものさくらの手。
「えへへ、みー君……えへへ」
「寒いから早く行くよ、夜は危ないし……まぁ、こうやってさくらと手をつないでる時間も幸せだけど」
「……もう! そう言うとこ!」
「……痛い、蹴らないで。まったくさくらは……でもそういうところも好きだよ」
「も、もうわざとでしょ、みー君……私も、その、みー君……」
「無理しなくていいよ、さくら。そういうさくらも好きだから」
「……本当にバカ、ばかみー君……えへへ」
ギュッと手を握って幸せそうに笑うさくらを隣に感じながら、涼しくてキレイな夜空の下をゆっくり二人で歩いた。
☆
「……あれ、メッセージ来てる? あれ?」
アイスを買った後、さくらと別れて帰宅してシャワーを浴びて……そんないつも通りの生活を妨げる一通のメッセージ。
あのママ活アプリのメッセージに通知が来ていて……マジで?
と、取りあえず一度確認しないと……何々、紅さん26歳。職業はヒミツでメッセージ内容は……
【ペロロ可愛いですね、私もブルアカ大好きです! 私はむつきが大好きです、むちゅき可愛くて大好きです! それとブラストワンピースも大好きです! この世代だとエポカドーロとジェネラーレウーノが好きです! 牝馬はもちろんラッキーライラック!】
……なんだこのそそられるメッセージは!
なんか気になるな、ちょっと……いやいや、ダメだよ? 行かないって決めたし、その……ま、まあ返事だけしとくか!
【いいですね、僕も好きです! 他に好きな馬だとレイデオロとかアサヒとか! エールちゃんとかサウンズオブアースが好きです!】
ま、まあこれくらいなら……ってうわっ!? 返事はや!
【わかります! 私も好きです、大好きです! そう言えばそのお名前、ステゴ産駒のあの子ですよね? 私、ステゴ産駒も大好きなんです、オルフェとかインディチャンプとか! フィエールマンとかも大好きです!】
……なんだろう、めっちゃ好きだ! 僕もめっちゃ好きだ!
【あー、すごくわかります! 僕はフェスタとかウインブライトとかクレッシェンドラブとか……】
【私も好きです! 他にも他にも……】
【あー、良いですね! それなら僕は……】
【私もです、私も好きです! そうだ、他の話もしましょう! 私料理が好きで……】
【あ、僕も好きですよ! それじゃあ……】
☆
日曜日のお昼下がり、人混みの駅前。
「……べ、別にちょっと会うだけだし。キレイな人じゃなかったらすぐ帰るし、それに……すぐ帰るから! ママ活はしないから!」
そんな中でちょっとだけオシャレした僕はブツブツそう自己弁護を続ける。
べ、別に話が盛り上がって会いたい、とかじゃないし!
合う日付も決めて、さくらの誘いも断ってノリノリで準備とか……そ、そんな事してないし! 別にそんなんじゃないし! 本当にすぐ帰るつもりだから、ちょっと話したらすぐ帰るつもりだから! ママ活しないから!
「……やっぱり今帰ろかな」
さくらに申し訳ねえよ、なんか浮気してるみたいで……本当に大好きなのはさくらだけだよ、本当に。
ごめんさくら、僕気づいた。絶対浮気しない、今から大好きなさくらのところに
「あ、その帽子……君がオーシャンブルー君?」
そんな事を考えながらブツブツ俯いていると、僕の姿を見つけたのかどこか聞き覚えのある声が僕に向けられる。
「あ、え、僕がその……え?」
顔をあげるとそこにいたのは予想通りのキレイなお姉さん、でもその可愛いたれ目もキレイな黒髪も見覚えがあって……
「せ、先生!? な、何で福田先生がここに!?」
「岡島君! 岡島君じゃないか!」
え、何で!? なんで福田先生が……な、何で!?
★★★
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