プロローグ ママ活サイトに登録された

 ☆


「よっしゃ、拓海! これで完了、いい出会いあるといいな!」


「……勝手にスマホいじるなよ、光輝」

 お昼休みの中庭、トイレに行ってる僕のスマホを勝手にいじっていた友達の金原光輝かねはらこうきがにやにやと笑みを浮かべながらスマホの画面を見せてくる。


 高校に入ってからずっと友達の光輝だけど、たまにスマホにしょうもないイタズラするんだよな、こいつ。

 前はさくらに変なメッセージ送ったし、勝手にジュエル(120円分だけど)買ってたり……まあでもその辺は全部対策済みです。

「で、今度は一体何したの? 課金はできないし、SNS系統にもログインはできないようにしてるけど……あむっ、もぐもぐ」


「ん~、だから今回は何しようか迷った! という事で今回は趣向を変えてマッチングサイト! 正確にはママ活のサイトに拓海を登録しました!」


「ふぁふぁふぁふ?」

 そう元気よく右手でお箸をくるくる左手でスマホをびしっ!

 もうばっちいぞ、そんな事。でもママ活か。ママ活ね、ママ活……!?


「ふぇ、ふぁふぃふぁっふぇんふぉ!?」


「うわあ、ばっちいな、口から青のり飛んでる! しゃべるか食べるかどっちかにせい!」


「ふぁふぃ……んっ」

 元はといえば、そっちのせい! なんて言葉を飲み込んで、それと一緒に焼きそばパンもごっくん完了、形勢逆転僕のターン!


「……ふぅ。で、光輝、どう言う事? ママ活登録? なんで? どういう事? どうやった? そもそも高校生無理だろ? てか勝手にするな、そんな事!」


「おいおい一気に聞くな、聖徳太子じゃないんだから! 聞きたい質問一つにしてくれ!」


「いや、だからお前のせいで……ハァ。まずはなんでママ活のサイトに登録したか、それから聞かせて」


「うん、それはお前に彼女がいないから! そして年上好きだから! 23歳は超えてて欲しい! 5歳以上上がいい! って言ってたもんな! ……あれ、さくらちゃんって彼女だっけ?」


「さくらは幼馴染だからまだ彼女じゃないよ、大好きなだけ……そしてよく覚えてたな、そんな事」

 呆れたような僕の質問に自信満々にそう答える光輝に思わず感心してしまう。

 そんな言ったの高1のころで1年前くらいなんだけど、謎の記憶力、そして行動力。時と場所と行動が違えば賞賛してた。


「そうだろ、そうだろ、もっと褒めてくれ!」


「いや、最初から褒めてないんだって……まあ、これが僕のためってことは分かった。僕の事思ってしてくれたんだね」


「よせやい、照れるじゃねえか!」


「ほぼ全部皮肉だけどね……で、次。どうやって登録したの? まずぼく個人情報の管理はしっかりしたし、それにまだ16だし。登録できんでしょ」

 こう言うのって大体R18でしょ? 

 DMとかならともかく16で登録は無理でしょ。


「ああ、それは兄貴の個人情報使った」


「おい、それ犯罪、何やってんの。ダメだよ、それは流石に」

 良く悪びれもないそんな顔できるね、普通にアウトだよ、それ多分。

 人の個人情報使うのダメ、絶対!


「まあまあ、兄貴には後で謝るし、プロフは拓海の情報だし! ちゃんと競馬好きの動物好き、家事万能でお人良し! そう書いておいたぜ、プロフはペロロだし! あと、登録は俺のスマホ使ってちょちょいと転送!」


「そこじゃないし、ペロロはわんちゃんあるんだけど……ていうか転送したってやけに複雑な手順踏んでんな。勝手に個人情報使って……ホント、謎に行動力あるよな、光輝は」


「よせやい、照れるだろ!」


「だから褒めてないんだって……で、僕に何してほしいの? ママ活させる気かもしれないけど、そんな事したくないって……さくらに浮気とか絶対嫌だし」


「本当にさくらちゃんとは付き合ってないんだよな……? いや、でもきれいなお姉さんに出会えて、お金も貰えて一石二鳥的な!」


「的なじゃないよ、全然だよ。別にお金困ってないし、それに僕にはさくらがいるからね、大好きなさくらが」


「……ほんまに大好きだよな、さくらちゃんが。付き合えよ、マジで」


「まぁまぁ、それはね……ていうか、そっちの彼女はどうなの、ロリコン君?」


「はい、違いますー! 相手は中学生です、中学生と高校生の恋愛なんてよくあるのでロリコンじゃないです、健全な恋愛ですー! まだキスもしてないプラトニックな関係ですー!」


「なんでそんなテンション高いの、急に……ていうか光輝の彼女中1だからギリギリアウトだよ、小学生のころから付き合ってるんだし。やっぱりロリコンじゃん」


「そ、それは……うるさい、今純愛だからいいんだよ、あっちの親にも挨拶して許可貰ってるし! だから大丈夫、俺はロリコンじゃない! それにそれに、今の彼女ともSNS関係で知り合って付き合ったんだ! だからSNS有用、ママ活万歳!」

「小学生が出会い系みたいなのする時代なのか……ちょっと怖いな」


「出会い系違うよ、普通にゲームで知り合った! そんないかがわしいアプリ使っとらん!」


「ゲーム繋がりもなかなかだけどな……てかいかがわしいアプリって。その理論だとママ活サイトもいかがわしいから使いたくないんだけど、普通に」


「うぐっ、それは……それは違う、出会いだけが目的じゃないから! とにかく、拓海にはママ活行ってもらいたいの! ママ活行ってステキなお姉さんと欲しいの!」


「出会い目的に金稼ぎって余計たち悪いからね……あと、僕はさくらと結ばれたい」


「こいつうるさいな、ずっと……やだ、行け! 行きなさい、役目でしょ!」


「何が役目だ、変なもん押し付けやがって。いつでも僕が折れると思ったら大間違いだぞ、恋愛系はいやだって」


「拓海は意外と強情だけどな!」

 そんな事を言い合いながら、ママ活に行ってほしい光輝と行きたくない僕とで激しいにらみ合い。

 やだよ、ママ活なんてどんな女の人が来るかわかんないし……ていうか浮気したくないし。



「……わぁったよ、わかった。それなら条件緩和だ。放課後までにマッチングしたりメッセージ来て、面白そうだったら行く……これでどう?」

 少しの間睨み合った後、少しため息をついて光輝がそう言う。

 ……条件がよくわからん、全部取り消せ。


「俺の労力が無駄になるからヤダ。それに今のお前のプロフペロロだぜ? メッセージ送るもの好きなんていないと思うし……大分そっち有利じゃない?」


「いや、ペロロは危ないんだって……もういいや、面白かったらだからな?」


「よし、交渉成立! という事で頑張りや、拓海……いてっ」

 にへっと顔を歪ませた光輝が差し出してきた手をぺしっと弾く。

 なんで友好の握手しないかんのや、わしゃ被害者ぞ。


「ちえー、冷たいなぁ拓海は!」


「当然の結果。そもそもそっちが悪いんだからな、こんなことして」


「それは……ごめんだけど! でもさ、俺も心配してんだぜ、拓海が年上年上言うからさ……なんか原因あるの、それ?」


「そんな言ってないでしょ、それにいいじゃん、年上って」

 ロリコンの光輝にはわかんないかもだけど、絶対に年上の方が良いよ。

 なんか包容力とか安心感とか、優しくしてくれるとか、お料理とか、大人の余裕とか趣味とか……そう言うのいいじゃんね。


「なるほどね……それじゃあ福田先生とかどうなんだ?」


「なんでそこで先生が出てくるんだよ」

 呆れた声が口から洩れる。

 福田先生は僕とさくらの部活の顧問で家庭科の先生。

 年上でスタイル良くてきれいな先生……確かに条件は会うけども、いや、そもそも選択肢とかはないけど、さくらが好きだし。


「そうだろ? 家庭科の先生だし、優しいし、ナイスバディのきれいなお姉さんだし、お前と仲いいし、歳も26とかのはずだし……ピッタリじゃない? 仲いいの羨ましいけど、ピッタリだろ、正直?」


「ピッタリじゃない、じゃないよ。確かに先生はキレイだけど色々ダメでしょ、ね? 捕まってほしいの、僕に?」


「……生徒と教師の禁断の恋、って言うのよくない?」


「犯罪に片足突っ込んでるし、お互いに迷惑かかることの方が多いし。だからダメ、それに恋はしない、桜が一番だから。後先生は色々言動があれだから年上感ないし」


「普通に大恋愛って何だよ。それに俺たちが密かに憧れてる福田先生に……難儀で酷いやっちゃな、お前も」




「ところで登録名何にしたの?」


「ん? オーシャンブルー」


「だっさ、ステゴのワンツーかよ」


「そんなこと言うなよ、名前にもかかってるじゃんか!」


「海だけじゃん、それに僕泳げないし」



 ★★★

 一応リメイクとなります。

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