2-14 三者面談
「んんっ!」
「変な感じがしたらすぐに言ってね。俺もこのやり方でいいのか手探りでやってるから」
「も、問題ありませんわっ!」
「それならいいんだけど、何か今までとは違う感じはない?」
「そうですわね。腕と胸の辺りが少し暖かいような気がしますわ」
「痛いとか不快な感じはない?」
「初めは少し変な感じがしましたが今は落ち着くような感じがしますわ」
魔力の流れ自体が弱く、自分のだけでなく他人と魔力共有しようとしても魔力を感じられないセレンにどうやって魔法を教えようか悩んだ俺はとりあえず無理やりでも体に魔力を流して感覚を掴んでもらうことにした。
今はセレンの両手と俺の両手をそれぞれ繋いで二人で円を作るようにした状態で俺の右手から左手にセレンの体を通して魔力を流している。セレンの体に流れるものと変わらないくらい弱いものから始めて今は少し強めの魔力を流している。魔力の流れに血圧みたいなものがあるのかわからないが今まで少ししか魔力が通ってなかった場所にいきなり大量の魔力を流す影響がどうなるか不安であったが今のところは大丈夫そうだ。
「こういう方法じゃなくても魔力共有すると酔ったりする人もいるみたいだけどそういう気持ち悪さはない?」
「大丈夫ですわ」
しばらくそれを続けた後少し休憩して今度はさっきと逆向きに魔力を流してみる。
「これはどう?さっきと違うのはわかる?」
「わ、わかりますわ!先ほどは何も感じてないと思っていましたが先ほどと比べると右手の方が暖かく感じますわ」
「気持ち悪さとかはない?」
「はい。魔力なのかはわかりませんがギンジ先生から何かが伝わってきている気はいたします」
「うん。慣れるまではそれでいいと思う。しばらくこんな感じで魔力を体に流して流れを感じてみよう」
「はい!」
慣れて来たら次は手と足、足と足とかで魔力を流して全身の魔力の流れを感じてもらって・・・そんな感じでやっていくしかないな。急にセレンに変化が起きるかもしれないし。もちろん悪い変化もあるかもしれないから気を付けながらやろう。
「よし。これくらいでいいか」
「はい。次は何をしますの?」
「いや、今日はこれで終わりだよ」
「
「さっきも言ったけど俺もこんな方法を使ってどんな影響があるかわからないから、少し慎重にやりたいんだ」
「そうですか・・・それなら仕方ありませんわね」
声と表情は元気だが耳がぺたっとして尻尾もへにゃっとなる。がっかりしてるのが分かりやすすぎる。獣人たちは交渉事はどうしてるんだ?訓練とかするのかな。
「魔法の講習もそうだけど、今日は朝から森に出かけたりしたし自分で思ってるよりも疲れてるはずだから無理はしないでおこう」
「そんなことありませんわ!私はまだまだ」
「ギンジ様、お気遣いありがとうございます。お嬢様、ギンジ様の言う通りでございます。今は興奮して疲れが自覚できてないだけだと思います」
チルさんが俺の言いたいことを捕捉してくれる。できた付き人だ。
「チルまで!でも二人にそう言われては仕方ありませんわね。明日からも変わらぬ元気な姿をお見せして納得していただくしかございませんわね」
セレンも渋々と言った感じでなんとか納得してくれた。
「そんな方法で魔力を流せるのか?」
夕食を頂き風呂に入った後、カーティラさんに呼び出されたのでいつもの応接間で魔法講習の話をする。奥さんのサリーさんも同席している。
「そんな方法で本当に大丈夫なのかしら?」
「僕も初めてのことなのでわかりません。セレンさんには違和感があったら言ってもらうようにしてもらってはいるんですが」
「そうだな。とりあえずは注意しながら進めてもらうしかあるまい。何も試さないまま諦めてしまうのではギンジを連れてきた意味がないからな」
「それもそうですわね」
疑問は感じつつも二人ともわかってくれたようだ。
「ちなみにその方法を俺にすることはできるか?」
「カーティラさんにですか?可能だとは思うんですが・・・」
「なんだ?娘にはできて俺にはできないのか?」
「カーティラさんはセレンさんのように全く魔力が使えないわけじゃないですよね?」
「さすがに魔道具を使ったり自分の体を治癒するくらいはできるぞ」
「そうなると多分魔力酔いを起こしてしまう気がします。魔力共有よりももっと無理やり魔力を流しますので」
「まぁ怪我したり死んだりするわけじゃないんだろう?ものは試しだ」
そう言ってカーティラさんは俺に両手を差し出す。お手洗いは近くにあったかな。いや、廊下を行けばすぐ外に出れるから大丈夫か。
そんなことを考えながらカーティさんと両手を繋ぐ
「後で文句言わないで下さいよ」
そう言って俺はできるだけ弱く魔力を流す。
「男に二言は無い。おお、こんな感じか。確かにギンジの手から・・・うっ」
急に手を放したカーティラさんは口に手を当てて部屋から出ていった。
「ああ、だから言ったのに」
「わざわざやってもらったのにすいませんねバカな人で」
「いえ、サリーさんが謝ることでは」
「それにしてもこれと同じことをセレンにもしたのよね?あの子は魔力酔いはなかったのかしら?」
「そういった体調不良はなさそうでした。僕の予想もありますが魔力酔いは自分の魔力の流れと他人の魔力の流れの違いがあってこそだと思うので。セレンさんは自分の魔力の流れというのがしっかりしてなかったので僕の魔力を流してもそこまで違和感が無かったのかと思います」
「なるほどねぇ」
しばらくするとカーティラさんが部屋に戻ってきた。
「直接魔力を流すとこんなに気持ち悪いんだな。いい勉強になった」
「すいません。一応かなり弱くしたつもりなんですが」
「俺がやれと言ったんだ。気にするな。それよりこれをセレンにもやったんだな?」
「はい、セレンさんには徐々に強くしていって今よりももっと強く流していますが・・・大丈夫ですかね?」
「これは我慢できる種類の気持ち悪さじゃないからな。本人が大丈夫と言ってるなら大丈夫だろう」
「今後もセレンさんの体調には気を遣って続けていきます。一応この方法で全身に魔力の流れを感じれるようにしたいんですが良いですか?」
「ん?何か問題があるのか?」
いくら依頼主とはいえ父親の人に「娘さんの体にいっぱい触りますね!」と話すのは気が引ける。
「いえ、今の方法だと腕と胸の辺りくらいしか魔力が流れないので、手と足とか足と足とかに触って魔力を流さないといけないので」
「手と足くらいなら構わんだろう」
「セレンが良いというなら全身好きなだけ触ってもらっても構いませんよ」
「サリー!?まさがギンジもそのつもりなのか!?」
「いや、さすがに今のところは手足くらいで済ませるつもりですが」
「今のところは・・・?ということは後々はセレンのいろんなところに触るつもりなのか!?」
「あなた、いい加減にしなさい」
「そうは言ってもだな、嫁入り前の娘の体に」
「どちみち今のままでは嫁にいけませんよ」
ほんと理不尽だよな。セレンはあんなに可愛くて性格もいいのに。
「いっそこのままギンジさんに貰っていただきましょう。あの子もまんざらでもないでしょう」
「バカ!セレンにはまだ早い」
「あの子もあと1年もすれば大人ですよ。婚約者がいたっておかしくないんですから」
「それにギンジだってすでに相手がいるだろう」
シルフとはまだそういう仲ではないんですが。
「じゃあ第二夫人ですわね。ギンジさん、セレンをよろしくお願いしますね」
「おい!ダメだ!ギンジ!ダメだぞ!!」
見た目は虎の怖い獣人だけど娘大好きだし嫁さんにはやられっぱなしだし、普通のお父さんだな。
「僕は依頼された魔法教師のことを考えますので他のことはお二人で話し合ってもらって」
「そうれもそうね。これは大事なことだからセレンも入れてちゃんと話さないといけないことだわ」
あわあわする虎の横で奥さんが言いきった。今日のところはここまでかな。
「それではギンジさん、引き続きセレンのことよろしくお願いしますね」
「はい。精一杯頑張ります」
「先ほどは冗談のように言いましたが、魔法を教える上で必要だとギンジさんが思ったのならセレンの許可があれば何をしてもらってもかまいません。もちろん命の危険がない範囲でですが」
「わかりました」
横でお父さんが喚くが奥さんの言質は頂いたので最悪の場合はシルフのように全身マッサージすることも視野に入れておこう。
二人はまだ話がある様だったので先に部屋をでて今日のところは眠りにつくことにした。
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