1-16 今後の話
「兄ちゃんも昼飯行くか?」
街に戻るとザックさんに誘われた。診療所の女の子も訓練等で手伝ってもらった時によく奢っているらしい。おっさんが女の子とご飯・・・日本だとヤバイやつだぞそれ。せっかくなのでご一緒することに。
「ギンジです」
「レイアです」
街の食堂に来て席に着くと今更自己紹介をして女の子の名前を知る。
なんとトムさんの妹だった。
「私の父が元々衛兵として働いていて、母は今も診療所で働いています。私も母の紹介で診療所で働きだしたので」
二人とも両親の後を継ぐような形だったのか。治癒魔法のやり方も母に教わってうまく使えるようになったようだ。
「親と同じ仕事なら色々教われて良いですね」
「??親と同じ仕事に就くのは普通だと思いますが・・・」
「そういうものなんですか?」
「まぁ親と同じか、そうじゃない場合も親族とかのツテで働き口を見つけるのが普通だな。もちろん兄ちゃんみたいな戦士や行商とかを始めて自由に生きていくやつもいるし、体が丈夫でやる気があるなら衛兵は誰でも歓迎だがな」
俺の疑問にザックさんが答えてくれた。この世界では身内採用がメインで就職面接みたいなものはないようだ。
そうなると教会出身の子は・・・
「ギンジさんは衛兵にならないんですか?」
俺が考え込んでいるとレイアが質問してくる。
「今のところそのつもりはないですね」
「まぁ兄ちゃんは魔物狩りでも十分食っていけるからな」
「そうですか。残念です」
レイアから熱い視線が向けられている・・・気がする。レイアの両親は衛兵と診療所勤め、俺が衛兵にならないのは残念・・・そういうことなのか!?
俺も隅に置けないな。
そのあともいつでも訓練に顔出してくれとか怪我したら診療所に来てくださいねとか他愛ない会話をして食事を終えた。
可愛い女の子と食事というのはいいものだ。おっさんもいたけど。
「ギンジさん!!」
教会に戻ろうと思ったらシルフに呼び止められた。タイミングが良すぎてドキっとした。も、もちろんシルフとの食事も好きだよ。と心の中で言い訳する。
「訓練はもう終わったんですか?怪我はしてませんか?」
「大丈夫だよ。訓練もちょっと手合わせしただけだし怪我も無いよ」
「それは良かったです!今帰りですか?」
「ザックさんにお昼をごちそうになってね、今から帰ろうと思ってたところだよ」
「狩りに行こうとしてm
「行かないから」
俺の横でニコニコと笑顔のシルフと一緒に歩いて教会に戻った。
教会に戻った俺とシルフは今俺の借りてる部屋にいる。シルフと話がしたがったが共同スペースの部屋ではジャックとメグが勉強をしていたので部屋に来てもらった。椅子が1脚しかないのでシルフに座ってもらいおれはベッドに座る。
「それで話ってなんでしょうか?」
いきなり「話がしたい」と部屋に来てもらったので少し困ったようにシルフが聞く。
「こんなこと俺が聞くのも変かもしれないんだけど、シルフは教会を出たらどうするつもりなんだ?」
「・・・なぜですか?」
「今日ザックさんと話してた時に仕事の話になって、普通は親と同じ仕事に就いたり親族に紹介してもらったりするって聞いて。教会の子はどうするんだろうって思ったんだ」
「そうですか・・・」
シルフは俺の答えを聞いて少し間を置いたあと話し始めた。
「そうですね。正直言うと何の展望もありません」
「やはり仕事を見つけるのは難しいのか?」
「はい。ただもしかしたら何とかなるかもしれません」
「何か目星がついてるのか?」
「ギンジさんが行ったんじゃないですか。魔法を教えてくれるって。もちろんギンジさん次第ですが・・・期待してるんですよ」
そういうことか。
「魔法が使えると働き口は見つかりやすいのか」
「そうですね。魔法の種類にもよりますが」
「種類というと?」
「極端な例ですが珍しい魔法を使える人はそれを教える仕事をするだけでもお金が稼げますから」
直接使える人から教えてもらう必要があるので魔法の教師はかなり金になるようだ。
「じゃあしっかり教えてあげないとだね」
「申し訳ありません」
「謝らなくていいよ。俺がしたいからするんだから」
偶然かもしれないし何か理由があったのかもしれないけど、この世界に来て初めに出会って、素性の分からない俺を色々手助けしてくれた優しい女の子に俺ができることがあるなら何でもしてあげたい思う。
「もし、もし教会を出ても仕事が見つからなかったらどうなるの?」
「その時は今のように採集をしたり狩りをしたりして稼いで、その稼ぎで足りなければ最終的には奴隷になるかと思います。男の人なら衛兵とかになる人もいます。まぁ奴隷になってしまうのは教会出身かどうかは関係なく誰でも可能性がある話ですから」
やっぱりそうか。誰でもと言うが仕事が見つかりにくい、助けてくれる家族がいないというのは大きなハンデだ。
この世界では教会を出た子が奴隷になってしまうのは珍しいことではないんだろう。
それでも本人の性格や素質に関係なくチャンスが少ないのは・・・無念だ。
俺に何ができるかわかんないけど、もし俺に助けれるのなら
シルフにはもう少しだけ時間をくれ。と言って会話は終わった。
シルフと会話を終えた後、裏庭の井戸のところで魔法の検証をする。衛兵のお兄さんに新しく見せてもらった水の魔法を試してみる。共有した時の感覚を思いだしながら何度か試すと水が作れるようになった。
前に覚えた魔法は魔力自体を水に変換している感じだったが今回覚えた魔法は魔力を使って水を作りだす感覚だ。コツを掴めるまでは少しかかったが慣れるとこちらの方が少ない魔力で効率よく水が作れる。
水の形を操ったり色々できないか試しながら水を作りだす。水を出せるというのはそれだけで便利ではあるができれば魔物との戦闘に使えるようにしたい。水を刃のようにして物を切ったり銃弾のように飛ばして攻撃できないか試す。薄くしたり小さい弾の形状に変化はさせれたが物を切れるほどの圧力をかけたり何かに穴を空けれるほど強く飛ばしたりするのはできなかった。要訓練だな。
あとは他の魔法を覚える方法だ。魔力共有させてもらえればいいがそれが無理でも魔法を使ってるところを見せてもらえる相手が必要だ。
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