1-17 イドの日
この世界も7日で1週間のようだ。3週間21日を1節として、1節から17節まであって17節21日で年が終わる。年を越すと新年を祝ったり色んな祭事がお行われる1週間があって8日目が1節1日となり1年が始まる。1年364日だ。
というのを教わったが正直地球での知識が邪魔して頭に入ってこない。
とにかく今日はイドの日と呼ばれる安息日で地球で言うところの日曜日みたいなものだ。基本的に多くの人が仕事を休みほとんどの店が閉まる。役場も開いてはいるが職員の人もほとんどおらず普段の業務も基本的に翌日まわしだ。
というわけで今日は部屋で引きこもってゆっくり、することもなくシルフの採集の護衛についてきている。休まないのか聞いたがイドの日以外でも雨が降ったりすると採集に行けないので晴れているならできるだけ行きたいと言っていた。
今は森で採集をするシルフを眺めている。ちょこちょこっと歩いてはしゃがみ込んで草を抜き、また歩いては樹皮を剥がしている。珍しいものを見つけたのか時々走っていって草を見てニコニコしている。うん。可愛い。
「ギンジさんがいてくれるおかげで採集に集中できます!」
以前は周りを警戒しながら採集をしていたので今はかなり効率がよくなったそうだ。そんな風に笑顔を向けられると俺も良い仕事ができているようでうれしい。
ある程度採集が終わると小川の方に移動する。根ごと取った草などの根に付いた土を洗い流している。いつもより早く採集が一区切りしたので聞いてみると今日は魔道具屋が休みなので一度持ち帰らないといけないので鮮度が重要な素材は集めてないとのこと。シルフは賢いな。
シルフの採集が早めに終わったのでいつもより早い時間に街に戻る。「いつもより早いね」と門番をしていたトムさんに話しかけられる。衛兵の人は安息の日でも仕事をしている。ご苦労様です。
「そういえばレイアに聞いたんだが訓練では大活躍だったらしいね。俺も一緒に参加したかったよ。レイアもまた訓練に参加するならぜひ一緒に参加したいそうだ」
「く、訓練はしばらくは遠慮しておきます」
隣から鋭い視線を向けられ(てる気配がして)俺はささっと門をくぐり待ちに入る。少し進むとすぐにシルフが
「レイアって誰ですか?」
変だな。笑顔なのにすごいプレッシャーだ。訓練の時に参加していた診療所の子でトムさんの妹さんだよ。と説明する。納得したのかしてないのか「ふーん」とだけ返事をするとその話題はそこで終わった。
教会に戻ったが特にすることもないので部屋に水場で使っている桶を持ってきて水魔法の練習をする。色んな形状に変化させたり温度を変えれないか試す。〇〇の魔法、みたいな感じで認識されてるがどの魔法も魔力を使って何かを操ったり魔力自体を何かに変換したりするものだと思う。
なので魔力が上手く使えるようになれば教わらなくても魔法は習得できるはずだしオリジナルの魔法も使うことが可能だと思う。水の魔法だって温度を操って氷点下にしてしまえば氷の魔法だ。きっと魔法はそれくらい応用ができる自由なはず。
ただこの世界の人の魔法の習得方法が他人に教わってコピーする形で行われている。これは数学での'公式の丸暗記'みたいな感じなんじゃないかと思う。答えは出せるが途中式で何が行われているか理解していないので数値を変えたり別の式と組み合わせたりして新しい答えを導くことができないんじゃないか。
いや、ちゃんとそういうことに気づいている魔法使いも世界のどこかにいるんだろう。ただそういう知識は多くの人に共有はされていないみたいだ。
どうせ教えるなら応用も聞くようにしてあげたいがその場合は理科の授業もしないといけない。俺もなんとなくで理解していることを他人に教えるのは難しそうだ・・・
翌日もシルフの採集に付きそう。まずは魔道具屋に行って昨日採集した素材を売り、それから森に向かう。
いつも通り採集をし、遭遇した魔物を少し狩る。今日も平和だ。休み明けだからか俺たち以外にも採集に来てる人も普段より見かけた。
採集が終われば小川に寄って素材を洗い整理する。作業がひと段落して街に戻る前に
「シルフ、ちょっとだけ試していこうか」
そう言ってシルフに手を差し出す。
一瞬何を言われたか分かっていなかったが、俺の意図を察すると笑顔で手を取った。女の子と手をつなぐのは緊張しますね。はい。
触れ合っている部分からお互いに魔力を流す。
「俺の魔力の流れわかる?」
「はい。なんとなくですが」
流れが感じやすいように強く流したり弱く流したりして波をつくる。
「これはどう?」
「さっきよりはわかりやすいです」
「じゃあ今から水を出すから難しいことは考えないで魔力の流れだけを感じてみて」
繋いでいない方の手から水を出す。もちろん変換じゃなくて水生成の魔法だ。しばらく水を出した後、水を止める。
「こんな感じ。とりあえず今は使えるようになろうと思わなくていいから俺の魔力の流れを感じることだけ考えて。しばらくは毎日この魔力共有を続けよう」
「はい。ありがとうございます」
詳しい話は少し先延ばししてとりあえず魔力を感じてもらうところから始める。俺のように魔力の流れを目で見れない以上、体で感じてもらうしかない。時間はかかるかもしれないが期限があるわけでもないしシルフにはゆっくり頑張ってもらおう。
街に戻る帰り道、シルフのは足取りは軽いように見えた。
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