1-8 資料室
今日は朝から教会の4人は街の清掃に行くのでとりあえず役場の方を覗いてみる。
朝に来るのは初めてだが結構人が多い。戦士と思われる武器防具を装備したり大きめの背負い鞄等で荷物を持ってる人がいる。仕事の依頼とかを受注しているのか。その辺も聞いてみよう。
邪魔になるので隅っこで壁にもたれかかって人が減るのを待つ。少しずつ人が減っていって受付カウンターに空きができたのでそこに向かう。
「おはようございます。今日はどうされました?」
初日にプレート作ってくれたお姉さんだ。覚えていてくれたのかそれとも定型文の挨拶か。
「おはようございます。先日はお世話になりました。これを買い取ってもらおうと思って持って来たんですがお願いできますか?」
昨日持って帰った兎の毛皮を見せる。
「素材の買取ですね。かしこまりました」
兎の毛皮を確認してもらいプレートに入金してもらう。
「それと資料室の利用と可能であればいくつか聞きたいことがあったのですが、魔物や魔法に関して教えてもらうことは可能ですか?」
「丁寧なあいさつありがとうございます。これが仕事ですので問題ありませんよ。資料室の利用は問題ありません。ご案内しますね。質問の方はそちらで聞いてもらった方がいいかもしれません」
そう言ってカウンターから出て来て通路を歩いていくので付いていく。やはりピシッとしてキレイな姿勢だ。
通路の奥に行くと「こちらです」と言って扉を開けて中に進む。
壁に本棚が2つ並んでいて部屋には長テーブルと椅子が数脚、本棚と反対側の壁側に1セットの机と椅子がありそちらでは年配の男の人が座り本を読んでいる。口ひげを生やしていてダンディな雰囲気のおじさまだ。おじさま以外に人はいない。
資料室というから図書館とまではいかなくても学校の図書室くらいはあるかと思ったが思ったより狭いな。
「あちらにいるのが資料室の室長のマックさんです。何かわからないことがあったら聞いてみてください。マックさん、こちら最近この街にこられたギンジさんです」
お姉さんがそう言うとおじさまがこちらを一瞥して軽く会釈をした。俺もそれに応えて軽く頭を下げる。
紹介を終えるとお姉さんは部屋を出ていった。パタンと扉が閉じると同時にマックさんも本を閉じた。
「初めまして。何が知りたいのかな?」
マックさんは立ち上がるとそう尋ねてきた。声までダンディかよ。
「初めまして。今日は魔物のことと魔法のことを知りたいと思い伺いました。またこの街で戦士としてやっていくのに必要な知識等があれば教えてもらいたいです」
「魔物なら・・・このあたりの本がいいかな。こっちはたくさんの魔物について書かれているが目撃例の少ない物や伝説みたいな物も書かれているので読む分にはいいが戦士としての実戦にどれだけ役に立つかは怪しい。こちらの本は載っている魔物は少ないが挿絵がついているのでわかりやすいと思う」
さすが室長。本棚からすっと2冊取ると机の上に置く。'魔物集'と'まもののほん'・・・2冊目は絵本みたいなタイトルだな。
「魔法はどういったことが知りたいのかな?」
「魔法の使えるようになる教則本のようなものってありますか?」
「一応そういった本も存在しているしこの資料室にも何冊か置いてあるが・・・こればっかりは感覚で掴むものなので本を読んで魔法を習得するのは難しいとされているね。その中でも有名な魔法使いが書かれたものがこれだ」
'魔法使い入門'と表題のついた本を紹介してもらう。
「やはり誰かに教えてもらわないと魔法の習得は難しいですかね?」
「教わってない魔法を使えるようになる人もいるけど本を読んで使えるようになったという話は全然聞かないね」
「そうですか。でしたらどんな魔法があるか図鑑というか魔法一覧みたいなものってありますか?」
「それならこっちがいいかな」
そう言って取ってくれた本は'魔法の可能性'と書かれた本だ。
「とりあえず今出した4冊を読んでみて何かあったら声をかけてくれ。それと使えるかどうかに関わらずここで魔法を使おうとするのはやめてくれ。万が一魔法が発動して本が燃えたり濡れたりしたら大変だからね」
マックさんは元の席に戻って本を開いた。
いい感じに本を選んでもらえたのでとりあえず目を通す。まずは魔物からだな。
'魔物集'-文字だけだとわかりにくいな。ただ一部の魔物は人間から奪った武器を使うものや魔法を使うものもいるらしい。あと'石の巨兵'とか生き物っぽくないものも書いてある。こういう魔物がメジャーなのかわからないが対処法は考えておかないといけない。
'まもののほん'-こちらは挿絵がある。'ゴーレム'これはさっきの石の巨兵のことかな。'洞窟や岩肌の出ている山に生息'とある。これは生きているというのか?生態については書いてない。胴体部分を破壊すれば動かなくなるとあり魔晶も確認されているそうだ。4足歩行のゴーレムもいる。らしい。
実際に遭遇してみないと分からない部分が多すぎるが初見殺しみたいな状況になると終わりだ。事前に用意できる対策はできるだけしておきたい。
となるとやはり魔法だな。
'魔法使い入門'-これはあれだ、魔法の使い方というか魔法の教わり方が書いてある本だった。『魔法が使える人と体を接触させて魔力の流れを感じた状態で魔法を行使してもらいその魔法を使う感覚を体で覚える』そういったことが書いてあった。
やはり家庭教師みたいなのが必要なのか。
'魔法の可能性'-これは筆者が旅をしながら色んな魔法の存在を調べて書いた本みたいだ。様々な種類の魔法が記載されている。
火の魔法・水の魔法・刃の魔法・・・刃の魔法ってなんだ?『見えざる刃で切り裂く』とあるが、これはかまいたちとかなんじゃないか?そうなると風の魔法だと思うんだけど。他にも氷の魔法・土の魔法などなど。
筆者は色んな魔法使いを訪ねて旅をして魔法を見せてもらい可能であれば教わったそうだ。一通り目を通すと最後におもしろいことが書いてあった
『最後に、これは私の考えであるが魔法が引き起こす現象が同じでも魔法としては別物である可能性があると思う。例として火の魔法を上げるが火を出す魔法と燃やす魔法は別物であると考える。しかし火の魔法として習得した者は基本的に他の者に火の魔法を教わることがないので違う魔力の使い方で火を出す者の存在に気づかないのではないかと。火の魔法以外の魔法でも結果が同じであっても魔力の使われ方には色々な種類があるのではと考える』
刃の魔法でも思ったがこの世界では魔法がある代わりに物理や化学の研究が進んでない気がする。魔力を使って干渉はしているが魔法による現象が基本的には物理法則に乗っ取っているのであれば地球での知識がある俺は有利な気がする。
刃の魔法ひとつとっても風の魔法として意識することができる。
魔法なんて摩訶不思議な力をこれから習得していくことに不安があったが希望が見えてきた。
とりあえず読書はこれくらいにしておこう。
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