1-5 教会

 教会は思ったより小さいものだったがこの世界には宗教のようなものはなく、貧しいものに救いの手を。みたいな感じらしい。

 父なる神・母なる神が祀ってあり教会の管理をしている人は男の人ならブラザー、女の人ならシスターとなって教会で暮らす子供たちの家族となるそうだ。


 こちら教会にはシスターが1人いてシルフ、あと10歳くらいの男女の子供がいて4人で暮らしているそうだ。


「ようこそヘルムゲンの教会へ」


 そう挨拶してくれたシスターにシルフが話しかける。俺のことを説明してくれているようだ。少し痩せているがキレイなおばさまな雰囲気のシスターはシルフの話に相槌を打ったり驚いたりしたが話がひと段落するとこちらに目線と軽くお辞儀をされた。


「シルフが大変なところを助けていただいたそうで、大したおもてなしもできませんが、ぜひ泊まっていってください」


 部屋はあるそうなのでお言葉に甘える。ベッドと机があるだけど簡素な部屋だったが着の身着のままなので変な気を使わなくて逆に助かる。教会の庭にある井戸で水浴びだけさせていただき、教会の夕食にお邪魔した。


「にーちゃんゴブリン倒したの?すげー」

「シルフお姉ちゃん大丈夫だった?ケガしてない?」


 俺の紹介と今日の出来事を話すと子供たちがそれぞれ嬉しそうに、心配そうに話しかけてくる。

 二人はジャックとメグというらしい。ジャックは元気いっぱいという感じで「俺も戦士になるんだー」と話し、メグは「やっぱ街の外はこわいよぉ」と怯えている。

 夕食はパンに野菜のスープと質素ではあったがにぎやかな食卓で楽しく過ごせた。



「ギンジさんは戦士として狩りをされるんですか?」


 子供たちが寝かしつけたあとシルフに尋ねられた。


「他のあてもないからそうするつもり。とりあえず目先のお金を稼いでから考えていこうかなと」

「戦士は危険な職業なので心配ですがギンジさんは強いのでやっていけますよ!あまり無理はしてほしくありませんが」

「シルフはいつも植物採集を?」

「そうですね、10日に1度教会のお仕事として街の清掃がありますのでそれを手伝ってますがそれ以外は街の近くの草原や森の浅いところで採集してます」

「俺がシルフの護衛をするってのはどうかな?」


 翌日、俺はシルフと共に森に出かけていた。

 シルフは俺の提案にすぐ賛成とはいかなかったが俺も土地勘がないので森に行って迷ったら困る、他に頼る人脈もまだないからとお願いしまくって首を縦に振らせた。


「それにしてもそんな棒でよかったんですか?」

「長くて重すぎなければ何でもよかったんだけどね」

「魔法で攻撃できない人は剣や槍を使う人が多いんですが」


 なんでもいいからリーチの稼げる得物が欲しかったのとトドメや解体の為にナイフが欲しかったので何かないかと聞いたら教会の倉庫にあるものを使っていいとシスターからお許しが出た。

 ナイフを一振りとメインウェポンに2mくらいの鉄の棒を借りることにした。

 この鉄の棒は装飾が取れているが元々は教会での祭事等に使う錫杖のようなものだったらしい。

 それと街を出るときに雑貨屋で笛を買ってきた。ピー!っと音が鳴るだけのおもちゃだけどひもをつけてシルフの首に下げる。


「緊急用にな。念のため」

「笛吹いたら魔物にも気づかれるんじゃ・・・」

「こちらから発見した場合は必要ないが襲われたときとかにな、走って逃げながらでも大声は出せなくても笛吹くくらいはできるだろ」

「ほんとに緊急用ですね」


 と言った感じで初の護衛がはじまった。

 今日のミッションは無事帰宅することと魔物を狩って稼ぎを得ることだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る