1-4 役場とプレート

 扉をくぐり役場の中に入る。チリーンと扉についた鈴が鳴った。

 中には大きなカウンターがあり受付がいくつかあって中には職員さんが何人もいて、こちら側にはカウンターにいる人、壁際にある掲示板を見る人、並んでる椅子に座ってる人などそこそこの人達で賑わっていた。


「ギンジさん、奥の部屋で手続きをしてもらえるそうです」


 空いている受付に行ったシルフが戻ってきてそう言った。

 (多分)年下の女の子に何から何までお世話になっていて大丈夫だろうか・・・先導してくれる職員さんとシルフの後ろについてカウンター横の通路から奥に進む。


「そちらの椅子におかけください」


 部屋には机と両側に向かい合うように椅子があるだけの簡素な部屋だ。職員のお姉さんに言われてお姉さんと向かい合うように椅子に座る。シルフも俺の隣に座った。

 この世界にもメガネはあるんだなぁ。とお姉さんを見ながらしみじみ思う。仕事のできる女性という感じで背筋もピシっとしていてこちらもつられて姿勢を正してしまうくらいだ。


「プレートの作成希望と伺っております。作成されるのは初めて間違いないですか?」

「はい。よろしくお願いします」

「それではこちらのプレートに手を当てて魔力を流してください」


 机の上には何の模様も入っていないプレートが2枚ある。指示に従って手をかざして魔力を流す。プレートが淡く光りだした。


「ではそのままあなたの名前を言ってください」

「・・・ギンジ」


 自分の名前を口にするとプレートの光が強くなって模様が浮かび上がった。


「もういいですよ。これで終わりです。1枚はこちらで管理するのに使いますので。もう1枚はあなたのプレートとなります。常に首から下げて置くようにしてください」


 プレートを受け取り首から下げる。


「(ギンジさん、あの、魔晶も・・・)」


 忘れてた。ここで一緒に手続きしてもらえるんだろうか?まぁ聞いてみるか。

 俺はシルフに言われてポケットに入れていた魔晶を机の上に出す。


「これ森でゴブリンを倒してきたんですがどうすればいいですか?」

「魔物討伐ですね。ありがとうございます。ゴブリン3体ですと討伐報酬と合わせて150ベルでの買取となりますがよろしいですか?」


 ベル!お金の単位かな?わかんないけどまぁ使い道もないし。


「はい。よく分からないのでお任せします」

「では説明させていただきますね。基本的にどんな魔物でも討伐した際には国から討伐報酬がもらえます。金額は魔物の脅威度によって異なります。魔晶もしくは魔物の死体の全部もしくは一部を討伐証明として提出してもらう必要がございます。魔晶自体にも価値があり直接魔道具店などに売却することも可能ですがその場合は別に討伐証明をお持ちいただかないと討伐報酬がもらえません。また魔物によっては毛皮や牙・爪など死体の素材の方に価値があるものもございます。それも含めて何をどこに卸すかは戦士の方々の選択になります」

「ゴブリンは素材になるんですかね?」

「ゴブリンの体からは特に価値のある素材は取れません」


 よかった。もったいないことをしたかと思った。


「それと特別に討伐依頼が出ている魔物の場合は討伐証明の提示もしくは役場の職員による討伐確認でも討伐報酬をお渡しすることができます。その場合は魔晶や素材は役場に売却しなくても問題ありません。買取することは可能ですが」


 やばい魔物が出たら特別に依頼が出るのか。熊が出た時のマタギみたいな感じかな。


「相当希少な魔物でなければ魔晶も素材も役場で売却していただいても大きく損をすることはないと思います。いかがいたしますか?」

「丁寧な説明ありがとうございます。とりあえず今日のところはこのまま買取をおねがいします」

「かしこまりました。お金はプレートに入れておいていいですか?」

「プレートにお金を!?」

「ああ、それも説明していませんでしたね。プレートには役場に預けているお金の情報も入れることができ、商店での支払い等はプレートで直接行うことが可能です」


 電子マネー!!!魔法ってすげー!


「厳密には役場に預けているお金の情報とそこからいくら払う、そこにいくら入金する、といった情報のやりとりなんですがほとんどの人はプレートにお金が入っているような表現をなさいます」

「プレートで支払いできないお店とかもあるんですか?」

「商売を行ってる人なら基本的に支払い用のボックスを持っておりますので問題はないと思いますが個人間でのお金のやりとりや一部の露店などでは硬貨での支払いしかできない場合がございます」

「わかりました。それではプレートに入れておいてください」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 そういって部屋の外に出るとすぐに戻ってきた。門番の詰め所で見たような模様の入った立方体を持ってきた。


「これは街には言った時に触ったやつ・・・?」

「犯罪歴を調べるものですね。あれもボックスです。これは先ほどお伝えしたお金のやりとりをするボックスでこちらからプレートに入金いたします。プレートを箱の上に置いてください」


 プレートを置くとボックスの模様が光る。あ!?頭に情報が直接伝わってくる。150ベルもらえるというのが感覚でわかる。魔法すげー!


「金額が伝わっていますか?」

「はい。すごいですねこれ!」

「プレートで支払う時、売却してお金を受け取る時はこのようなやりとりとなります。ボックス側が先に情報を提示しますので了承ならプレートに魔力を流してください」

「ん、これで大丈夫ですか?」


 魔力を流すとプレートが光りボックスの光が消える。


「はい、手続き完了です。慣れれば魔力を流すというより返事をするようにやりとりできると思います」

「わかりました。色々とありがとうございました」


 丁寧に教えてくれたお姉さんに感謝。深くお辞儀をする。


「いえ、これが仕事ですから。魔物討伐は危険ですので今後も戦士として活動されるのでしたら気を付けて頑張ってください」


 無事手続きを終えて役場を出る。まだまだ不安なことはあるがとりあえず身分証明を手に入れて一安心だ。あとは宿と仕事か。


「それでは教会に行きましょうか」

「シルフはそこに住んでるんだっけ?」

「そうですね。私は孤児ですので15歳になるまでは教会で暮らせます」


 話を聞くとシルフは現在13歳だそうだ。

 この国では15歳で成人として扱われ納税の義務が生まれるため働いていかないといけないそうだ。

 シルフは孤児のため教会で暮らしているがこれも成人するまでに出ていかないといけないという。


「俺は今15歳なんだけど教会に行って大丈夫なの?」

「命の恩人ですから!!シスターに頼んでみます!!」


 物価はわからないが討伐報酬でお金ももらったし宿に泊まってもいいんだけど・・・

 まだ色々と聞きたいこともあるし今日はお世話になろう。


「じゃあ今日のところはお世話になろうかな」

「はい!じゃあ教会に行きましょう」


 そうして教会に向かうシルフについていくのだった。

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