1-3 門番の詰め所
森を抜けてしばらく歩くと街が見えてきた。
平原の途中からは人の往来があるのか道ができていて街の入口に向かっている。
入口の門の前には(多分)見張りの人が槍を持って立っている。
アラサーくらいだろうか。おじさんと呼ぶかお兄さんと呼ぶか難しい感じだ。
「シルフおかえり。そちらの人は?」
「トムさん、お疲れさまです。実は森でゴブリンに襲われまし
「ゴブリン!?それは何体くらいいたんだ!?ケガは無かったのか?」
「はい、大丈夫です。大したケガは無かったので自分で治癒しました。ゴブリンは3体いたんですがこちらの方が助けてくれました」
「3体もか!!無事で何よりだ。シルフを助けてくれてありがとう。君は・・・ノールランドには初めて来たのかい?」
トムと呼ばれたお兄さんが俺の首元を確認しつつ言った。
「そうみたいなんです。プレートを持っていないみたいで。登録していただこうと思うんですが直接役場に行けばいいんでしょうか?」
「そうだな。門番の詰め所で簡単な検査だけ受けてもらって問題がなければ役場の方で手続きしてくれ」
「わかりました。それではギンジさん、いきましょう」
一言も話す間もなく話が進んでいく。シルフが歩く後ろについていきながら門をくぐる時にトムさんに会釈をする。
門をくぐると外壁沿いに平屋の建物があって入口は扉が無く開けっ放しになっている。
「ここが門番さんの詰め所ですね。すいませーん!!」
中はカウンターのようになっていてシルフが声をかけると奥から屈強そうなおっさんが出てきた。
「おう、教会のとこの嬢ちゃんだな。どうした?」
「お疲れさまです。こちらの方が街の外から来られて、プレートをお持ちじゃなかったので今から役場に行くんですが先に検査を受けろとトムさんに言われたので」
「未登録とは珍しいな。嬢ちゃんはなんでこの兄ちゃんの案内を?」
「森でゴブリンに襲われて、偶然通りかかったこちらの方に助けてもらいました」
「この兄ちゃんがゴブリンを!?見た感じ得物は持ってなさそうだが」
「はい。急にゴブリンが飛んで行ったかと思ったら動かなくなっていて。トドメは私のナイフを使ってもらって」
「兄ちゃん素手でゴブリン倒したのか!?やるじゃねぇか。魔晶は取ってきたのか?」
「はい。ギンジさん魔晶を出してもらえますか?」
また話す間もなく話が進む・・・
言われた通りポケットから魔晶を取りだしてカウンターに置く。
「3体もいたのか?それを素手で倒しちまうなんて大したもんだ」
3個の魔晶を見て驚いたかと思うとうんうんとうなづいているおっさん。
「嬢ちゃんを助けてもらったんだし悪いヤツだとは思わねぇが手続きなんで面倒だがこれに触って魔力を流してくれ」
そう言っておっさんはカウンターの上に正方形の鉄の箱を出す。
でかいサイコロみたいだけどそれぞれの面にプレートにあるような模様が入っている。
言われた通り箱に触れて魔力を流すと箱の模様が白く光った。
「問題なさそうだな。じゃあ役場に行ってもらって大丈夫だ。魔晶の方も役場で討伐報告をすれば報酬が出るはずだ」
そう言っておっさんは右手を差し出した。
握手・・・だと思う。俺も右手を出して手を握る。
「ヘルムゲンへようこそ」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って握手をかわすと詰め所をあとにしてシルフに役場へ案内してもらう。
「先ほどの方は街を守っている衛兵さんのまとめ役のザックさんです。街まで魔物が来ることはあまりありませんが万が一の時は街を守ってくれる頼りになる方たちです」
「体も大きいし強そうだったね」
「そうなんです!私は戦っているところは見たことがありませんがとても強いらしいですよ!」
そりゃあのガタイなら強いだろう。かなり鍛えてそうだったし。
でも魔物と闘うなら体より魔法の強さの方が重要そうな気もする。あのおっさんも魔法で戦うのだろうか。
「そういえばさっきの詰め所でやった検査はなんだったの?箱みたいなやつ」
「あれはですね、過去に犯罪を犯した人の魔法紋が記録されていて登録されてる人の魔法紋に反応して赤く光るんです」
前科チェッカーだったのか。白はセーフと。
街を歩いていて分かるのは地球に比べて文化レベルはかなり古そうだ。パッと見ではあるけども電気はなさそうだし高い建物もない。建物はレンガのような石造りかシンプルな木造で作られているように見える。
建築詳しくないけど。
「この街は栄えてる方なの?」
「他の街に行ったことがないので分からないですが王都や他の大きな都市に比べると見劣りしてしまうようですね。大森林が近いので狩りをされている戦士の方は良く来られますが」
「さっきの森?」
「そうです。あの森はかなり大きくて深いところに行くと色んな魔物がいたり貴重な植物や鉱物が取れることもあるのでそれ目当てで来られる方も多いです」
「魔物討伐が仕事ってこと?」
「はい。魔物の討伐で生計を立てている人ですね。戦士と呼ばれています」
「戦士ってことは魔法じゃなくて剣とか槍とかで戦うの?」
「そういった武器も使われますが魔物討伐される方は魔法を使う方も戦士ですよ。攻撃魔法が使えない方も治癒や身体強化の魔法は使われますし」
「じゃあ魔法使いって職業は無いの?」
「魔法使いと呼ばれているのは魔道具の製作をしたり魔法を教えたりする人達がそう呼ばれていますね、あ!ここがヘルムゲンの役場です」
たどり着いた建物は2階建ての大きな建物で入口も両開きの大きな扉がど真ん中についていた。
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