第一章 ヘルムゲンの街
1-1 見知らぬ森の中
(なんだったんだ今のは・・・っていうかここどこ?テレポート?)
そんなことを考える。
眩しいほどの光は収まったけど地面によくわからない図形がほんのり光っている。
(魔法陣みたいな?ファンタジーすぎるだろ・・・あ、消えた)
うっすらと光を放っていた足元の図形は光が無くなると跡形もなく消え去って足元には草が生えている地面があるだけだった。
周りを見渡すと何mもあるような木が生い茂っていて森の中にいることを実感する。
(完全に森の中だな。でも地面は平らだし山の中とかではなさそう。あー、帰る準備の途中だったからなんも持ってねぇ。)
ふとポケットのスマホを取ろうとしてなにも持ってないことに気づく。
マッサージの時は楽さ重視だったので服は甚兵衛だしそれに合うように足元は右近下駄だ。
(下駄で森を歩くのは嫌だなぁ)
と思うが裸足はもっと嫌だしこのままじっとしていても元の部屋に戻れるか分からない。
(とりあえず森から出て、人がいるとこ探さないとなぁ。道路まで出たらヒッチハイクとかするのか。はぁ・・・というかここはどこなんだマジで。富士の樹海とか?)
どの方向に歩き出すか考えながら周りを見渡す。
「キャアアアアアアアア!!」
叫び声が聞こえた。多分部屋で聞こえた声と同じものだ。
というか声に釣られて部屋を出たことを今まで失念していた。
(熊か何かに襲われてるのか?襲ってるのが人ならまだいいんだけど)
そう考えながら声がした方へ走りだす。木が邪魔で'直接は見えない'がそちらに人がいるのが'見えた'。
(襲っているのは・・・子供か?やけに小さいが・・・2、いや3人がかりか)
近づいてやっと直接見えるところに出るとそこには座り込んでナイフを振り回す女の子とそれを囲んでいるナニかが見える。
(なんだアレ!?緑色の・・・子供?体のつくりは人間ぽいけど)
150cmくらいの緑色の肌をしたナニかは20cmくらいの爪がついた腕を振って女の子に襲い掛かっている。
女の子はナイフを必死で振り回しながら後ずさりをしている。
(よくわかんないけど見た目キモいし女の子襲ってるから悪モノだろう)
そう自分に言い聞かせてバケモノに向かって走りだす。
向こうがこちらに気づく前に近づいて3人(3体?)のバケモノを蹴りで吹っ飛ばす。
「Gya!??」
言葉とも言えない同じような声を上げながらバケモノは2体は木に打ち付けられ1体は地面に転がる。
'流れ'を断つように打撃を入れたのですぐには立ち上がらないだろう。
「ふぅ。大丈夫?ケガは・・・ちょっとしてるね」
女の子の方を向きながら声をかける。手足にいくつか切り傷がついている。
というか服が1枚布で作ったようなシャツとひざ丈くらいのズボンで手も足も出ているので森に入るのにその服はどうだろうかと思う。
(髪の毛真っ白・・・というか銀っぽいな。ブロンドって言うんだっけ?日本じゃないのかな?なんでこんな森の中にいるんだろう。そういえばこの子も俺みたいにいきなりここに飛ばされた可能性もあるか)
女の子を見て色々と考えながら自分の森に適してない甚兵衛姿を思いだす。
しかし女の子はいまだにナイフを構えたまま呆然としていて返事がない。
「あの・・・言葉通じてますか?」
「あっ!すいません大丈夫です。危ないところをありがとうございます」
女の子はそう言うと地面に座ったままぺこりとお辞儀をした。良く見るとめちゃくちゃカワイイ。
日本語ペラペラだけど髪も顔も外国人みたいだし、日本育ちなのかな?歳は・・・同じくらいかな?外国人の年齢はわかりにくよね。
「いえいえ、大したことありませんよ。それよりキズは大丈夫ですか?」
「大したことありますよ!!ゴブリン3体を素手で一瞬に倒しちゃうなんて・・・あ、これくらいのキズなら大丈夫です」
そう言うと彼女は足のキズに手をあて
”癒しよ”
そう唱えると手とキズの周りがうっすらと光ってキズのないキレイな足になった。
(え!?キズ治した?どうやって?っていうかゴブリンって何?あの想像上のバケモノみたいなあのゴブリン?)
彼女の行動も話す内容も全く理解できない。
驚いているうちに彼女は治療を終えたようで手足にキズはなくキレイになっていた。
立ち上がって地面と接していたお尻をパタパタとはたいている。背は140~150cmくらいだろうか。
「あの~、今のはどうやってキズを治したんですか?」
考えても分からなさそうだったので直接聞いてみた。
「治癒魔法ですか?魔法はあまり得意じゃないんですけど自分の体なら今くらいのキズなら治せます!」
少女は少し得意げな顔をする。
(ままままま魔法!?魔法ってなに?しかも隠す感じでもないし。魔法が当たり前の地域なの?というかここは地球なのか?)
ゴブリンに魔法と現実離れした目の前の事実に頭がグルグルと回転する。
彼女の顔を見ると得意げな顔とは打って変わって今度は少し困ったような顔でこちらを見つめている。
表情がころころ変わって可愛いなこの子。
「もしかして、遠くから来られた方でしょうか?」
「わかりますか?実はここがどこかもよく分かっていなくて・・・?」
魔法知らなかったのはまずかったのかな?理由はわからいけどよそ者なのはすぐ分かってしまうらしい。
よそ者であることを知られてしまうのが良いのか悪いのかわからないけどさっきはこの少女の危険を救ったんだ。ひどい扱いはされないと願おう。
「ここはノールランド国です。この森を抜けたところにあるのが私が住んでいるヘルムゲンの街ですね」
彼女の口から聞いたこともない国の名前を聞かされる。
(やっぱりここは地球じゃないみたいだ)
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