【1万PV突破】気の流れが見える!?元格闘家のマッサージ師が異世界で不遇な少女たちを救う旅に出る話

春乃雪

プロローグ

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「じゃあこれで終わりです。お疲れさまでした」


 とあるマンションの一室。

 俺は施術台の上にうつ伏せで寝そべった水着姿の女性に声をかけた。

 彼女はゆっくり起き上がり手を上にあげながらぐっと背筋を伸ばす。


「うーん、やっぱり銀ちゃんのマッサージが一番ね。若い子にしてもらってるからかしら?」

「何を言ってるんですか。坂井さんもお若いじゃないですか」


 彼女、坂井さんは何度かマッサージをさせていただいてるお客さまで銀座?のクラブ?でママをされているらしい。

 見た目的には30手前くらいに見えるが正確な年齢は知らない。


「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。お店に来てくれたらいっぱいサービスするわよ?」

「・・・僕が坂井さんのお店に行けるのは5年後くらいですよ」


 そう、俺はまだ15歳。来月からやっと高校生だ。

 中学卒業したばかりの俺がこんなマッサージ屋をやっているのには家庭の事情が絡んでいるのだが・・・


「じゃあ銀ちゃんが成人するまでお店続けなきゃだね」

「とても人気のお店だと聞いてますよ。父がよくお世話になってるみたいで」

「お世話になってるのはこっちよ。イチローちゃんにもよろしく言っておいてね。あとお兄さんもぜひ遊びに来てって」

「兄は子供が生まれたばかりなので今はあまり飲みに行ったりできなさそうですが・・・父も僕より坂井さんの方が先に会うんじゃないですかね。あまり家に帰ってこないので」

「ふふっ、そうかも。じゃあシャワー借りるわね」

「はい。ごゆっくりどうぞ」


 そんなやりとりをして坂井さんはシャワールームへと消えた。


 俺の名前は宮本銀二みやもとぎんじ、15歳。今月中学を卒業し来月から高校生になる。

 宮本家の次男で父の名前は一郎、兄の名前は金太郎。

 父は警察の官僚で兄は空手家だ。

 宮本家は代々格闘家の家系で父も剣道空手柔道となんでもござれだ。

 特に剣道の腕前はピカイチで20代の頃は全国大会でも優勝経験がある。

 俺も一応格闘技をやっていた。がやめた。

 兄に子供が生まれたので跡取りのスペアとしての人生からは開放されたのだ。

 種目にもよるが筋肉隆々の男同士で触れ合って何が楽しいんだ。

 そんなものに人生をかけるのはまっぴらごめんだ。

 どうせならきれいな女性と触れ合う方がいい。

 というわけで父や兄のコネや人脈を使いマッサージ屋みたいなことをして小遣い稼ぎをしている。

 格闘家の男の人も来るが坂井さんのようなきれいなお姉さんも来るので格闘技をやるよりは楽しくやっている。


「はー、さっぱりした。銀ちゃんのマッサージの後は肌のハリが違うのよね。やっぱり若さを吸収してるんじゃないかしら」


 シャワーを浴び、戻ってきた坂井さんが小物を鞄に仕舞いながら帰る支度をする。


「ありがとうございます。でも坂井さんはいつもおキレイですよ」

「もう!また近いうちに来るからよろしくね」

「はい、お待ちしております」


 そういって坂井さんは部屋から出ていった。

 部屋に一人になった俺はタオル類を洗濯機に放り込んで施術台を清掃する。

 今日来るお客様は坂井さんが最後なので掃除をしたら仕事は終わりだ。


 宮本家の人間は気の流れが見える。

 人体模型に張り巡らされた血管みたいに人の体に流れる気の流れが見える。

 気の流れは生命力に直接影響があるのでこの流れを良くしてやると体が活性化して調子がよくなるのだ。

 逆に流れを阻害してやると調子が悪くなったり力が出なくなったりする。

 体を動かす時や力を籠めるときには気の流れが見えるし1対1の戦いなら相手の攻撃をすべて躱すことも難しくない。

 宮本家が格闘家の家系として大成しているのもこのおかげで、俺がマッサージ師としてやっていれてるのもこのおかげだ。


 ちなみに動物にも気の流れはあるようでそれも見ることができる。

 それが何の役に立つかと言われるとまぁ今のところ無いわけだが。


 明日は予約も入っていないしスマホに連絡も来ていない。

 何をするかなーと考えながら洗濯機の前で乾燥が終わるのを待つ。

 格闘技を辞めたが適度に体を鍛えるのは続けているのでジムか兄の道場にでも行って汗を流そうかと考える。


(でも最近は道場に行ってなかったし組手とかさせられたら面倒だな。やはりジムにしておくか)


 洗濯が終わったタオル類を畳み棚に仕舞う。


『キャアアアアアアアアアアア!!!』


 部屋の外から叫び声が聞こえた気がする。

 声がした方に目を向けるが'部屋の外'にも誰もいない。

 ただ気になるので玄関まで走ってドアを開ける。


「うわっ!!?」


 その瞬間目が開けられないほどの光が俺を襲って思わず顔をそむけて目をつぶる。


「なんだよ今の・・・は!?」


 目を開けると見知ったマンションの廊下ではなく、見たこともない森の中に立っていた。

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