旅の準備②


 旅の道具を一通り揃えたので次は衣服売り場に移動した。


「俺の分はこれでいいな。シロは決まったか?」


「もう少し待って!こっちかな?いや、こっちの方が……」


 シロは次から次に服を手に取っては、悩み、取っては悩みを繰り返す。


「ゆっくりでいいぞ。すみません、俺の分だけ先にお願いします」


「はい。では先程の道具とともに馬車に積んでおきますね」


 俺は従業員の女の子に荷物を渡す。


「ショウくん。もし良ければ試着などをしてもらっても構わないよ。実際に着てみた方が決めやすいだろう?」


「それは、そうなんですけど……」


「どうかしたのかい?」


「実はシロ、こっちの子は訳アリで」


「……もしかしてだけどその子、特異体質の子かい?」


「知ってたんですか?」


「あぁ、特異体質の子が居ることは君から買わせてもらった子から聞いていたよ。一緒に旅することにしたんだね」


「まぁ成り行きで。それで試着とかは……」


「そういうことなら気にしなくていいよ。特別に部屋と、君から買った奴隷の子なら偏見を持たずに接してくれるだろう」


「本当に何から何までありがとうございます。という訳だシロ、試着してこい」


「はーい。じゃあ残りの買い物よろしくね!」


 シロは従業員の子と大量の服を持って別室へ、俺とイースさんは別の売り場に移動した。




 ____________


「なるほど。そういう経緯が」


「はい。そういう経緯です」


 俺は一通りの買い物を終え、今は別室でイースさんと会話をしている。


「そっちはどうですか?奴隷の子たちの様子は」


「みんないい子たちだよ。頑張って働いてくれている」


 イースさんに買われた奴隷の子は全員イースさんの店で働いている。そしてイースさんは食費や生活費を引いた分を給料として出しており、その金で奴隷は自分自身を買うことが出来る。つまり働けば奴隷という身分から自由になれる。


「それは良かったです」


「相変わらず君はあの親から生まれたとは思えないほど優しい子だな。そんな君としばらく会えなくなってしまうね」


「そうですね。でもそれが俺の夢でしたから。それに一通り世界を旅したら必ずここに帰ってきますよ」


「そうか、それは帰ってきた時が楽しみだな。あぁそうだ、旅が終わったら僕の店で働くのどうだい?君ならいつでも歓迎するよ」


「あはは。ありがとうございます。返事は旅が終わった後でさせてもらいますね」


 そうしてのんびりと話していると、ドアがノックされる。


「失礼します。シロ様のお着替えが終わりました」


 そうして従業員の子とシロが部屋に入ってくる。


「どう、似合う?」


 シロは俺の扉の前でくるりと一回転する。

 シロの恰好は白色を基調とした動きやすそうな服に、顔と髪を隠すための灰色のフード。旅をする格好としては及第点だ。


「あぁいいと思うぞ」


「ふふふ、そうでしょう。そうでしょう!」


 シロ嬉しそうにその場でクルクルと回る。よっぽど新しい服が気に入ったんだろう。


「他にも似たような服を馬車に積んでおきました。それとこちらがその代金です」


 従業員からたくさんの数字が並んだ紙を受け取る。……まぁ服なんだから必要経費だ、うん。大丈夫、必要経費。


「さて、じゃあそれと合わせて会計を済まそうか。……はいこれが代金だ」


「っ、マジですか」


 出された紙を見て、俺は言葉を失う。

 この値段、安すぎる。


「本当にいいんですか?」


「もちろん。これは君の未来への投資とでも思ってくれ」


「あ、ありがとうございます!」


 俺は代金を支払い、旅に必要な物を買い終えた。










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