旅の準備
俺とシロは朝食を食べ終え、近くにある町ファルストに着いた。
ファルストかなりの大都市でこの町に行けば必要な物は何でも揃えることが出来る。
「ここがファルストすごく大きい町ね」
フードを被ったシロが俺の隣に座り町を眺める。
これまでは馬車の中で外の音を聞くくらいしか出来なかったから景色が新鮮に感じるんだろう。
「それで今からお店に行くんだよね。どんなお店なの?」
「この町の中でもかなり大きい店だ。日用品から専門品まで幅広く扱ってる」
「へぇ~。そんなお店で買い物なんてお金かかるんじゃない?」
「かかるだろうな。けど俺はこの時のために金を貯めてきたんだ」
奴隷の売り上げ金は親がほとんど使ったが、俺が奴隷の世話をしたことで価値が上がった分のいくらかはこっそりとくすねて貯めていた。
「だから金の心配はいらない。……見えたな、あれがその店だ」
「わぁ、本当に大きいじゃん」
俺たちの目のには他の建物よりも明らかに違う、綺麗で巨大な建物が映った。
____________
「いらっしゃいませ!イース商会へようこそ」
店に入ると綺麗な女の子が元気よく挨拶をして近づいてくる。歳は俺より少し下でシロと同じくらいだろう。
「本日はどのような物をお買い求めですか?」
「旅の道具を、それと衣服と食料も」
「承知いたしました。ではこちらへどうぞ」
女の子に案内されて、旅の道具が置いてある売り場に向かう。
「どうぞごゆっくりとお選びください」
女の子はそう言って道具売り場を後にする。
「本当に広いわね。それに案内役までいるなんて、今どきはこんな風なの?」
「いや、こんなに丁寧な接客はこの店くらいだ。それにこれほどの品揃えもな」
俺とシロは一フロア分を占める売り場を見て回り、買うものを決める。
そうしていると、先ほどの女の子と、さらに五十代ほどの男性が近づいてくる。
「久しぶりだね。ショウくん」
「お久しぶりですイースさん。お元気そうでなによりです」
「ショウ、知り合いなの?」
「あぁ、この人はカイネ=イースさん。このイース商会の会長さんだよ」
イースさんは一代で国で一、二を争うほどの商会を立ち上げた凄腕の経営者だ。
そして俺と、正確に言えば俺の両親と知り合いで奴隷のよくしてくれたお得意さんでもある。
「彼女から君が来たと聞いた時はついにこの時が来たかと思ったよ」
イースさんには昔から俺が奴隷商を止めて旅をしたいということは話していた。
「本当はもう少し後になるはずだったんですけどね」
「あぁ、聞いたよ。ご両親が亡くなったんだよね。こういうのもなんだが、彼らは自業自得だと思う。彼らはそれほどまでに人から恨みを買っていたからね」
「ですね。俺もそう思いますよ。でも俺としてはラッキーだったと思います。こういうのもなんですけどね」
俺とイースさんは互いに苦笑をする。
「さて、何かいい物はあったかな?昔から世話になったよしみだ、サービスさせてもらうよ」
「いいんですか?それじゃあ遠慮なく……」
俺は目星をつけていた商品を次々と伝えた。
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