第54話 「つまんねぇ」
「よっし!自己ベスト更新! 見ろよカズ! また速くなったぞ!」
「おー!やっぱりすげぇなぁヨータは!」
「だろー? これなら全国出場出来るかもな!」
「全国優勝の間違いだろー?」
そんな軽口を言い合いながらベンチにタオルを取りに行くと、俺のタオルがどこにも無かった。
「あれ…?」
「どうしたー?」
「いや、俺のタオルが何処にもなくてさ」
「タオルー? 本当だ、どこいったんだろうな…?」
そんな話をしていると、後ろから「ヨー君…!ヨー君…!」と声をかけられた。
「風香?どうした?」
「大変なの…!すぐに来て! カズ君も!」
俺とカズは目を見合わせ、とりあえず風香についていった。
忍足で陸上部の部室の裏に行くと、そこには衝撃の光景が広がっていた。
部室の裏では、3年の先輩達が俺のタオルを何度も踏みつけていたのだ。
俺はその光景を見てただただ固まっていた。
「ち、ちょっと先輩!? 何やってんすか!?」
固まっている俺とは違い、和馬は先輩の元へ走っていった。
先輩達は俺達に気づくと、舌打ちをして帰っていった。
和馬は踏まれて泥まみれになったタオルを手に取り、怒りに顔を歪めた。
「許せねぇ…! あいつら、ヨータに勝てないからって嫌がらせしてきやがったんだ…!!」
「こんなの酷いよ…! 私顧問の先生に…」
俺は、顧問に言いに行こうとする風香の腕を掴んだ。
「…ヨー君?」
「言わなくていい」
「はぁ!? お前何考えてんだ! これ立派なイジメだぞ!?」
「だからだよ。 陸上部でイジメが発覚したら、大会に出場出来なくなるかもしれない。
全国大会に出場するのは俺と和馬の夢だろ? だからこのくらいの事は我慢してやるよ!」
俺はそう言って2人に笑顔を向ける。
和馬はギュッとタオルを握ると、俺の肩を掴む。
「もし…本当に辛くなったら絶対頼れよ!?」
「おう!もちろんだ」
「…なら良い」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺が顧問に言わなかった事を知った先輩達は、その日から露骨に俺に対する嫌がらせが増えた。
ウォーミングアップの長距離の際にワザと足を踏まれたり、肩をぶつけられたり…その度に和馬が文句を言っていたが、先輩達が嫌がらせをやめる事は無かった。
そして、和馬が風邪で学校を休んだ日、事件は起きた。
「先輩…!もうやめて下さい…!ヨー君が…!」
俺は部室の中で先輩3人からリンチされていた。
1年生は外周中で、2年生は俺と和馬しかいないし、和馬は今日は欠席。
つまり、止める奴がいないのだ。
唯一のマネージャーである風香だけは必死に止めていたが、先輩は俺を殴るのをやめなかった。
先輩の1人が部室の扉の前に立っている為、風香は先生を呼びに行く事すら出来ず、ただただ涙を流しながら声を上げる事しか出来ていなかった。
3人はひさすら好き放題に殴り、蹴る。
俺は今日、顧問に言われて長距離走の練習に参加したが、そこでも俺は先輩を抜いて1位になってしまい、先輩達はその事に腹を立てたのだろう。
俺は意識が飛びそうになるのを何度も耐え、先輩達をひたすら睨みつけた。
そんな俺の態度に腹を立てたのか、先輩はパイプ椅子で思い切り俺の頭を殴った。
俺の頭からは血が流れ、流石にまずいと思ったのか、先輩達は逃げるように部室から出ていった。
「はぁ…はぁ…」
「ヨー君…!大丈夫!?」
「はぁ…ははは…大丈夫大丈夫」
俺の事を心配して泣いている風香に、俺は笑顔を向ける。
「っ…! 私やっぱり許せない…! やっぱり先生に言うよ!」
「辞めろ…風香」
「なんで…!」
「はぁ…はぁ…俺、走るの好きなんだよ…だから…俺から陸上を奪わないでくれ」
「っ…! もう…どうしたらいいか分からないよ…」
風香はずっと泣き続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リンチされた後、俺は先生に酷い転び方をしたと強引に言い訳をし、俺は1週間入院する事になった。
「許せねぇよなあの野郎共…!俺がいない間にヨータを殴りやがって…!」
「まぁまぁ。 俺は何とも無かったんだし」
「そういう問題じゃねぇよ…」
和馬はため息を吐きながら言う。
「それより、明日から合宿だろ? 頑張ってこいよ!」
「おー…本当はヨータと一緒に行きたかったんだけどなぁ」
陸上部は明日から土日の2日を使って陸上合宿がある。
1年の時に行った時はあまりのキツさに俺も和馬も吐いてしまった程だ。
だがそのキツさに見合う成果はあった為、俺は合宿に行けない事を残念に思っていた。
「はぁ…にしても1週間も走れないって辛いなぁ。 絶対タイム落ちてるし…」
「まぁそれは気の毒だけど…お前に勝つチャンスってのはありがたいかもな」
「汚い奴め」
「うるせぇ天才!」
そう言って俺達は笑い合う。
俺が陸上部に残り続ける理由。
それはもちろん走るのが好きと言うのもあるが、それよりも和馬が一緒だと言うのが大きい。
和馬と風香。俺はこの2人と一緒にいる為ならばどんなにキツいイジメにでも耐えてやろうと心に決めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっとヨータと走れるなぁ」
ようやく退院し、俺と和馬は部活終わりの日課である短距離勝負をする為にレーンに並んでいた。
そんな俺と和馬の事を、風香は楽しそうに見ていた。
「お前が入院してる間、俺はキツいキツい合宿メニューに耐えたんだ!
ブランクはあるだろうが、今日は勝たせてもらうぜヨータ!」
「こえぇなぁ…」
俺と和馬はクラウチングスタートの体勢になる。
「じゃあ行くよー?」
風香が手を叩く音を合図に、俺と和馬は同時にスタートする。
…結果は、俺の圧勝だった。
俺はブランクがある為、正直勝てないと思っていた。
だが今、和馬は俺の前で息を切らしてレーンに寝そべっている。
「はぁ…はぁ…! これでも勝てねぇのかよ…! やっぱりヨータは速えぇなぁ…なんか自信無くなってくるぜ…」
「ははは…」
…その次の日、日課の短距離勝負の後、俺は和馬に胸ぐらを掴まれていた。
「お前今…! 手ぇ抜いただろ!!?」
俺は和馬に自信をつけさせる為、ワザとスピードを落とし、僅差で負けた。
必死に走った演技もしたが、和馬にはバレたらしい。
「お前が俺なんかに負ける訳ないだろうが…! 俺を馬鹿にしてんのか!?」
「ち、違…カズ…俺は…お前に自信を取り戻させようと…」
「自分のタイムだけじゃなくて人間の感情までコントロールしようってか!?
天才様の考えることはやっぱり俺達凡人とは違うから理解出来ねぇな!」
「…っ!俺はただお前と楽しく走りたかっただけだ! なのになんでそんな事言われなきゃいけねぇんだよ!」
「大会は3日後なんだぞ…!?
俺は自分の事で精一杯だってのに、お前は他人の事を考える余裕があるんだな!」
「お前が自信無くなるとか言うからだろうが!! だから俺は…!」
「それが余計なお世話だって言ってんだよ!!!」
「ち、ちょっと2人とも…!や、やめなよ…」
「俺の気も知らねぇで同情なんかしやがって…!
この短距離勝負はもうやらねぇ。
次の勝負は陸上大会だ。 そこで決着をつけてやる」
和馬はそう言い、俺を睨みつけた後、1人で帰っていった。
「…ヨー君…どうしよう…」
俺と和馬は、今まで喧嘩をした事が無かった。
幼稚園の頃から毎日仲良くやってきたんだ。
そんな俺達が喧嘩をした事で風香はパニックになってるんだろう。
俺は風香の頭を撫で、風香を落ち着かせる。
「…怖い所見せてごめんな。 ちょっと喧嘩しちまったけど、お互い陸上が好きってのだけは変わらないんだ。
和馬の実力なら全国出場は確実だろうし、全国出場が決まれば自信もつくだろ。
そしたらまた前みたいに仲良くなれるから、心配すんな」
「…本当…?また3人で仲良く出来る…?」
「出来るさ。俺が全部元通りにしてやるって!」
「うん…ヨー君は強いね…!」
「だろー? 」
俺はこの時、本気で元に戻れると思っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺と和馬が喧嘩した翌日、殴られた時の怪我が悪化してしまい、学校を休んで病院に行った。
そして医者から大会の日まで練習は禁止して回復に努めろと言われてしまった。
だが、不思議と不安な気持ちはなかった。
そして次の日、俺が学校に行くと、クラスの皆が俺を見てザワザワしていた。
疑問に思いながら席につくと、クラスメイトの女子から突然頬を叩かれた。
「…は…?」
「最低…! あんな事をした後で、なんで普通に学校に来れるの!?」
俺をビンタしたこの女子は、風香ととても仲が良い女子だった。
俺が混乱していると、校内放送で俺が呼び出された。
疑問に思いながら生徒指導室に行くと、生徒指導の先生が椅子に座っていた。
「座れ如月」
「え? あ、はい」
言われた通り椅子に座る。
「…なんで呼ばれたかは分かるな?」
「…いえ、すみません全く分からないです」
「ふざけてるのかお前!!」
突然先生が立ち上がり、俺を怒鳴りつけた。
本当に何の事か検討もつかないのだ。
「女の子を傷つけておいて知らないとは…! 恥ずかしくないのか!!」
「…女の子…?」
「卯月風香だ! お前が昨日の夜彼女の事を殴ったせいで、彼女は気を失い入院中なんだぞ!!」
「は…?俺が…風香を殴った…?」
訳がわからない事を言われ、俺はただただ混乱していた。
「一之瀬からの告げ口があって発覚した事件だ! 陸上部全員からもお前の練習態度が悪いと苦情が来ている!」
「か、カズが…?」
「明日は陸上部の大会だというのに、エースのお前が何故こんな事件を起こした!?」
「…ち、違う…! 俺はそんな事やってません! 」
「言い訳をするな!!」
先生に怒鳴られ、俺は黙り込む。
もう何を言っても無駄だと思ったからだ。
「陸上大会には特別に出場させてやる。校長先生のご好意だ。 後で反省文の提出と、目が覚めたら卯月に謝罪するように!」
「……」
「返事!」
「…はい」
俺はこの日から、全校生徒にとって「女子を殴った最低な男」という認識になった。
もちろん話してくれる人は誰もおらず、靴を隠されたり陰口が増えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…どういう事だよ。カズ」
俺はその日の夜、和馬の家に行き、和馬を呼び出した。
小さい頃によく遊んだブランコしかない公園に来ると、和馬は口を開いた。
「一瞬で噂広まったなぁ」
「ふざけんな! なんでお前がこんな事を…!」
「先輩がお前を虐める理由がやっと分かったからだよ」
「は…?」
「走りじゃどんなに頑張ってもお前の悔しそうな顔は見れないもんなぁ!」
和馬は思い切り俺の顔面を殴った。
俺は地面に倒れ、和馬はしゃがんで俺の胸ぐらを掴んだ。
「始まりは同じだったのに! どこで差がついたってんだよ!!」
「っ…! 風香は…関係ないだろ…」
「あぁ…?」
「風香に何の関係があったんだよ!? これは俺とお前の問題だろ!? 風香を巻き込む事は無かっただろ!」
「はっ! あいつ、お前の事好きだったらしいよ」
「…は?」
「昨日の夜、この公園で告白したんだよ。「全国行ったら付き合ってくれ」って。 そしたら「ヨー君の事が好き」って振られたんだ。
良いよなぁ天才は全部手に入ってよぉ!!」
俺はただ目を見開く事しか出来なかった。
幼馴染の少女の思いに、そして、親友だった男の本音に。
「気づいたら風香の顔面をぶん殴ってた。 まさか1発で気絶するとは思わなかったけどな。
バレたらまずいからお前が殴った事にしたら皆すんなり信じやがったよ」
「…お前…なんでそんな風になっちまったんだよ…?」
「先に変わったのはお前だぜヨータ。 お前が急成長したあの日から、徐々に亀裂は入り始めてたんだ」
「…もう、友達には戻れないのか…? 風香は、また3人で仲良くしたいって言ってたんだぞ…!」
和馬の胸ぐらを掴んで叫ぶと、和馬は悲しそうに笑った。
「そんなの、無理に決まってんだろ。
俺達3人はもう2度と、"仲良し3人組"には戻れねぇよ」
和馬が言うと、俺は和馬の胸ぐらから手を離して同時に立ち上がり、和馬と睨み合う。
「…分かった。明日の陸上大会…それが俺とカズの最後の勝負だ。 それが終わったら…もうお前とは関わらねぇ」
「あぁ。もうお前の顔を見なくて済むとなるとせいせいするぜ」
俺と和馬はお互いに背を向け、公園を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陸上大会の日、俺は部活仲間とは別の場所で1人で練習していた。
ウチの陸上部で短距離の選手は俺と和馬だけだ。
先輩達は俺には勝てないからと言う理由で皆中距離と長距離に移行していった。
短距離走の選手が集まる場所に行くと、他校の選手が俺の事を指差してヒソヒソと話している事に気がついた。
どうやら俺の噂は他校まで広まっているらしい。
「有名人だなぁ。流石天才様だ」
「…うるせぇよ凡人」
「あぁ…?」
和馬に短く返すと、和馬は見るからに不機嫌になった。
「言いたい事があんなら俺に勝ってから言えよ。 言っとくが今日は手加減しねぇぞ」
俺が言うと、和馬は舌打ちをして去っていった。
それから時間が経ち、ようやく俺が走る番がやってきた。
全国大会には上位3名が出場できる。
短距離走の選手は合計60人。
1年生の時は絶望的だと思っていたが、今は何も感じない。
俺は自分のレーンにつく。
俺の横には和馬が居る。
毎日この並びで走っていたが、もうあの頃の楽しさとワクワクは微塵も感じない。
ただ誰よりも早く駆け抜ける。
それだけだ。
ピストルの音と共に、俺は思い切り足を踏み出す。
結果は圧勝だった。
そしてタイムを見ると、60人中ぶっちぎりの1位で、自己ベストを更新してかつ大会新記録を叩き出していた。
横で悔しそうにしている和馬には目も暮れず、2階へ戻るために選手用通路に行くと、そこには額に包帯を巻いた風香が立っていた。
「ふ、風香…!? お前目覚めたのか!?」
俺が駆け寄ると、風香は涙を流して俺に抱きついた。
「ヨー君…!私…私…!」
風香を優しく抱きしめ、頭を撫でる。
「…お昼頃に目覚めて…すぐにここに向かったの…来る途中にママから私を殴った人がヨー君だって聞かされて…!」
「…あぁ」
「私何度も違うよって言ったのに…!信じてくれなくて…!」
「…そうか。 でもお前が無事で良かった」
「相変わらず仲いいなぁ」
後ろから和馬の声が聞こえた。
俺は振り返り、和馬を睨む。
「…風香に言う事あんだろ」
「あぁ?ねぇよそんなの。 それより、全国出場おめでとさん」
チラッと電光掲示板を見ると、
1位如月陽太
4位一之瀬和馬
と書かれていた。
「はっ…散々威張って4位かよ」
俺が言うと、和馬は俺の胸ぐらを掴み、俺の事を睨む。
「来年はぜってぇに負かしてやる…!」
「ねぇ2人とも…!」
風香が止めに入るが、俺は鼻で笑う。
「来年なんかねぇよ」
「あぁ…?」
俺が言うと、和馬は俺を睨みつける。
「俺、陸上辞めるよ」
「は…?」
「え…ヨー君…?」
「別に俺がいくら傷つこうが我慢できた。 でも、友達が傷つくんなら話は別だ。
俺は友達を危険に晒してまで陸上をやりたいとは思わない」
「え…で、でもヨー君…走るの好きだって…!」
「俺が走るのが好きだったのはな、カズと競い合うのが楽しかったからだったんだよ。 勝っても負けても笑い合って…そんな日々が大好きだった。
でも今のお前と競い合っても、何も楽しくねぇ。
競い合えば競い合うほど、どんどんお前との距離が遠くなっちまう。
俺はもう、勝った時にどう喜んでたかも忘れちまったよ」
「……」
「…最初から俺が陸上なんかやってなければ、カズが変わる事もなかったし、風香が傷つく事もなかった。
ずっと仲良しのままでいれた」
和馬は黙って俺の言葉を聞いている。
「俺にとって陸上は、俺とカズと風香との繋がりだった。
でも、今の俺にとっての陸上は、ただ人より早く走るだけの競技になっちまった。
…1人で走ったってつまんねぇんだよ」
風香は俺の言葉を聞いて涙を流していた。
「カズ、お前は4位だったな。
俺全国大会の出場辞退するから、代わりにお前が行けよ。俺にはもう価値がないものだしな」
俺はそう言って和馬に背を向けて歩く。
「ずっと…変わらず3人で楽しくやっていけると思ってたよ。
じゃあな。 もう会う事もないだろうよ」
最後にそう言い残し、俺は和馬に別れを告げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇヨー君…! 本当にいいの…!? 全国大会夢だったんでしょ!?」
「俺は、カズと2人で全国大会に行くのが夢だったんだ。
1人でやる陸上に価値はねぇ」
俺は2階に上がり、帰る準備をしていた。
「…悪いな風香。 元に戻すって約束守れなくてよ」
俺が言うと、風香は唇を噛み、涙を流す。
「ねぇ…私やだよ…! これからも3人で一緒に居たいよ…!」
「…カズは変わっちまった。 お前を殴るような奴だぞ?」
「イライラしたら暴力的になる事だってあるもん…! だからきっとカズ君も…!」
「イライラしてたとはいえ、俺はカズの行動は許せない」
俺は荷物を背負い、階段を降りる。
「風香、俺高校は地元を離れる事にするよ」
「え…」
「どうやら俺が風香を殴ったって噂が他校にまで広がってるっぽくてな。
遠い場所で1から始めたいんだ」
「え…じ、じゃあ…離れ離れになっちゃうの…?」
「…まぁ、そうなる」
「やだ…やだよヨー君! 皆でずっと一緒にいようよ…!!」
風香は俺の手を掴み、何度も首を振る。
「風香、もう俺の事は忘れろ。
そんで陸上部を辞めてカズの事も忘れて、1から新しい友達を作れ。
もうこんな別れ方をしないような本当の友達をな」
「な、なんで…私は…!」
「俺もお前らの事は忘れる」
「ヨー…君…」
「俺と風香は似てるから、すぐに人を信じちまう。
だからこれからは人を信じすぎないようにしないとな」
俺は優しく風香の手を振り解く。
「じゃあな、風香。 こんな俺を好きになってくれてありがとう」
俺はそう言って風香に背を向け、歩き出した。
和馬と風香とは、幼稚園の頃からずっと一緒だった。
2人は俺の大切な友達で、ずっと一緒に居たいと思ってた。
だけど、たった1人が変わるだけで一気に崩壊するんだ。
俺は和馬の事を本当に親友だと思っていた。
だが、その和馬に俺は裏切られ、最後は喧嘩別れをしてしまった。
そして俺の事を好きで居てくれた風香は、俺の事を好きになったせいで和馬に殴られた。
人は変わる。それは良い方向の場合もあれば、悪い方向の場合もある。
そしてもし友が悪い方向に変わった場合、親しければ親しいほど辛くなる。
…なら、俺はもう誰も信じない。
またこのような事態になり、同じように傷つくなら、
俺は2度と…親友は作らない。
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