第7話 キャラ弁


「わあ、可愛いキャラ弁」

「幼稚園の息子と同じ弁当なんだ」

 遼平が箸を掴むと、

「あっ、食べるのちょっと待ってください。写真撮らせてください」

 栗田はスマホを起動させ弁当に向けた。別の角度からも押さえたら、やっと椅子に座った。

「リョウさんはよほど奥さんを愛してるんですね」

「えっ」

 リョウさんと名前で呼ばれたのにドキッとした。

 厚焼き卵に箸を伸ばそうとすると、

「卵、いただき」

 と言うなり、栗田のピンクのマニキュアをした指先が伸びてきた。

 卵焼きは栗田の迎える舌に捉えられ、ゆっくりと口の中に消えた。

 コンビニで買って来たサンドイッチを食べるときも、そういう癖があるのか、まず舌が先に迎えにいく。それがちょっと下品で、何とも淫靡な感じがした。

「結衣ね、悪い癖があるんです」

「えっ、どんな?」

「誰にも言わないでくださいよ」

 栗田は椅子を寄せて遼平に近づき声を潜ませた。

「人のものを取る癖があるの」

 遼平はクマの耳の形に丸めたご飯をゴクリと飲み込んだ。

 

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