第3話 中途入社

「今日から来てくれることになった栗田結衣さん。みんなよろしく」

 人事部長はそれだけ言うと、彼女を置いて慌ただしく設計部の部屋を出て行った。

 どうしたらいいのかわからないといったていで佇む栗田に、入り口に一番近いデスクを遼平は差し示し、

「ここを使うといいよ。お茶は朝1と昼、3時に煎れて。あとお客さんにも出して。みんな打ち合わせで出払ってしまうことが多いから、電話があったら必ずメモを残すこと。たいてい携帯にかけてくるから、滅多にここの電話は鳴らないけど。またわからないことがあったら訊いて」

 遼平は部屋の奥に置かれた自分のデスクに戻ると、パソコン画面の製図に取りかかった。

 いくつくらいやろ? 二十歳は過ぎているよな。中途入社ってことは、まさかの主婦? あかん、あかん。室長から変更を急かされているんや。残業なんかさせられたら、たまったもんやない。

「あの~、お茶を煎れたんですけど、どなたのコップかわからないので…」

 遼平のデスクのそばに立った栗田がお盆を差し出した。

 以前、勤めていたパートのおばちゃんが買って来たもので、そんな決まりはなかったように思う。

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