第3話 中途入社
「今日から来てくれることになった栗田結衣さん。みんなよろしく」
人事部長はそれだけ言うと、彼女を置いて慌ただしく設計部の部屋を出て行った。
どうしたらいいのかわからないといったていで佇む栗田に、入り口に一番近いデスクを遼平は差し示し、
「ここを使うといいよ。お茶は朝1と昼、3時に煎れて。あとお客さんにも出して。みんな打ち合わせで出払ってしまうことが多いから、電話があったら必ずメモを残すこと。たいてい携帯にかけてくるから、滅多にここの電話は鳴らないけど。またわからないことがあったら訊いて」
遼平は部屋の奥に置かれた自分のデスクに戻ると、パソコン画面の製図に取りかかった。
いくつくらいやろ? 二十歳は過ぎているよな。中途入社ってことは、まさかの主婦? あかん、あかん。室長から変更を急かされているんや。残業なんかさせられたら、たまったもんやない。
「あの~、お茶を煎れたんですけど、どなたのコップかわからないので…」
遼平のデスクのそばに立った栗田がお盆を差し出した。
以前、勤めていたパートのおばちゃんが買って来たもので、そんな決まりはなかったように思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます