若き俊英、青き大海を割る〜FAカップ決勝 マンチェスターシティ1-2マンチェスターユナイテッド(2024/5/25)

ウェンブリーで行われたFAカップ決勝。2冠を狙うマンチェスターシティと、これを逃すとヨーロッパカップ戦からの撤退を余儀なくされるマンチェスターユナイテッドの一戦。決勝戦がダービーとは、なかなか粋な展開。


プレミアリーグ4連覇の偉業を達成した青のチームに対し、赤い悪魔はその魔力が尽きたのかリーグ戦での敗戦数は「14」のクラブのワースト記録を更新したほか、ユナイテッド史上初のプレミアリーグ8位と不名誉な新記録を残す年となり、捲土重来を期すべく勝利が必須の状況。


試合は、そんな互いのメンタルがプレーに現れたような展開となった。つまりユナイテッドの勝利への渇望が、シティの2冠への意欲を上回ったように見えたのだ。


ユナイテッドは試合開始当初から自陣でブロックを構えてのカウンター狙い。それに対し、いつも通りのシティと言いたいところだが、随所に僅かだが精度を欠くプレーが見られた。この危うさは30分に具現化される。グヴァルデイオルとオルテガが連携でミスを犯した。保持していたボールは宙に浮き、それをガルナチョが逃さずゴールに突き刺す。更に前半のうちにコビー・メイヌーが追加点をあげ、0-2で前半を終了。


後半はシティが積極的に選手の入れ替えを行いながら圧を強めるが、決定機をどうしても決めきれない。一方のユナイテッドは丁寧なローブロックで危機を逃れ続ける。しかし87分に途中交代のドクに決められ1点差。勢いはマンシティに傾くかと思われたが、そこからユナイテッドはこの試合に賭ける決意の強さを見せ、粘り強く危機を潰し試合終了。


ユナイテッドの負けられないという気持ちは、集中を切らさなかった守備に如実に現れていた。一方のシティは油断こそ無かったはずだが、ミスというには酷だったグヴァルデイオルらの連携のズレや、決定機を決めきれない状況は、心理の底で彼らを蝕む何かがあったのかもしれない。いずれにせよ、傍目から見ればメンタルの差が結果に反映されたかのように見受けられた。


さて、マンチェスターユナイテッドに2得点をもたらし勝利の立役者となったのは2人の若き俊英。彼らの勝利への強い渇望が青い大海を割る杖となったことは、この先のクラブの先導者として、新たな規範をもたらす存在になるかもしれない。


今シーズン、ユナイテッドが不名誉な記録と共に手にしたこのタイトルは、ヨーロッパカップ戦への出場権を手にした以上のものを得た可能性がある。特に時代の若き才能たちにとって。クラブの明るい未来への始まりを予感させる勝利だった。

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