第5話  スライムと言ったら雑魚オブ雑魚!指先ちょんっ。で死ぬような物理的にも軟弱者ですわ!



 生意気にもわたしがせっかく作った木の棒よりも斧を手にした勇者。た・し・か・に!棒よりも斧の方が攻撃力は高そうだけども!!


 決して!!決して!こんなバカと一緒にしてもらっては困る!


「さあ、行くのです。勇者。貴方なら確実にあのスライムを倒すことが出来ますわ!」


「うへぇ…。ほんとに透明な何かが動いてやがる…。気持ち悪!しかもこっちによってくるなっ!なんなんだよ!最近はこんなアメーバ見たいな生き物が生まれたのか!?」


 うん。勇者完全にスライム如きにビビってますわ…。ほんと誰だよ…。こんな勇者連れて来たのは…!私だよ!ちくしょうっ!!


「よく見てください勇者。これはスライム。確かに骨もなく無色透明で、ブルンブルンに動きますが向こうは攻撃手段なんて、まとわりついて妨害するくらい。単体での戦闘力はそこら辺の虫と大差ありませんわ」


「なるほどなぁ〜。これ新種の虫なのか。確かに言われてみればそんな気がしないでもない!」


 もう、コイツ誰か取り替えて欲しいですわ…。何をどうやったらスライムが虫に見えたんだよ!眼科行ってこい!或いはエリクサーでも目に刺してこいっ!


「ということで殺虫スプレーを!喰らえ!」


プシューーーーーーーー!!


プルンプルン!?



 な!?なにー!!殺虫スプレーがスライムに効いてるー!?効果は抜群だ!…てっ待て!!!?


「あ、あれ?勇者。どこでそんなもの…を?」


 こいつ今何気なく取り出したけど!?私こんなもの持たせた記憶ねーぞ!元々の持ち物!?いや、こいつを転移させたのは私of私!そんなものを一緒に転移させた記憶は無い!!転移させたのはこのバカと服!それだけなのに。なんで?

 いや、こいつもしかして常に殺虫スプレーを装備してた…とか?


 まさかー…。



「ん?いや、持ってた」


「はい?」


「だから持ってたって言ってんだろ?頭だけじゃなく耳も悪いのか。自称女神」


 ブチッ!



 このガキ…。何を言っても無駄!私は何処から持って来たのか聞いてんだよ!持ってるのは知ってっから何処からかを言えこの糞ガキ!


「ちっ!」


「あ、おいお前今舌打ちしたろ?」


「いえいえ、虫のさえずりとかでは?」


 んなとこに反応しなくてもいいんだよ糞ガキ。もういい。さっさと先に進みましょう。まずは町ですわ。私くし女神。このクソみたいな生意気お子ちゃまを導いて見せますわ!


「おい自称女神。そろそろ家に戻してくんね?こんなだだっ広い草原。そろそろ飽きてきたぞ?」


「そうですわね。では町まで移動しましょうか」


「いや、町はいいから返せって」


 執拗いですわね…。


「あなたは選ばれし勇者。この世界を魔王の手から救い。世界を安寧へと導く。故にもといた世界には。二度と戻ることは叶いませんわ。諦めてください。神により選ばれ、その背に大きな大役を背負ったあなたは、振り返ることは許されないのです」


「あ、そういうのいいので。現在地と地図さえ渡してもらえれば自分で帰る」


 あのー!すいませーん。こいつもう放ったらかしにしてここに置き去りにしていいですかー?いいですよねー?

 内なる私の善意なる心が「いいよ!やっちまえ!」と叫んでる!!つまり、オーケイ!こいつはここにポイしちゃっていいのだろう!!!!


 もうヤダ!!!私天界に帰るっ!!!!!!


 こんなやつ…。こんなやつと一緒にこの世界に堕とされ…。こんな状況の読めないアホと…。


「おーい?聞いてるー?自称女神さま〜?そろそろ帰りたいんで返してくれませんかね〜?」


 もういいですわ!こんなやつとはおさらばして!私は天界に帰る術を見つけに行きましょう!そうしましょう!


「勇者。ここでお別れです。これがこの世界の地図、現在地ですわ。私は先を急がねばなりませんので。サラバ!」


 地図を渡して私はトンズラ!綺麗な純白の羽を広げ空を飛び、そそくさと勇者から距離をとる。こんなやつと一緒にいたらろくなことにっ!?!?!


「うべっ!?」


カシャン!


 いきなり足を引っ張られるような感覚と、前へ進んでいた推進力がいきなりゼロに。よってそのままコケるように地面に落下した女神。


「痛い…。一体何が…!?」


 なんとか上体を起こし未だ違和感のある足を見る。すると私の足には…。



『堕天の枷』

・これは堕天した者に与えられる枷。この枷は己が定めた者をゴールまで導かなければ取れることは無い。この枷が着いているものは天界への立ち入りを禁ず。




「嘘…。でしょ」


 私の左足に着いた枷。それは15m先の。勇者の右足に片割れが着いていた。

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