あなた不倫してるでしょ

叙述トリック大好きギャル…満74歳現役女

【グロ注意】不倫疑惑(完結)

「ほら、わたしのスマホ見て」

 ー あたしは彼女が差し出したスマホ画面をのぞいた。


『今日も遅くなると思う。食事は外で食べる。先に寝てて良いよ』

「…主人からのLINEライン。ここ3カ月。ほぼ毎日こうなの。週末もサービス残業とか言って出かけちゃうし…、ねえ、どう思う?」


 ― うーん完全に怪しいわね…。ほんとに仕事なのかしら。会社に電話してみればどう?

「それは絶対ダメって言われてるの。会社に迷惑掛かるからって。あと、主人の個人携帯に電話するのも控えてほしいって…」


 ― えー何それっ!おかしくない?夫婦でしょ?あなた達結婚したの、つい最近じゃなかったっけ?新婦友人のあいさつで、あたしがスピーチしたあのときって何年前…まだ2年前くらいじゃない?

「そうよ。まだ新婚の部類じゃないかしら?わたしは、そろそろ子どもが欲しいって主人に言ってるんだけど、『疲れてんだ。今日は無理。仕事が落ち着いたらね』…って毎回断られちゃうの」


 ― 言いたくないけど…、あたしは「女」だと思う。あの男…卑怯者、許せない。親友として力を貸すわ。あんたの旦那、尾行してみる。明日は日曜だけど、また外出するのかしら?

 「多分。今月に入ってから、金曜の夜は帰宅せず、土曜の夜遅くに帰宅。日曜は朝から出かけちゃうパターンなの」


 ― 分かった。「」を写真に撮ってやるわよ。私に任せて!


 ≪翌日、午前8時08分≫

 昨日訪れた親友の自宅前。あたしはキャップを深くかぶり、マスクでほぼ顔全体を覆っている。多分、旦那さんはあたしの顔なんて覚えてないと思うけど…念のため。あっ出てきた。


 「今日も忙しいから、もしかすると帰れないかも知れない。いつも悪いね。じゃあ、行ってきます」


 ー …しらじらしい。女と外泊するための伏線か。まあ良いわ。絶対その瞬間を撮って、この男に突き付けてやる。


 あたしは彼の後をついて行った。宮崎台みやざきだいで東急田園都市線に乗り、渋谷の一駅手前の池尻大橋いけじりおおはしで降りた。濃紺のスーツに通勤カバン…今のところは普通の通勤中のサラリーマンである。気付かれないよう、そっと尾行する。やがて彼は8階建てのビルに入っていった。怪しいビルには見えない。ごく一般的なオフィスビルである。


 ー そうか…オフィスラブなのかも知れない。だとすれば女も来るはず、それとももう、先に出社しているのか?

 あたしは今日、とことん見張ることにした。彼はやがて、このビルから女と一緒に出てくるはずだ。その瞬間を、このカメラで激写するのだ。 後々離婚になった場合も、裁判では有力な資料になるであろう。


 時刻はもうすぐ正午。カメラを手に、ずっと見張っていた。やがて起こるであろう「」を、あたしは待ち続けた。


 「!!!」…一瞬のことだった。ビルから何か黒いものが落下した。カメラを構えたあたしの前で、「グシャッ!」という音とともに、その物体は潰れてしまった。大きなスイカを上から下に落下させたときのように、その物体から様々なものがコンクリートに散らばった。

 …震える手で、私はカメラのシャッターを切った。


 ポケット内でスマホが鳴っている。しばらく動くことができなかった。スマホは鳴り続ける。着信画面を見る。例の親友からだった。


「どうしよう、大変なの!主人の机に、遺書が置かれてたの。

 『仕事に疲れた。ごめん、先にく。今までありがとう』

 って書いてあるの。…あなた、今どこなの!」


 ― …旦那さんの前にいるわよ…本当に撮っちゃった。あなたの旦那の「」を…



解説かいせつ

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 いわゆる過重労働により、うつ病を発症した社員の自殺話である。

 ストーリーに登場する「主人」=「旦那」は、決して不倫などし

 ていなかった。日頃は遅くまで残業、さらに土日も出社しなければ

 ならない程の激務が続き、とうとう自社ビルから飛び降り、死亡した。

 「主人」は潔白だったのだ。

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