第2話「元竜王、スライム相手に本気wwを出す」
「………………もう…木の実は……嫌だ…」
太陽に照らされる大きな木の下。そこには見るも無惨なゲロ塗れの少年が一人、寝言の言いながら寝ていた。
「…うぅぅぅぅぅ、嫌だぁ……木の実は嫌だァァ!!」
悪夢にうなされていた少年は、何かから逃げる様に飛び起きた。
「き、きのみが、木の実が襲ってくるッッッッ!!………………あれ?何処だここは。さっきまで我を襲う木の実と、空中戦を繰り広げていたはずだが?」
夢から覚めた少年は、寝惚けながら意味不明な事を言う。
「ん〜?……何だこの酸っぱい臭いは?。とんでもなく不快な臭いがするぞ」
少年は何やら近くで異臭がする事に気付き、臭いの出どころを探し始める。
「ん〜〜何処から出ているんだ?。かなり近くから出ている気がするのだが…………ッッッッ!!な、何だこれはッッッ!!」
そこで初めて自分がゲロ塗れの事に気付く。
「はッッ……そうだ我は昨日あの忌々しい木の実を食べてそれから…」
少年は昨日の事を思い出しぷるぷると震え始める。
「ふ、ふははははは……この我が、この世に産まれてからただ一度の敗北も無く、地上最強生物と言われ全ての生き物から恐れられた。憤怒の竜王グラノールであるこの我がッッッ!。ゲロ塗れのだと…ふざけるな……ふざけるなァァ!!!」
少年、竜王グラノールはそのまま怒りに身を任せ。近くにあった木に拳を振るう。
「……………う、うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!いったぁぁぁぁ!!!」
しかしグラノールのパンチを受けた木は、一切ダメージを負わず。逆にグラノールの拳が血塗れになった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
泣き喚きながら木から逃げる様に走り出す。
「ぴえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
裸でゲロ塗れの少年が、泣きながら気持ち悪い走り方で森の中を走り回る。その姿は、側から見れば完全に変態であった。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……」
そうして森をしばらく進み。痛みも和らぎ少し冷静になって来た所で、変態は森を抜け何やら整備された道に出た。
「ハァ…ハァ……な、何故森の中に道があるのだ。近くにドワーフ国でもあるのか?まぁ、今はどうでもいいか」
「ふぅ、疲れたな。この道で少し休むか」
そう言い地面に寝転ぶ。
「しかし何故、こんな事に………神よ、私が一体何をしたと言うのです。」
そんな事を神に言うが、実際とんでもない事をしでかしているので許される訳がない。
「……ここが何処かもわからんし、バランも見つからん。我は一体どうすれば良いのだ。……ん?」
ポヨン。ポヨン。
しばらく休んでいると、近くから何かの足音が聞こえる。グラノールが起き上がり音の聞こえる方を見ると、そこには半透明の青い球体。この世界最弱の魔物、【スライム】がいた。
「ふむ。スライムか、確かコイツは自分より格下の相手しか襲わない習性を持っていたはず。我も弱い者虐めは趣味ではない。無視で良いな」
ポヨン。ポヨン。
しかしスライムは、何故かグラノールの元に近付き目の前で止まった。
「ん?何だ?何故、我の前に止まったのだ?確か格上には近付かず逃げる筈だが……どうやら我の余りの力に恐れをッッッッ!」
ドスンッッ!
スライムはグラノールに向かって、何の躊躇いもなく体当たりをした。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」
グラノールはスライムの体当たりによって、数メートル先に吹っ飛ばされる。
「き、貴様スライムの分際で何をする!!我を誰だと、ぐわぁぁぁぁッッ!!」
スライムは止まる事なくもう一度体当たりをする。
「貴様ぁァァァァァァッッ!!!もう許さんぞ!我の奥義で消し炭にしてやる!」
「我は手加減が出来ん。悪いが本気で行かせてもらうぞ!。我を怒らせたらどうなるか思い知るが良い」
「喰らえ!【ドラゴンブレス】!!……………あ、あれ?」
グラノールは口を開け炎を吐き出そうとするが、当然人間なので炎は出ない。爪も無い、牙も無い、炎も吐けない。グラノールは自分がドラゴンの力を使えない状況を理解し始めた。
「ふ、ふははははは…命拾いしたな。今回は、我の広い心に免じて許ッッ、ぷぎゃぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」
再び、格下相手にスライムの容赦ない一撃が炸裂する。
「こ、こんな事にが許されると思っているのかッッ!!我は竜王であるぞ!!『七竜王』、最強である『憤怒の竜王グラノール』だぞッッッ!」
スライムはグラノールを押し倒し、そのまま体を捕食し始める。
「や、やめろぉぉぉぉぉぉッッ!!」
スライムは面積を伸ばし、足から腰、腰から手と徐々に体を包んで行く。
「殺してやる……殺してやるぅぅぅぅぅ!!!我がドラゴンに戻ったら貴様を真っ先に殺しに行くからな!!それまで震えて眠れ!」
ちなみにスライムは眠らない。
「クソッッッ………嫌だ嫌だ嫌だ!!スライムに殺されるなんて嫌だーーー!!!誰かーー我を助けてくれーー!!!報酬なら何でもやる!だから誰かたすけッ……………」
遂にスライムに体が全て飲み込まれる。
こうして彼は短い人生の幕を閉じ………ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます