第3話 『 学校でこういうことするのも悪くねえな。な、ボッチ 』

「あれ、ボッチじゃねえか。どうしだよ保健室なんか来て。あ分かったぞ。お前もサボりだろ? 見かけによらずワルだなお前も」


 ベッドに横たわるアマガミさんを発見。なんとも贅沢なサボりライフ送っていた。

 違うよ、と首を振れば、アマガミさんが怪訝な顔になった。


「……ん? お前なんか少し顔色悪くないか? ――「眩暈がして」って大丈夫なのか⁉」


 アマガミさんが慌てふためいた。


「と、とにかく早くベッドに横になれ。あ? 今私のこと気にする場合じゃねえだろ。自分の体調最優先にしろよ」


 慌てながらもアマガミさん、ボッチを心配する。


「ほれ。シーツ掛けてやるから。センコーは? そういえば用があるって私に留守番させてたんだった。そっか。だからとりあえず寝ることにしたのか」


 近くにあった椅子を持ってきて、アマガミさんが看病してくれた。


「寝てていいぞ。センコーが来たら言っとく。薬は……スマン。場所分からんかった」


 申し訳なさそうな顔をしたアマガミさん。ふるふると首を横に振れば、アマガミさん、手を額に置いた。


「熱は……うん。なさそうだな。体のほうは何ともないか? 気怠かったり、どこか痛い所はあったりするか? 「ないよ」って、本当ならそれでいいけど、嘘は許さないからな」


 心配そうな瞳を向けるアマガミさん。


「「体が気怠いかも」って……やっぱりあるんじゃねえか。痩せ我慢なんかすんな。私に心配かけさせたくなかった? バカ言え。お前が正直に言ってくれない方が私は心配だ」


 デコピンの代わりに、アマガミさん、おでこをくっつけてきた。


「お前に何かあったら私はおかしくなっちまう。だから、お前にはいつも元気でいて欲しい。ごめん、てなんでお前が謝るんだよ」


 アマガミさん、弱々しく笑った。


「謝るくらいならさっさと寝て元気になれ。は? なら私に添い寝して欲しい? ……ほほぉ。病人のくせに生意気なお願いしてくるじぇねえか」


 アマガミさんの目が少し怖くなる。

 やっぱりダメだったかと思うと、カタリと椅子が動く音がした。

 戸惑うボッチを余所に、アマガミさんはベッドに入り込んでくる。


「「何してるの?」って、お前が添い寝して欲しいって言ったんだろうが。安心しろ。センコーが来るまでの間だけだ。どうだ、あったかいだろ」


 ほんのりと赤くなった顔で、アマガミさんは犬歯をみせた。


「物足りないならナデナデもしてやるぞ。「どうしたの今日は?」って……まぁ、今のお前は病人だしな。そんで私はお前のカノジョだ。なら、手厚い看病くらいはしてやろうと思ってな」


 それは家に帰ってからも? と質問すれば、アマガミさん、


「当たり前だろ。今日は家に帰ったらソッコーでベッドにツッコむ。そんで私お手製のお粥をたんまり食わせてやる。どうだ? 嬉しいか? 嬉しいだろ。嬉しくなかったら二度とやらない」


 半ば強制的に頷かされた。


「たくさん寝て。ちゃんとメシ食って、そんで私がいればすぐに体調なんか良くなる。だーかーら、まずは寝ることから始めような。は? 「アマガミさんの顔が近くて寝れない?」だと。おいおい、まさか学校で興奮するとは思わなかったぜ。とんだ変態だなボッチは」


 イジワルに笑うアマガミさん。ボッチはうまく反論できなかった。

 それからアマガミさん、顔を近づけると耳元で「でも」と囁いた。


「学校でこういうことするのも悪くねえな。な、ボッチ?」



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