第8話 ストラトキャスター
他の部員も楽器を買い揃え放課後は練習をしていた。
麗奈達は、月曜から金曜日まで後輩の指導をしていた。
それぞれ練習時間はマチマチだった。
短い人は部活だけであり、長くても1日1時間程度だった。
そこで葉月は提案して、11月の学祭までの期間で良いメンバーを4人選んで前座として出てもらうことを言った。
自分たちが毎日どれだけ練習してるのかも、後輩に言っていた。
「私達は、貴方達よりも遅い時期から始めました。1年の9月からです。そこから練習をして学祭のステージで認められて同好会として今活動しています。今になれば、あの頃の演奏は聞けたものではないですけどね。それでも、ガラガラで審査の教師しか居なかったのに、最後には立ち見も出ました。麗奈が歌いながら、窓と扉全開にしたのもありますけどね。みなさんには、まだまだ時間がありますよ。平日は5~6時間、土日は12時間は練習できますからね。目標を持って進んでくださいね。あの拍手は一度味わったらたまらないわよ。」
「そうそう、葉月の言う通りね。うちのグループには麗奈っていうしっかりとしてメインボーカルいますけど。そこも話し合ってくださいね。」
「わからない所は、各パーツの先輩に聞いてね。私達も素人なのでわからないですけど、なるべく対応していきますからね。」
ステージ上では多彩なパフォーマンスをする麗奈だったが、いつもは静かだった。
下級生も、月・水・金の練習を見に来ていた。
まぁ演奏だけで歌はなかったが、とても上級生には敵わなかった。
再び、1年も練習を再開していた。
次の1年が来年入ってきて自分たちが出れるとは限らないのであるから、この1年で必死に練習をして個人の力を強くしよとしていた。
2年の高い演奏でも、途中で止まっては口喧嘩をして、言い合っていた。
「ドラムちょっと遅れたわよ。なんかこの頃遅れ気味よね。麗奈聞いててどうなの?」
「えっと、ここのフレーズの所と こことここが多少遅れてる気がしますね。でも、つられてベースも遅れてますよ。」
「そこ突っ込むなよ。麗奈。しっかし、麗奈は帰ってから寝るまでギター一筋だから上手いよな。一回聞くと、速弾きもできちゃうしな。」
「それは、練習してるからですよ。練習すると出来るようになりますからね。」
1年達には、どこでドラムが遅れたのすらわからなかった。
梅雨の時期になると、ギターの持ち帰りが嫌になっていた。
ただでさえ湿気とかに気を使っているのに、あれから9ヶ月経ち貯金も27万になっていた。
楽器屋さんとは、もう顔なじみになっていた。
同じギターも嫌だと思い、ストラトキャスターとかSGとかを見ていた。
「おお もう、2本目にするのか? 上手くなったのかな?」
「あまり上手くはなってないですよ。でも、梅雨で毎日学校と家を持って帰るのも可愛そうかなって思って。」
「どれどれ」
店員は麗奈の左手を触り、ニコニコとしていた。
「こりゃ、すごい練習してるね。クリスマスにも聞いたけど、あれから上手くなってるみたいだね。」
「聞いてたんですか? プロに聞かれてるなんで恥ずかしいですよ。ただ、あまり人前で演奏する機会とか中学生なのでないから。」
「ところで、決めかねてるみたいだね。レスポールはよかっただろ。いい音するしね。今回はストラトキャスターもいいかもしれないね。高音も弾きやすいし、音は少し軽くなるけどね。それなりの魅力があるからね。」
「今、Gibsonだから。Fenderもいいかなって思ったりしてるんですよね。あのホワイトパールのも綺麗だと思ってますよ。でも、高すぎね。予算オーバーだもの。」
「予算はいくらなんだい? 」
「25万ですね。ケースも買いたいので、それ以上は出せないかなって。もう、これでお小遣いとバイト代も無くなりますけどね。」
「あれが欲しかったら25万でいいよ。ケースも付けてあげるからね。」
「ええ 悪いですよ。私まだそんなにここで買ってないし。」
「早見君の妹と一緒にやってるんだろ。聞いてるよ。それに、軽音部立ち上げて。他の人も買いに来てくれてるからね。今年に入ってから大勢きたしね。安いのだけど、やり始めると高いのが欲しくなるものさ。」
FenderのUSAのパールホワイトとFenderの弦を3セットとGibsonの弦を3セットとピックを買って、お辞儀をしてお礼を言い店を後にしていた。
家に帰ると張ってあった弦を張り直し、チューニングをした。
レスポールの方がネックが折れやすいので、学校には買ったストラトキャスターを持っていくことにした。
レスポールは太く重い重量感がある音だったのに対し、ストラトは軽く歯切れの良い音だった。
曲により、使い分ければ良いと思った。
月曜日に新品のギターを持って学校まで出かけていた。
放課後、ギターケースを開けるとみんな驚いていた。
「おい、麗奈すごいじゃないか。もう2本目か。今回のも綺麗だよな。今度は真っ白だな。」
「ええ、彩香のお兄さんを知ってるって言って、少しまけてもらったの。予算オーバーだったらかね。」
「今回のはいくらだったんだ? この前のは25万だっただろう。」
「今回のは26万でした。お小遣い貯めてた貯金も全部無くなりましたよ。」
「じゃ、今月は私が帰りのジュースおごってやるわよ。麗奈にはみんな感謝してるのよ。あのまま吹部にいたら、腐ってたものね。あの惨めな大会だけは二度と味わいたくないからね。」
「あのー 夏のイベントに出ないかって、商店街の会長さんから打診があったんですけど。なんでも、3個のステージで演奏するみたいですよ。演奏時間は、1時間だそうです。3個のステージで同時に演奏しても大丈夫な距離あるので、同時演奏だそうです。」
「麗奈のところに連絡が入ったんだな。これって、社会人とか高校生とかプロも呼ぶみたいだけどね。すごいことになったね。やっぱりクリスマスが効いたかな。」
「曲とか決めないとね。この頃じゃ、麗奈がほとんど作詞してて、作曲も私と麗奈で半分づつくらいだからね。案外いける曲もあるからいいかもね。」
「もう、この頃じゃ。葉月と麗奈に全部取られちゃってるし。まぁそっちの方が出来がいいから、いいですけどね。」
「その時は、1年生にも手伝ってもらわないとね。律子は、まだまだだから。学祭までにちゃんとしててね。みんなも器材運びとかセッティングお願いしますね。」
部員も13人になり、活動も定期的に行っているのが評価されて部として昇格されていた。
5月中旬頃は1年もやっと音合わせができる段階まで来ていたが、まだまだ物足りなかったのは事実だった。
それからは、曲決めや練習を4人はしていた。
【真夏の思い出】【SkyBlu】【浜辺の少女】【星に祈りを】【恋人たちのキス】【満天の星空】【2人で花火を】【打ち上げ花火】
楽曲は、夏にふさわしいこの8曲となった。
まぁ麗奈のマイクパフォーマンスと途中でソロで弾き始めると長くなり、時間が押すのはわかっていたが。
麗奈の予定してないソロに合わせられるのは、葉月だけであって。
ドラムはリズムを刻んでいたが、1番こまったのはベースの彩香でついていくのが必死だった。
PrettyGirls(可愛い少女たち)ーレディースバンド物語ー 安田 沙織 @reina0304
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。PrettyGirls(可愛い少女たち)ーレディースバンド物語ーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます