第3話 軽音始めませんか

電車に乗っていると、あすかと彩香に両側に座られていた。


「ねえ、麗奈。勝手に部活辞めて、今度は校則違反のバイトしてるの?」


「勝手に辞めたのは、謝りますよ。2人には迷惑かけました。ごめんなさい。」


「麗奈がいれば、私達こんな恥をかかなかったのよ。他校の生徒に、もう出場するなとも言われたのよ。」


「あ それは、私がいても一緒でしたよ。私も前の先生から説教されましたのでね。フェスティバルの日に。あれは演奏じゃないですもの。チューニングもバラバラ・音もリズムも綺麗な音出してたのは、葉月くらいだったからね。合奏ではなかったですね。」


「だから、自分だけ抜けたの?それって裏切りでしょ?」


「2人共始めたばかりで楽しそうにやってたので、辞める事は勧めなかったですよ。それに、演奏も聞いてましたけど。他校の生徒さんは、どれだけ練習したかわかってますか?」


「私達は初心者だし、私達と変わらないんじゃないのかしらね?」


「普通は、放課後2~3時間毎日練習しますよ。合宿する学校もありますからね。学校以外でも、家で3~5時間は練習してますよ。練習量の違いと指導者がいないことですね。」


「それなら、私達が3年の時はできるんじゃないの。麗奈。」


「顧問が変わらない限り、現状は変わらないと思いますよ。今の状態で良いと思ってる他の1年もいますしね。だから辞めたんです。」


「それで、麗奈はこれからどうするんだ?」


「まぁ、気軽な週1の部活でもやりますよ。やりたいこと見つけたのでね。」


「そうなんだ、麗奈にもやりたいこと見つかったんだな。よかったな。でも、なんでバイトしてるんだ?」


「その、やりたいことの為ですよ。貯金が15万くらいあるので、夏休みにずっとバイトしてて、今30万ちょっとになりましたけどね。」


「なんか、面白そうだな。言いたくなきゃいいけど、なにやるんだ?」


「吹奏楽って、大勢でしょ? もっと少人数ならまとまるかなって、バンドでもやろうかと思って。まぁ、実際やれるのは高校からですけどね。それでギターを買おうとしてたのよ。」


「そんなに高いのか? ギターって。」


「1万くらいからあるけど、それって音が悪くて初心者用なのでね。殆ど5万くらいからです。でも楽器店で、これだって思ったギターが25万だったので、バイトしたのよ。」


「ああ、そうね。私も時々お兄ちゃんのベース弾いてるけど、あっちもいいわよね。」


「バンドって、ベースとギターとドラムがあればできちゃうからね。簡単なのよね。今度は親に頼んで、軽音のある高校を受験しようかなってね。」


「もう、そこまで計画してるんだね。まぁ週1の練習じゃ、中々上手くならないしなぁ~」


「そこは、あすかが努力してないからでしょ?パーカッションなんてメトロとスティックあれば、家でも出来るからね。彩香はやってるの?」


「最初の頃だけかな、麗奈辞めてからは殆ど部活だけだしね。」


「2人とも頑張ってね、私のスタートは高校からかしらね。」


3人で久しぶりに会話をして、その日は帰宅していた。

2人との距離が少し縮まった気がして、湯船の中で鼻歌を歌っていた。

1日時給700円のバイトを11時間やって1日7700円、40日で30万になっていた。

まぁ交代制だったので、週4のマックと週3のモスをやっていた。

コンビニもFamimaとセブンの掛け持ちだった。

土日は給料が少し高かったので、30万以上になっていた。


始業式が終わると授業は午前中なので、そのまま楽器店に向かっていた。

新品のギターが飾られており、すぐに店員に話して買い求めてた。

ハードケースが付いていたので、ソフトも購入した。

ストラップとピックと替えの弦も3セット・メンテ用の部品も買った。

ギタースタンドも買って、荷物はいっぱいになっていた。

チューナーをも勧められたが、その場で自分でチューニングして音を確かめてもらった。

麗奈は絶対音感だったみたいなので、チューナーは今は必要ないと思っていた。

それでも一応チューナーを買って、店を後にしていた。

貯金は22万になっていた。

教本とかは予め揃えてあったので、家に帰りひたすらギターを弾いていた。

まぁアンプに繫がなければ音も出ないので、迷惑ではなかった。

それがエレキを選んだ理由でもあった。


女子の少ない吹部では秀一はモテていた。

吹部も帰宅部と今は変わりなく、時々帰り道で秀一と出会ってそのままマンションに帰った。

普通に見ても高身長で普通体型の秀一はモテていたが、麗奈はただの幼馴染としか見ていなかった。

そんな2人が話しながら帰るのは、他の秀一を思っている女生徒には面白くなかった。

女子の指など小さく細く柔らかかったが、麗奈の指は長かった。

ユーフォでは大体が右手操作で4番だけ左手だったが、今は左手の指はいつも皮が剥けていた。

そんな麗奈を同級生達は、陰口をたたいていた。


「あいつ秀一と一緒の部屋に入って、いいことしてるみたいよ。」


「麗奈の左手見た? オナニーのやりすぎで皮剥けてるわよ。それとも変態プレイかしらね。」


「あんな胸ないのに、よく秀一も相手にするわよね。男と間違えてるのかしら?」


「もしかして、まだ毛も生えてないかもよ。」


まぁ実際発育が遅い麗奈は、毛も生えてなかった。


そう言えば楽器室に、ホコリを被ったアンプがあるのを思い出していた。

図書室で学校の歴史を見ると、かなり前には中学で軽音部があった。

しかし復活には、4人以上の部員と顧問と生徒会と職員会議で決定されると生徒手帳に記されていた。

9月も下旬には麗奈もやっと少しは弾ける様になってきて、コードだけでなくある程度のソロとかも弾ける様になっていた。

ギターだと、作曲とかもできて楽しかった。 

まだまだだったが、色々と曲を作っていた。


10月初旬のある日、あすかと彩香がクラスに来た。



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